地域社会と連携した情報ボランティア活動の展開

愛媛県立新居浜工業高等学校

 

1 はじめに

 我が国のインターネット利用は普及期に入り、利活用によって利益を享受できるものと享受できないものとの格差が顕在化しはじめた。情報格差の出現である。

 情報格差の問題は、個人にとって社会生活の営みに大きな影響を及ぼす。また、企業など組織にとっても、情報化の問題をクリアできなければ存亡に関わる危機さえ含んでいる。今後、社会問題化すると思われる。この情報格差に関する問題解決を地方のレベルで取り組むには、どのような方法があり、また実践可能なのかについて、研究に取り組んできた。

 研究実践は、学校が設置されている地域社会と連携した情報ボランティア活動という形で進め、成果を得ることができた。

 

2 情報格差解決の方策

 個人や組織に情報格差が発生する理由は大雑把にいって二つある。一つは情報化に対するスキルの欠如であり、それに対する研修の機会等が無いか少ないということであろう。二つ目は地方の情報インフラ整備には相当のタイムラグがあり、整備が遅れていることである。これらを解決するには誰もが任意に参加できるIT研修の機会を多く作ることが、解決の糸口となると考えられる。実践は学校独自に企画したIT講習会と国の計画に基づく県主催のIT講習会を本校で実施することで、高校生も参加した情報ボランティア活動の機会を得た。また、情報インフラの整備については、地域の情報ボランティアの活用など、関係者の努力によってある程度は解決できると思われる。今回の研究では、地域社会と連携した情報ホランティア活動によるIT講習会への参加や島嶼部・山間地などの遠隔地を対象とした無線による地域ネットワークの構築実験、校内LAN等ネットワーク構築作業に関する実践研究を地域社会の多くの方や組織とコラボレーションの形で行った。

 情報ボランティア活動を日常的な活動とするために、地域行政機関や研究団体、産業組織、一般市民等との連携を得て、NPO(非営利活動団体)等、法人格を持った情報ボランティア組織の設立準備に取り組んできた。

 

3 活動状況

 地域社会市民を対象としたIT講習会は主に本校コンピュータ室を会場として行われた。これまで一年余りの間に延べ60日間行われ、受講者は約400名に達している。その中には85歳を筆頭に多くの高齢者の参加があった。この研修会には一日当たり25名の生徒が参加し、日頃のIT学習の成果を情報ボランティアとして役立てることができた。

 無線地域ネットワーク構築実験に関する研究では、第三セクター方式で運営されている地域ケーブルテレビ会社、製鉄会社研究所(無線ネットワーク研究開発部門)、地域インターネット研究会、教師、高校生等のコラボレーションの形で実施している。無線実験の例として、本校屋上に2.4GHz帯のアンテナを設置し、約2500m離れた地域CATV会社屋上との間で、パケット伝送試験を行い、約1M(Hz)の速度を確保することができた。

自校の校内LAN敷設工事は情報ボランティアとして特別活動(放送部など)で構築作業を行った。放課後を利用して約一年をかけ、全てのホームルーム教室や特別教室の敷設工事を完成させた。現在では全ての教室にはインターネットに接続されたパソコンが設置され、授業や休憩時間・放課後・早朝等に利用されている。また、他校の校内LAN構築にも積極的に参加している。今後はさらに発展させたい。