インターネット小中学校安全教育ガイドCD-ROM作成

 

 インターネットを教育ツールとして考えたときの有用性はさまざまに表現されますが,以下の3点はその中でも代表的な利点と言える。

利点1. 情報の豊富さと新しさ:受信できる情報は,多量・多様であり,常に更新されている

利点2. コミュニケーションの容易さ:経済的で効率的なコミュニケーションが実現できる

利点 3. 発信者と受信者の一体化: 自ら情報を発信できる

ある国について学ぶ過程を例にとってみよう。インターネットを利用しなくても,国の位置などは地図帳や地球儀で知ることができる。また,緯度や経度や地形からおよその気候を推察できる。教科書と参考書からは,人口,気候,地形,歴史,習慣,特産物,生活の様子,伝統,政治形態,経済状態,国際関係など,様々な分野と科目に渡って,学習者の理解度に合わせた知識を順序良く与えることができる。オーディオ・ビデオ等の補助システムはさらに学習者の理解を深めるのに役立つ。

 インターネット上の情報をこれらに付加してみると,例えば,その国の現在の天気や気温を知ることができる。都市や市街地の様子をウェブキャム(ウェブページに情報を送る小さなカメラ)で見ることもできるし,行われている祭りや儀式の様子,伝統的な食べ物,学校に通う子どもたちの様子,家庭での生活,その国のニュースなど,国の名前を起点にして,さまざまな情報を,テキスト・画像・音声・動画 4媒体によって確認することができる。

 その上その国に住む人々とEメールなどで交流して直接に感想や質問を送ったり,調べた情報について遠方にある他校の子どもたちとやりとりすることもできる。

そしてそれらのやりとりを,学習の記録として学校のホームページで発表したり,クラスで行った学習研究成果を掲載したり,それに対する感想や意見を他クラス・他校・他国より受け取ることもできます。記録をリンクしながら積み重ねれば,すぐに取り出せる,学習情報のデータベースとなる。

 しかし,インターネットは,様々な利用者が様々な目的で利用することに価値があるメディアですから,ネット上には成長期の子どもにとって有益とならない情報もたくさんある。子どもにとっての「有害情報」というと成人向きサイトだけを連想しがちですが,発展的な影響を与える有害情報にはさまざまなものがある。

発展的というのは,例えば,日常生活での詐欺の方法,人種差別や暴力を煽るもの,コンピュータ犯罪用のマニュアルやツールの公開,巧妙にカバーされたねずみ講,不法薬物を自宅で作成する方法など,犯罪への興味をそそったり,引き金となるという意味である。それらの情報は,法を遵守しているように表現されていることが多く(例えば,実行すれば法に抵触するがやり方を知るのは罪にならない,等の説明がある)子どもの判断に任せて自由に閲覧させるのは大変危険であると同時に杜撰なことといえる。実際,アメリカだけでなく日本でもネット上の情報を起点とした数々の違法行為が問題化している。

 一方,ネットを媒体とする大人による少年少女の誘拐や暴行などの不幸な事件もおこっている。有害情報そのものを受信しても身体を直接傷つけることはありませんが,対人間となると,文字通り身を守る知恵が必要となる。

 アメリカでは,子どもを巻き込んだ事件の増加に伴って,2000421日よりCOPPAChildren's Online Privacy Protection Act)が施行され,子どもサイトの安全配慮は法的規制の対象となりました。日本でも,今後子ども達のネット利用が増え,問題が表面化すれば,対応する法令も必要となることである。

 しかし,子どものネット安全を守るにはCOPPAのような情報発信側への規制だけで充分なのであろうか?子ども向けのサイトだけが厳しいルールに従っていても,子どもたちは規制の対象ではないサイトにいつでも立ち寄ることができる。またチャットやEメールを使って不特定多数の大人と接することもできる。アメリカではチャットプログラムを発端にした誘拐や暴行事件が多発しており,FBIの囮捜査もチャットプログラムを利用して行われている。

 日本でも,女子高校生がネットでの個人情報公開をきっかけに暴力団員に脅されて風俗店で数ヶ月働かされていた大阪での事件,中学生男子がネット上の詐欺を働いた事件,またネットを使った同級生へのいやがせ事件など,ネット普及前には考えられなかった経緯で事件が起こっている。

 これらの事件では,コンピュータに詳しい子どもたちが被害者や加害者となっており,回りの大人は事件が発覚するまで気がつかないことが多いようである。つまり,子ども独自の判断によってネットをサーフしたりホームページを作ったり他人と話をした結果の出来事とも言える。

 コンピュータを自由に使ってインターネットを遊び場のようにしている子どもたちを指導するのは,一見大変なことのように思えますが,基本的な自己防衛の知恵がネットと実生活とで違うわけはない。指導内容は日常生活での安全指導となんらかわりがない。特にインターネットでは,利用者のちょっとした注意が多くの事故を未然に防ぐカギとなるので,本当に必要なのは,回りの大人がネットの最新技術を覚えることではなく,日常生活の知恵をそのままネットで使うように指導することである。

 子どもたちに「ネットでは自分の電話番号や住所を教えない」「変だと思うメールやチャットの内容はすぐに報告するように」などとルールを教えるだけではなく,事件例を示して理由をはっきりさせれば,より活きた警告となるであろう。

 大人でも具体例があった方が理解は深まる。例えば,運転免許更新時の教育ビデオで,左右確認を怠ったための悲惨な事故例などを視聴すると,左右確認という誰でも知っている注意事項の重要性が改めて理解されるのと同じ心理である。親や教師が,子どもの年齢に応じた具体例を示せば,子どもたちのネット安全に対する意識はより高まり,それが実際に応用されるようになるであろう。

 

インターネット安全教育ガイドの目的

 インターネット安全教育ガイドは,小中学校でネット安全教育を行う際に必要な知識を体系化した教育用資料である。ネットの本当の危険とはなにか,どのような事件が実際に起こりまた想定されるか,それらを未然に防ぐにはどうしたらよいか,ネットを使った授業で安全教育をどのように盛り込んでいくべきか,問題が起きたらどうしたらよいかなどの,家庭や教室で即応用できる項目を具体例(過去の事件例)を参照できる形で提示している。

 また,理解しやすいステップバイステップの解説とともに近年利用されている子ども用安全ソフトウエアの検証結果も加え,最新のネット安全資料を最大限に盛り込むよう努めた。先生方が子どもの理解能力と年齢に応じた具体例と教訓(=ルール)を,わかりやすく適切に提示して頂くことができれば幸いである。

CD-ROM目次

このCD-ROMの使い方

はじめに

サービスと安全性

ネット上の危険

危険なコンテンツ

危険なコンタクト

安全対策

指導参考資料

データ

用語集