地域からの発信を支援する国際教育教材交流ネットワーク

 

プロジェクトのねらい

 インターネットを利用するためのハード環境が整備され,デジタルコンテンツが充実してきた。これから求められるのは,

  ・教師が自ら教材をつくることができる環境

  ・子どもたちの表現を支援する仕組み

  ・海外に発信することを日常的に行うことができる仕組み

 そして,

  ・これらの環境と仕組みを継続して提供する場の確保

 

教師が自ら教材をつくることができる環境

 MS−DOSやWindows環境においても,教師による教材作成は行われてきたが,それは概してコンピュータシステムに関して知識を持っている教師が行ってきたといえる。

インターネット時代を迎えて,OSが進化し,ソフトウェアも進化して,画像の提示や映像の編集も極めて簡単に行うことが可能となり,だれもがコンピュータでプレゼンテーションができるようになった。

 しかし,理科や数学においては,未だに誰もが簡単に教材をつくる環境とはいえない。さらに,できあがった教材をお互いに評価し合う場も少ない。

 本プロジェクトにおいては,数学教材をつくるツール,理科教材をつくるツールの提供とそれらを公開して評価する場を提供する。

 

子どもたちの表現を支援する仕組み

 「総合的な学習の時間」や「生活科」などで,調べ学習の結果をまとめ,それがインターネットのホームページデータとして簡単に公開できる仕組みが求められている。

 「文章をつくり,タイトル文字をかき,絵をかき,その結果がHTMLデータとして保存でき,元のデータは常に更新できる」この要請に応えられる児童用ツールを作成する。

 

海外に発信することを日常的に行えるしくみ

 子どもたちがつくったホームページデータが,日本語環境がないコンピュータでも日本語がそのまま表示されれば,少なくとも日本の子どもたちが何を表現しているのかを海外から知ることができる。そこに,ポイントごとに英語に翻訳される仕組みが指導教師の手をわずらわせることなく行うことができれば,海外への発信が広まると考えられる。

 上記の「子どもたちの表現を支援するしくみ」でできあがったデータには日本語フォントを埋め込み海外の日本語環境がないコンピュータからでも日本語が表示されるようにする。さらに英語に翻訳したい「ことば」を選択すれば,その言葉はポップアップウインドウ上で英語に翻訳され,さらに日本語が音声で表現されるしくみを付加する。

 

これらの環境と仕組みを継続して提供する場の確保

 数学教材作成ツール,理科教材作成ツール,子どもたちの表現を支援する児童用ツールの開発は継続して行い大日本図書のサーバを通して供給し,現場からの改良要請に応えていく。さらに海外交流のための「ことば」の翻訳の仕組みも,子どもたちが必要とする単語(辞書)の収集と蓄積を行い,交流支援の体制をつくる。

 

プロジェクトの先進性

iFriend開発の目的と先進性]

 ・総合的な学習における調べ学習のツールとなること

 ・普通教科における表現ツールとなること

 ・Web上のコンテンツをかんたんに利用できかつ著作権の配慮がしてあること

 ・児童生徒がまとめたデータがそのままWebブラウザで表現されること

 ・Webサーバーへの掲載がかんたんにできること

 ・普段の授業の結果がそのまま国際交流のデータになること

 ・ポイントとなる用語が英語に翻訳されること

 iFriendは描く,書く,切り取る,貼る,ページを変える」という,子どもたちが通常のノートに表現することがコンピュータ上で違和感なく操作できることが,子どもたちの「調べ学習ツール」として必要な要件である。

 コンピュータの活用が総合的な学習を中心として展開されそうであるが,今,日本の教育で求められているのは基礎的な学力の涵養であるともいわれており,そのためにコンピュータ,そしてインターネットの活用が普通教科でも求められる。iFriendは,総合的な学習で代表される調べ学習のみならず,国語科や社会科などでも活用されることを想定している。

 例えば,国語科では,詩の指導で,子どもたちは「もじ」によって詩の表現に合わせた修飾文字を使うことによって,詩の内容をより豊かに表現することができる。インターネット時代の社会科の学習は,従来の手法とは異なる教授法が考えられてしかるべきで,例えばiFriendの機能の1つであるWebブラウザのデータの貼り付けとリンク機能がその役割を果たす。

 子どもたちがつくったホームページデータが,日本語環境がないコンピュータでも日本語がそのまま表示されれば,少なくとも日本の子どもたちが何を表現しているのかを海外から知ることができる。そこに,ポイントごとに英語に翻訳される仕組みが指導教師の手をわずらわせることなく行うことができれば,海外への発信が広まる。

 iFriendでつくったデータには日本語フォントが埋め込まれるため,海外の日本語環境がないコンピュータからでも日本語が表示され,さらに英語に翻訳したい「ことば」を選択すれば,その言葉はポップアップウインドウ上で英語に翻訳され,さらに日本語が音声で表現される。

 

[ドリトルの先進性]

 ドリトルは,今日のソフトウェア技術の成果を容易に自分のプログラムに取り込んでこられるように,オブジェクト指向という考え方に基づいている。さらに,ほとんど日本語の文字だけを使用することで,小学生から抵抗なく使うことができ,また,コンパクトなプログラムで多様なことが実現できる。

 このような現代のソフトウェア技術の進歩を取り入れたプログラミング言語を教育に用いることで,これまでよりずっと多くの子どもたちに,ずっと容易にプログラミングの楽しさを味わって貰えるようになるのではないかと期待している。

 また,ドリトルは「オブジェクト指向という考え方に基づいている」ことから,子どもたちのプログラミング教育にとどまらず,教材開発にとってもその可能性は極めて高いといえる。

 例えば,数学教育において,Aというオブジェクトに埋め込む関数と,Bというオブジェクトに埋め込む関数をそれぞれ定義して,子どもたちにこの2つのオブジェクトを与えて,それぞれに埋め込まれた関数を分析させるというプログラムが考えられる。また理科教育においては,Aというボールの属性とBというボールの属性をそれぞれに定義し,それぞれを転がしたり弾ませたりさせながら,現象についてシミュレートさせるようなことができる。

 こうしたオブジェクトがインターネットを通して評価,改善され,質の高い教材が数多く蓄積されていくことが可能である。

 

GC/JAVAの先進性]

  Javaアプレットによる作図ツールには, CabriJava JavaSketchPad,などがある。これらのアプレットは, 元になっている作図ツールで生成したデータをJavaアプレットの形で操作可能に変換するものが多いが,作図機能などに制限がある。GC/Javaにはそのような制約がない。

 GC/Javaは, Web経由で図形を「変形して調べる」だけでなく,「補助線を追加」することもできるし, 「新規の図形を作図」することもできる。実はさらに, データをサーバに保存する機能も持っている。つまり, Web経由でGC/Javaを使うことによって, クライアントの機器に作図ツールを個々にインストールする必要がない。

 ASPとしての利用形態に関してはまだ試用段階であるが, これまで多くの数学の授業の中で実際に使われてきた, 一定規模の大きさのソフト(GC/Win)GC/JavaによってASP化することができたということの意味は, 教育用ソフトのかなりの部分をASP化できる見通しを与えるという点で大きなものがある。

 

和歌山県新宮市立三輪崎小学校 総合的な学習の時間「郷土を愛する心の育成」

iFriendの活用]

 総合的な学習の時間「ホームページ作り」〜あやおどりを紹介しよう〜ということで,児童用ホームページ作成ソフト「iFriend」を使って,実際にホームページを作成した。児童の間には,能力・経験・意欲などの個人差があるが,情報モラルさえ守られていれば,それぞれの実態に応じた取り組み方ができればよいと考えている。学校のホームページに掲載できそうな作品は全員に紹介し,その場ですぐにホームページを更新した。

 

[実践を行って]

 まず年間を通した総合的な学習の取り組みがあり,それらを進める中で発信したい情報が生まれる。ねらいに近づくために他校と交流する場合,発信したい情報をたとえばホームページ上で公開していく必要が出てくる。そんな時必要になるのが,子ども達が簡単に使え,かつ機能のしっかりとしたHP作成ツールである。

 今回iFriendを使用してみて感じたことは,「子ども達がなじみやすいソフトである。」ということである。インターフェイスが分かりやすく,パソコンをあまり使ったことのない子ども達でもおおよその機能を使うことができた。最初に名前を登録しておけば,自分のファイルを簡単に呼び出し・編集・保存することができるので,本来の情報発信に時間をかけることができた。子ども達は自分のファイル,自分のソフトという感覚でiFriendを使用していたような気がする。

 今回はiFriendを主にHP作成ツールとして活用したが,翻訳機能を使った国際交流ツールとしての活用も視野に入れている。アメリカの姉妹都市との交流の計画があるので,これからもiFriendを活用していきたいと考えている。実践担当者としては,「必要なときに必要なソフトに巡り会えた。」という感じである。

 

神奈川県横浜市立本町小学校「青い目の人形プロジェクト」

 本町小学校では,iFriendを活用しながら青い目の人形の教材化を行ってきた。学習活動だけでなく,学校行事にも位置づけることで,子どもたちにはより身近な存在として青い目の人形を捉えることができている。また,iFriendの活用により,青い目の人形に関して,自分が調べたことや気がついたことなどを,自分のイメージにそってホームページなどで紹介することが可能になった。こうした学習経験は,子どもたちの世界への意識や,平和意識の確立に大きく寄与しているものであると考える。

 今後の展開としては,青い目の人形を通しての恒常的な外国の交流校との交流活動が求められる。自分たちが調べたこと,気がついたことに対して,外国で暮らす同年代の子どもたちはどのように感じているのか,青い目の人形に対してどのような認識を持っているのかを,子どもたち自身が,同年代の子どもたちと交流することでつかむことができる機会を用意することが求められる。こうした交流の機会の発展は,子どもたちの国際感覚を磨くために大切な要素となる。こうした活動を支える環境として,パソコンをはじめとした情報教育環境の維持・運営が不可欠であり,iFriendのように国際交流を開発のコンセプトにおいたソフトを有効に活用していくことが大切である。今後の本町小学校での青い目の人形をはじめとした学習活動でも,iFriendを積極的に活用していきたい。

 

和歌山県熊野川町立熊野川小学校 国語の時間「詩をつくる」

 熊野川小学校山中昭岳先生のクラスでは国語の時間にiFriendを使って詩をつくらせた。

 

今後の課題

 海外交流に関しては,そのツールができて子どもたちの発信が自由にできるようになったが,交流先の確保が最も大きな課題であり,本プロジェクトでもそれが目標でもあった。各学校の協力により海外との交流ができたが,これらの実践を核にして,今後も本プロジェクトでつくりあげたこの人的ネットワークを継続・拡大して恒常的な海外交流の支援を行っていく予定である。