地学教育におけるインターネットおよびイントラネット利活用の試み

横浜市立盲学校高等部 

 

1.ねらい

視覚障害児にそれまで地球規模の巨大空間のイメージ化は難しいとあきらめられてきたが,生徒がメールやチャットなどのインターネットを利用した交換の中で天気の変化や音による流星の電波観測などを通して地球の広さが感じられるということを実感させることがあたらしい試みである。これを機会として,盲学校間のネット利用による共同授業が普及していくことをねらうことにした。

 

2.実践経過

メディア活用の意義:盲学校に通学する生徒は小人数化故に,同じ障害を持ち発達段階の同じ生徒が共同で学ぶことが難しく,また県に1校という所が多く学校間の距離が離れているので気軽に情報交換をすることが難しい状況にある。また,盲学校の生徒は広い空間を見渡す視力を持っていないために地球規模の空間イメージを実感させることが難しい。この両課題をIT活用により,時間と距離を超えて同じ課題に取り組ませ課題解決と経験共有と仲間意識に結びつける実験を行うことを昨年来から盲学校間で話し合ってきていた。

 

3.実施スケジュール

期間:平成13年4月〜平成14年3月

 4月:生徒から「地学:研究計画書」提出(35時間/年間)

 5月:各地の盲学校と高等学校理科部会に共同観測呼びかけ

 6月:準備観測 6月14日(木)4時間目(地学)12:00    第1回観測 6月21日(木)夏至(観測)12:00

 7月:天体望遠鏡と電波による流星の音観測を併用の試み

 8月:全国盲学校教育研究大会(北海道)

 9月:筑波大学(学生)より電波観測に適した周波数等の情報が提供

 10月 流星数を電波観測(オリオン流星群とジャコビニ流星群)

 11月:CEC中間発表,獅子座流星群電波観測(測曇天で雲の間から獅子座方向観)

 12月:冬至の太陽高度共同観測(データ交換):サンパウロ日本人学校の協力交流  第2回観測 12月23日(日)

  1月:データをまとめ自主研究レポートにする作業

  3月:ホームページ公開「総合学習の時間」

  5月:日本学生科学賞神奈川県予選に応募予定

 実施環境:

インターネット・校内イントラネット(有線・無線)・webサーバ・移動用ノートPC・GPS・VTRカメラ・天体観測用機器・盲学校用特殊機器・アマチュア無線機器・パソコン計測システム等

 

メディア利用環境: a.利用機種:Windows98パソコン b.入出力装置:センサー計測システムの一部を利用(ウチダ)

 c.稼働環境:校内ネットワーク接続(インターネット利用) PORER4100(日本ACRER )プリンター利用

 d.利用ソフト:音声スクリーンリーダー(画面読み上げ用ソフトウェア)VDM100W   画面拡大ソフトウェア(弱視用)ズームテキスト(NEC)         ホームページリーダー(IBM)

 

4.実践成果

  盲学校では視覚障害により視覚情報の制限を受けるためにそれぞれの状態の応じた配慮が必要となる。生徒が自らの興味・関心を持った事柄に対して介助者の手を借りず(指導は受けるが),自らが主体的となり企画し,予定を組んでその活動進めていくという経験をさせることができたと思う。今回の取り組みは,視覚障害の生徒が「自ら学ぶため」にどういう環境を整えていったらよいかヒントを与えてくれた。「生徒が自ら取り組んだ活動そのもの」が成果であると思う。

 

5.まとめ

このような取り組みができたのも南中高度観測のデータを快く送ってくださった小・中・高等学校・盲・聾・養護学校の生徒さんと先生方の協力と深夜に関わらず電波観測に協力いただいた全国の研究者の方,天文愛好家のみなさま方とインターネットと校内ネットワーク設置のおかげだと感じました。この場をお借りしましてお礼申し上げます。ありがとうございました。