点訳歌詞データベース構築を目的とするボランティア学習の試行

生駒市立生駒北中学校 

 

 バリアフリーという言葉が一般的なものとなり,社会や街も少しずつではあるが,障がい者にも,暮らしやすいものになってきた。しかし,駅の点字表記の間違いなど,まだまだ問題が多いのも事実である。これらを是正するために,学校教育が果たす役割は大きい。

 本校では点訳ソフトを使っての授業を5年前から始めている。初めは点字でプリントアウトした手紙で県立の盲学校と文通をしていた。今年度は新たに生徒が最新のヒット曲の歌詞を点訳し,ボランティアグループを通して,視覚障がい者のもとへ届けるという活動を始めた。視覚障害を持つ方の中にもカラオケを楽しんでおられる方は多い。今までは,歌詞カードを,点字板を使って訳していたため,次々と流行しては消えていく歌に対応していくことは困難であった。これをパソコンの点訳ソフトを使い,歌詞をデータベースに保存し,必要に応じてプリンターで印字できるようにすれば,最新のヒット曲にも対応することができ,視覚障がい者のレクリエーション,社会参加に寄与することができる。

 毎週1回の授業で,生徒たちはパソコン教室で一人一台の機械を使い,点訳などの作業に取り組んだ。完成した歌詞は生駒市点訳グループ「やまなみ」の協力を得て,推敲,添削し,視覚障がい者用のネットに載せ,全国で使ってもらうようにした。このことで新しいデータを最短の時間で利用者に届けることができた。またできあがった点訳歌本の使いやすさを横浜市立盲学校の生徒さんにチェックしてもらいアドバイスをもらった。

 また視覚障害の方に講師として来ていただき,講演,盲導犬を連れての校内や市立図書館のバリアのチェックを行った。この活動を通して教室では気づかなかった街のバリアにも気づき,ノーマライゼーションを実現するための一つのきっかけになった。

 授業の成果としてはこの活動によって,生徒たちは,点字,バリアフリー設計などに興味を持ち,今までは気づかなかった障がい者同士のバリアやいろいろな問題点に気付くようになった。さらに,点字を学ぶ意欲の向上にもつながり,非常に効果的であった。

 ただ,卒業後ボランティア活動を続けようとしたときに,ハードの面で続けられないものが出てくることも考えられる。例えば,点訳ソフトを利用した活動がそれに当たると考えられる。しかし,生徒たちの意識の高まりという点では大きな成果があったと思う。例えば,「ピースボート」に送る楽器や文房具を校内で集めるという活動を自主的に始めたものもでた。今後の課題としては,生徒自身が今後やってみたいボランティアを選択・活動していく力を,どのように育てていくか,そして,指導者のボランティアコーディネーション力の向上との2つの点であると考える。