球体パノラマ画像を活用した共同学習の設計と展開

岡山市立平福小学校

                                      

 

 昨年度は,岡山県の三大河川の一つである「旭川」を舞台として,【実施条件が異なる学校間交流学習の拡張】及び【インターネットと親しみながら交流学習を進めるためのWeb環境の構築と研究成果を他地域へ普及促進できるWebツールの開発】の2つを目的として,Eスクエア2の協働企画のプロジェクトに参加し,実践研究に取り組んだ。

 実際には,旭川デジタルマップの完成というゴールをめざし,子どもたちは,上・中・下流域の6校(中心校3校・ビギナー校3校)でプロジェクト型の交流学習を展開した。この6校は,学年,学習環境,交流学習の経験及びインターネットの活用実態の差など,様々な違いを乗り越えて,自分たちのもてる力を発揮できる場面で活躍しながら,ゴールを目指したのである。この学習のねらいは,情報活用能力の育成と地域理解の深化と郷土への愛着心の育成である。個々の興味・関心・問題意識のもとにテーマを設定し,自分の調べた身近な地域環境の実態について,デジタルな情報カード,電子掲示板等のWebツールを駆使して情報交換をする。そして,他地域との相違点に気づき,身近な地域の環境に対しての愛着を高める。その結果,短期間のプロジェクトではあったが,個々の子どもたちなりに活動の成就感を味わえたとともに,情報活用能力を向上させることはできた。しかし,郷土愛を醸成させるまでにはいたらなかった。それは,プロジェクト型の交流学習の立ち上げが2学期になってしまい,子どもたちの興味・関心・問題意識のもとに追究していく段階での時間を十分に保障できなかった。また,個々の情報をデジタルマップ上にまとめる方法にも工夫が足りなかったと考えている。

 そこで,今年度は,このプロジェクト学習を年間のプランに位置づけ,交流校との単元プランのすりあわせを早期より取り組むとともに,子どもの学びを共有するために球体パノラマ画像とデジタルマップの融合化に取り組む。

・球体パノラマ画像の活用 

   互いの環境の実態のリアリティーを感じる工夫

・瀬戸内デジタルマップの公開

    データベース化

 

  授業の成果としては,情報活用能力の向上と社会への参加・貢献の態度育成の2つがあげられる。

 子どもたちは,瀬戸内海に面している 大分県の富来小学校の子どもたちと「海」,「祭りと昔話」,「歴史」,「地形」の4つの会議室のなかで,情報交換をし,デジタルマップ制作へと学習を展開していった。オンライン上での情報交換は,時には自分の思いとのずれを感じたり,返信されてこないメールにやきもきしたして,学習が停滞したときもあった。しかし,様々な情報手段を組み合わせながら,相手の状況を理解した上で,情報交換を継続していった。また,マップ制作では,自分たちが集めた情報を整理し,必要な情報を選択し,マップにアップする情報ページを作成していったのである。このような活動を通して,情報活用の実践力はもちろんのこと,社会へ参画する態度や電子掲示板の仕組み等の科学的な理解を育成することができたのではないかと考える。また,最終的には瀬戸内海に面した地域にはすばらしい自然や文化遺産が残されていることが分かり,よさを大切にしたいという思いを高めるとともに,生き物や砂浜の減少等の問題点の原因の一つが自分たちの生活にあることを実感し,自分たちにできることを取り組んでいくことの重要性を感じ,日常的に行っているクリーン作戦や食器ふき作戦などの行動を校内外へ広げようと行動していく姿がみられるようになった。今後,ホームページを公開することによって,様々な立場の方々の評価をもらったり,自己評価活動に取り組んだりして,子どもたちなりの今後の課題を明確にして来年度へつなぎたいと考える。

 

地形グループについては,球体パノラマ画像を活用した効果が見られた。

両校の学校近くの海岸線の画像から,相手校のなだらかな曲線を描く海岸線と本校近くの河口域から海へのほぼ直線的な地形の違いに子どもが興味をもった。そこで,互いに昔と今の海岸線の比較をしようと,昔の地図を手に入れ,比較検証し,なぜ変化してきたのかについて意見交換をしている。

しかし,昔話とお祭りというテーマグループについては,あまり球体パノラマ画像からの疑問点は生み出しにくかったようである。

今後,マップを作っていく上で,そのような情報をどのようにマップに埋め込んでいけばいいのか?

 

今後の学習活動について

交流校のインフラの整備が10月にようやく整ったので,学習活動のスタートはやや遅れたが,11月 中には,今まで収集した情報を整理し,マップ上にアップする情報にするための加除・修正をおこない,12月からマップ制作に取りかかる予定である。

その際,マップアドバイザーに外部人材として,子どもたちの制作活動の支援に当たっていただく予定である。