病弱養護学校における在宅就労を目指した情報教育の実践

宮城県立西多賀養護学校 

 

本校は国立療養所西多賀病院に隣接する病弱養護学校であり,高等部に在籍している生徒の大半は筋ジストロフィーである。高等部での学習を終えた卒業生は,余暇活動として病棟のサークル活動をはじめ作詞・作曲や印刷物の作成,インターネット等でパソコンを積極的に活用している。将来の在宅就労に向けた情報教育の在り方が高等部の課題となっている。

 本実践では,高等部3年生の選択科目「総合実践」でのWebコンテンツの作成とノンリニアビデオ編集を中心に,在宅就労を目指した情報教育について検討を行う。

 この実践では,Webコンテンツの作成とノンリニアビデオ編集の二つの課題を設定させて取り組ませた。これらの課題に取り組ませることで,企画や構成,資料や素材の収集,加工等の一連の作業を通して行わせる。

 

 ホームページの作成の準備の段階として,1学期に,フォトレタッチソフトとドロー系グラフィックスソフトの基本操作を学習させる。その後,HTMLオーサリングソフトの基本操作の学習を行う。

 2学期は本実践の中心となる二つの題材である,ホームページの作成とノンリニアビデオ編集を行う。今回の実践では,ホームページやマルチメディア関連の課題を設定し,そのような活動をしている就労支援団体等の方から現場の状況等について電子メールを通して情報を得ることを併せて行う。3学期には3DCGを行う。

 

 実際に障害者が取り組みやすい分野はグラフィックスやホームページであることが,協力者等の情報により確認できたので,今回の実践では,ホームページ作成に関する様々な基礎的な技術と発展させたものとして動画の編集に取り組んだ。

 「総合実践」での学習は,1,2年次の学習を発展させ,総合的に学習できる機会ととらえたい。その意味で,「ホームページ作成」と「ノンリニア編集」の2つの課題に取り組ませることができ,充実した学習活動を展開できたことは大きな成果だったと考える。

 本校高等部は開設当初から商業を中心として情報教育に積極的に取り組んできたが,商業科としての目標は本校の生徒の実態に必ずしも適当とは言えなかった。しかし,専門科目「情報」が開設されることで,より専門的な内容を生徒の実態に応じて指導できる可能性が高まった。今回の実践では十分な成果が得られたと考えるが,基礎となる1,2年次の科目での単元の内容と配列を新教育課程実施に向けてさらに検討したい。