ネットワークを活用した小学校国語科学習指導

箕面市立萱野小学校

 

一冊の本は,多くの情報を結びつけた「言葉のネットワーク」として,一つの世界をかたちづくっている。文学作品を読むという行為は,一人ひとりの経験や個性にもとづく,言葉の意味世界の探究活動として捉えることができよう。個々が生み出した「読み」は,他者と伝え合い,多様な「読み」と出会い,つながるなかで,さらに確かで豊かなものとなっていく。文学作品の読みの学習活動を,教室のなかに閉じこめてしまわず,保護者・地域と協働でおこなうことによって,子どもたちを一人の読み手として大きく成長させるとともに,われわれおとなの読みも,深まり拡がるのであろう。

本実践は,小学校4年生と3年生の子どもたちが,詩の群読やブックトークを軸に,互いの活動を伝え合いながら,保護者・地域とともに文学作品を読み進めていくという総合的な学習活動である。子どもたちと文学作品とを結びつけ,そこから生まれる読みと読みとを結びつけ,さらには学校と家庭・地域とを結びつけていくという,多様な「読みのネットワーク」を活用した。今回の活動を支え,その可能性を大きく広げたのがインターネットを含むコンピュータのネットワークであった。

a.読みや活動の蓄積(子どもたち自身が学習活動を意識的に営む)

 「詩の群読」では詩の内容や群読の工夫,「ブックトーク」では本の紹介,「モチモチの木ランド」では本と本のつながりをホームページ上にテキストデータとして蓄積していった。各グループの群読の録音は,音声ファイルに変換して掲載した。子どもたちの読みや活動を電子データとして蓄積しておくことにより,いつでも学習の流れを振り返ることができた。今回はコンピュータ室での活動だったが,校内LANが整備され,学年教室でのインターネット利用が可能になれば,さらに有効に活用できるであろう。

b.学習者どうしの伝え合い(互いの読みを分かち高める)

 「詩の群読」のようにグループでおこなう活動を取り入れたことにより,子どもたちどうしの伝え合いを活性化することができた。「ブックトーク」も,グループ内で互いが紹介する本を読み合うことにより,読書の幅を広げ,読みを深めることになった。「モチモチの木ランド」では,見つけた本を伝え合うことが,子どもたちにとっての大きな楽しみとなっていたようだ。また,4年生と3年生との間での,学年を越えた伝え合いの場を繰り返し設定することにより,活動への意欲や達成感を高めることができた。

c.保護者・地域との協働(社会参加や生涯学習とつながる)

 学習をスタートさせる前の段階から,保護者・地域との打ち合わせや学習会を持ったことによって,より充実した学習活動を展開することができた。また,ホームページ上に子どもたちの活動のようすを掲載しておくことによって,学習のねらいや意義を把握していただけた。電子メールによる交流も含め,リアルタイムでの情報のやりとりによって,学習活動への速やかなフィードバックがなされた。