「情報活用の実践力向上プロジェクト」

宮城県登米郡迫町立佐沼小学校 

 

1.企画の内容

 高度情報通信社会の進展に伴い,学校現場へも情報インフラが整備されてきた。また,体系的な情報教育の充実も求められるようになり,情報教育の目標も策定された。情報教育の目標では「受け手の状況などを踏まえて発信・伝達できる能力」の育成が求められており,コミュニケーション能力の育成と関係の深さが指摘されている。

 コミュニケーション能力とネットワーク利用教育に関する先行研究に目を向けると様々な実践が報告されている。中でもネットワークを利用した交流学習でコミュニケーション能力の伸張を測ろうとする取り組みの報告が多い。しかし,ネットワークを利用した教育活動が児童のコミュニケーションにどのように影響を与えるかということを量的に調査した研究となるとその数は少ない。

小松(1999)は,コミュニケーション能力について学校規模差がどのように影響するのかについて主張性という概念を用いて調べた。その結果,小規模校の児童と大規模校の児童の主張性は,側面により異なるという実態が明らかとなった。また,小規模校の児童にとって,交流学習は,学校規模を擬似的に拡大する試みであるといえ,交流学習により児童の主張性が改善する可能性があることを示唆している。小松は,小規模校に着目して交流学習の有効性を述べているが,大規模校の児童にとって交流学習がどのような意味を持っているかについては言及していない。本プロジェクトは,大規模校の児童にとって交流学習がどのような意味を持つのか,交流学習によって児童のコミュニケーション能力に変化は見られるのかということを明らかにしようとした取り組みである。

2.企画実施の概要

 本校6年生児童を対象に主張性を測るテストを実施した。質問項目は,濱口(1994)の構成したASC尺度を援用した。因子分析を行い,主張性を規定している因子を探索した。次に因子得点を計算し,交流学習の経験の多少により群分けした交流学習経験多群と交流学習経験少群の因子得点について分析を行った。

 なお,交流学習については,静岡県細江町立中川小学校と社会科と総合的な学習の時間で行った。電子掲示板とテレビ会議システムを使った交流であった。

3.企画の結果

因子分析の結果,自尺度主張因子,他尺度主張因子が抽出された。2つの因子得点について,1要因被検者間計画の分散分析を行ったところ,他尺度主張因子については,有意差が見られなかったが(F(1121=1.77p>.10),自尺度主張の因子得点については,交流学習経験多群の平均が交流学習経験少群の平均よりも有意に低かった(F(1121=14.27p<.01)。

交流学習経験が多いものは,交流学習経験が少ないものよりも自尺度主張因子に強く支配されていないと言うことができる。逆に言えば,交流学習経験が少ないものは,自尺度主張因子に強く支配されているということになる。有意差は見られなかったが,他尺度主張の因子得点に関しては,経験多群の平均が経験少群の平均を上回っており,相手を意識した他尺度主張により強く支配されているという姿が浮かび上がってくる。そこからは,交流相手に対しての思いやりの発露が伺える。