聾学校における情報携帯端末を活用した指導の考察

宮城県立ろう学校 

 

 聾学校の生徒は聴覚に障害があり,音声によるコミュニケーションに制限がある。そのため,聾学校における教科指導では音声の制限を視覚的に補償するなどの工夫が必要である。また,学級指導においても生徒と教師あるいは生徒同士でコミュニケーションを促進するような配慮が重要である。このような工夫や配慮の手段の1つとして,コンピュータやインターネットの活用が考えられる。しかし,現状ではコンピュータやインターネットはコンピュータ教室に行かなければならず,生徒が使いたいときにすぐに使える状況ではなく,十分に活用できるとは言い難い。

 近年,情報携帯端末(Windows CE)の機能が向上し,パソコンとほとんど同様の機能が使えるようになってきた。しかも,小型軽量で持ち運びもでき,起動時間もほとんど必要とせず,リセット機能を備え,操作も簡単である。また,情報携帯端末は聴覚障害者用通信装置として身体障害者福祉法による助成対象(16)である。このような情報携帯端末は,教科指導においては聾学校生徒の新しい学習の道具として,学級指導においてはコミュニケーションツールとして,その効果が期待できる。そこで,本研究では聾学校における情報携帯端末を活用した教科指導と学級指導について考察した。

 教科指導では,情報携帯端末用の教材(主に数学)を開発し,その教材を活用した指導実践を通して,聾学校における有効性を考察した。開発はNS Basic/CEを使用した。NS Basic/CEは情報携帯端末単体で開発が可能なインタープリンタ型言語である。開発したプログラムはランタイムとともに配布が自由である。実践の結果,1)指導内容の焦点化と2)情報の視覚化の2つの有効性が見出された。

 学級指導では,情報携帯端末を学級指導に活用するためのデジタルコンテンツの開発と指導計画を提案し,その可能性について考察を行った。しかし,各家庭から接続した場合の通信費の問題もあり今回は実践には至らなかったが,考察の結果,1)直接的なコミュニケーションの促進と2)情報の共通理解を促すことができるなど,活用の効果が大きいと考えられた。

 今後は他教科での活用についても検討をすることと,さらに多くの教材を開発し実践を継続することが課題である。学級指導については考察したデジタルコンテンツと指導計画をもとに実際に実践することが今後の課題である。