美術教育・英語による国際文化交流の実験プロジェクト

東京都西東京市立保谷中学校

 

エジプトという普段子供たちには教科書やマスコミを通じての情報しか入ってこないような国について,インターネットを通じて調べたり,電子メールでお互い交流することで,より新鮮な情報を得たり,直接的な結びつきを感じたりすることが出来る。手紙と違いコンピュータでの交流ではその手間と時間を大幅に短縮することで,より実感を伴った交流になるのではないかと思われた。

  ただ,コンピュータも万能ではなく,画面上でのバーチャルなつながりのみにならないよう,美術作品,という最も人間くさいものの一つを交換し,肌のぬくもり,と言ったようなものを補完するような交流になるように努めた。

 もともと国際交流ということの目指すものは,お互いの国やその文化,生活などを知り合う中で,国や民族,人種,宗教を越えて理解し合い,平和の礎を築く,というところにある。この交流もそれを目指して企画したわけだが,たまたま縁あって交流の相手先となったエジプトという国がイスラム教国であったことは,偶然とは言えとても意義深いものであった。昨年9月のアメリカ同時多発テロ事件で図らずも身近なところに映し出されることになった「イスラム教」「コーラン」・・・。放っておけば,それそのものが悪者になってしまいそうな流れの中,直接調べたり,ふれあったりすることが,偏見を予防し,思いこみを崩し,本当の結びつきを実現する,という,今の時代にまさに合った交流を目指すこととなった。

 活動した内容は次のとおりである。

 1)インターネットでエジプトについて調べる。

 2)美術の授業で自画像(版画)を刷る。英語の授業で名札兼メッセージカードを書く。

 3)作品をエジプトに持参,中学校(計5校)などで作品紹介とワークショップをする。

      (現地では身近なものをモチーフにした紙版画を作成。日本に持ち帰る。)

 4)日本でエジプトの作品とメッセージを紹介する(美術の授業)。

 5)「エジプト交流美術展」と銘打って校舎内の廊下に展示する(2月1週間程度)。

 6)エジプトの生徒と電子メールを交換する。

 コンピュータを使って調べたり,外国とつながったり,ということがとても新鮮で子どもたちは喜々としてやっていた。初めてパソコンにさわった子どもが数ヶ月の内に普通に使いこなしているのはとても驚きだった。又,コンピュータを介してのみでなく美術作品を通しても交流できたことが非常によかった。「肌のぬくもり」のようなものが感じられることはむしろこれからのコンピュータ時代,大切なのではないだろうか。

 最終的に伝えたいのは「情報」ではなく「心」であるのだから。

 今後はこれまで手紙の形で交流してきた他の国々ともコンピュータでつながってみたいと思う。