低学年でもできる「自分を表現し,人の考えを聞く」方法の研究

三重県美杉村立太郎生小学校

 

  4月から栽培をしている落花生を中心に,野菜などの栽培活動(世話・観察等)を通して経験したことを元に,主にテレビ会議を活用して他校との交流を進めてきた。

  これらの活動の中で,表現力と聞く力の育成につとめてきた。自分を表現する方法として,絵・文字・言葉・動作などがあるが,これらの力と聞く力を総合的に身につける場としてテレビ会議による手法を取り入れたのである。

 テレビ会議をおこなうには,まず自分が発表する課題を的確に把握しなければならない。そして,いろいろと調べたことを図表や画像にまとめる。次に発表するための言葉(セリフ)を考えていかなければならない。そして実際にテレビ会議をおこなうときには,目の前にあるカメラの向こう側(遠く回線の向こう)にも人がいるんだという意識を持って,内容が正確に伝わるように話し方も工夫していかなければならない。また,たとえ聞き取りにくい環境の中においても,相手の話を集中してしっかりと聞くことによって,質問や感想もできるようになる。

 10月に,インターネットのCu−SeeMeを使って,落花生栽培のまとめとしてのテレビ会議交流会をおこなった。5月に種まきをしてから,暑い中でも草ひきをしたり水やりをしたりしながら育ててきた落花生を収穫することのできた喜びを,太郎生小学校の子どもたちだけではなく,遠くの交流校の子どもたちにも伝えようと考えたのである。

  授業の中では,栽培経過についてはすでにテレビ会議で少し触れてあったので簡単に扱い,収穫時のようすや喜びを伝えることを中心とした構成にした。どのように伝えればよくわかってもらえるだろうかということをみんなで話し合った結果,収穫時の様子を劇にして表現するとともに,ビデオ画像も取り入れようということになった。ビデオは担任が撮影したものを利用したが,劇についてはセリフから振り付けまで,児童の手によって考えていった。また,これまでは担任がリードしながらのテレビ交流会が多かったが,今回は児童が司会・進行もするようになった。もちろん,進め方や言葉も児童が考えて(少しはアドバイスもした)いった。

 授業においては大埔校のコンピューターがたびたびフリーズ状態になり,少し進行が妨げられることもあったが,太郎生小学校の子どもたちによる落花生栽培についての取り組み・収穫の時の劇を発表した。教室からの映像だけではなく,収穫の時に撮影したビデオ画像も送ることができ,太郎生小学校の子どもたちの気持ちや雰囲気がよくわかったという言葉をもらった。

  大埔校からは,香港での落花生販売の様子を写真を使って教えてもらった。また,香港で売られている珍しい野菜(白菜仔・通心菜)や果物(スターフルーツ・龍珠果)も,実物を使って見せてもらうことができた。日本ではほとんど見ることのできないものだけに,興味深い画面だった。

  中原小学校からは,千葉県内における落花生栽培の様子(栽培をしている市町村別収穫量等)を教えてもらった。相手は6年生ということで,太郎生小学校の2年生にしてみれば少し難しい言葉もあったようだ。しかし,2度ほど説明を繰り返してもらううちに,理解も進んでいったように思われた。

  落花生によるテレビ会議はこれで終わったが,その後はクリスマスや正月の風習などの違いを比べるテレビ会議を,香港・オーストラリア(パース)・シンガポールなどとおこなった。

 これまで高学年中心に実践してきたテレビ会議であったが,今回の2年生における実践においても十分に自分を表現しながら人の話もしっかりと聞く力を付けられることがわかってきた。