専門高校と小学校の共同学習

―高校生による小学生へのロボット製作指導―

石川県立小松工業高等学校

 

 小学校では「総合的な学習の時間」が導入され,環境,国際理解などの教材に並んで,計測・制御をテーマにした学習活動が展開されはじめている。その一つにレゴブロックを用いたロボット製作がある。

 レゴブロックは小・中・高と年齢に関係なく,それぞれの学習へ柔軟に対応できる。しかし小学校の現場では制御の基礎的な事柄になじみがうすいため導入部分での敷居が高くなってしまい,創造性を育む学習に結びつきにくくなるおそれがある。一方,本校の機械システム科,電子情報科では日々の授業の中で計測・制御の基本を学習している。そこで制御技術を学ぶ高校生が小学生へレゴロボットの製作を指導することで,高校生にとって日々の授業での学ぶ意義や学習の達成感を味わえ,児童と生徒の共同学習から年齢層に応じたコミュニケーションをとる力を育み,小学生にとっては導入部分での敷居が高いロボット制御の題材が創造性を育む学習につながることをねらった。

 1学期から調整を進め,小松市立第一小学校の5年3組と共同学習できることとなった。参加生徒は本校の生徒11名と小学校1クラス29名である。共同学習は2学期から開始した。小松工業高校では金曜日の5,6限目が課題研究の授業である。そこで第一小学校の金曜日の5限目を本実践へ割り当てることにした。本校と,第一小学校とで授業時間を重複させることができたので,学校行事などで都合が悪くなった日以外は小松工業高校の生徒が,第一小学校に出向くようにした。このような方針でも数週間連続して第一小学校へ行くことができない状況が生じ,Webページでのコミュニケーションを最大限に活用した。また小学校では生徒と児童が直接コミュニケーションをとりながらレゴブロックでのロボット製作を行い,インターネット経由でロボット製作中にうまくいかなかったことや発展的な内容について情報交換を行うことにした。

 高校では1学期中に生徒たちによるライントレーサの試作を行い問題点の洗い出しを行い2学期からの共同学習にむけてプレゼンテーションの準備にかかった。小学校の学習では29名の児童を2ないし3名で1班とし10班編成で作業を行った。1班あたりレゴブロック1セット,パソコン1台の環境で,高校生11名が各班をサポートしながら授業を進めた。授業はPowerPointのスライドショーを利用して生徒が児童に説明する形で行い,各班に高校生が1名加わり補足的な解説を加えるようした。基本的にこのスタイルで学習活動を進め,授業の終了時には児童生徒に学習の記録シートへ記入してもらった。授業後,PowerPointのプレゼンテーションデータをWebページ上に載せるとともに,児童が記入した学習シートのわからなかったこととして記入した内容に対して同Webページ上で回答した。

基本的な説明を終えた後,線に沿って動くライントレーサの製作に入った。生徒からヒントをもらい児童主導で作業を進めた。いくつかの班が行き詰ったあたりで現状報告会を設けた。報告会後,他の班の様子や改良点をふまえてロボットを調整しライントレースコンテストに臨んだ。スタート直前まであきらめかけていた班が期待通りに動いたりするなど児童の願いと意気込みが感じられ,ほぼすべての班がライントレーサとして仕上がりレベルの高いコンテストとなった。

 2学期最後に児童生徒に以下のようなアンケートを実施した。小学生の結果を見ると班毎の共同作業で苦労していること,創造的な自分のアイディアを実現する際になかなかうまく行かなかった様子が表れており,教員側が感じ取っていた印象と一致している。高校生の結果では,高校で受ける他の授業の見方まで変わらないものの,教える立場に立つことでの効果が表れている。

 児童生徒とも記録シートへ毎時間記入し,それを小学校と高校で共有した。高校ではさらに授業時間中のメモやビデオデータなどを蓄積しポートフォリオ化することを目指した。また,教員が考えた評価基準をもとに評価基準表を作成し区切りのよいところで生徒に自己評価をしてもらった。

 今回の実践では,学習評価に踏み込んだ小学校の教員間の協力までには至らなかった。また,高校側の評価で評価基準を教員のみで行ってしまい,生徒とともに考える機会を設けなかったこれについて今後検討ないしは改善していく必要がある。