国際交流のハードルを超えて子どもたちを世界へ

 

1.プロジェクトの目的

学校教育の場には国際交流を妨げる数々のハードルがあり,日本の子どもたちと世界のこどもたちとが共に学ぶ機会や,国際的な感覚を育てる環境を学校につくれないでいる。これは次代を担う人材育成に関わることでもある。

 国際理解・交流の問題は,単に教師自身やボランティア団体だけの努力で解決するものではなく,総合的に情報の提供や支援体制を整備したセンター組織と,地域で地元の学校支援をするボランティアによる地域ネットワークの構築,および双方の連携が不可欠である。

テクノロジーと人の絆で,はじめてハードルが超えられるのである。

.実施体制および指導案

 交際交流を推進するための環境を整備するため,本プロジェクトではポータルサイト及びその支援システムを構築した。(http://www.jearn.jp/

 本システムは国際交流を総合的に支援することを目的としていて,各国際交流の場面や利用者に対して円滑な情報提供・情報交換・ツール提供を行うことを基本方針として開発した。

 本プロジェクトにおいては国際交流のポータルサイトの形において情報の提供及び交流支援機能の提供を行っている。その実現にあたり,以下のサブシステムのプログラムを開発した。

(a) 情報提供システム    ・・・様々な海外の交流情報を日本語で利用しやすく提供

(b) ボランティア登録システム・・・国際交流のインターネット三種の神器を無料で提供

(c)  事例収集システム   ・・・厳選された海外との参考交流事例をタイムリーに提供

(d) FAQシステム     ・・・充実のヘルプデスクで迷子になる心配なし

(e)  翻訳チャット掲示板システム・・・言葉の心配もこれで解決

(注)インターネット三種の神器・・・ホームページ,メーリングリスト,掲示板

 これら豊富な機能を使いこなすために操作マニュアルを作成し,ホームペ−ジ上に「Help Desk」として公開した。また,交際交流が初めての先生も簡単に行えるように国際交流パッケージを作成した。(テディベアプロジェクト,オディセイ,I*EARN,テレクラス)

さらに,各情報の公開と調整を行う事務局会議を毎週月曜日に行い,各担当者が抱えている仕事あるいは問題を出し合い解決策を探ると共に,事務局全体として行う作業のスケジュールの調整を行っている。

3.実践活動実績

このようなJEARNシステムを利用して以下の実践活動を行った。

3.1 Dream School Video Conference 

2001年11月9日(日本時間夜9時)世界の7カ国(Bulgaria, Australia, USA, Taiwan, Ukraine, South Africa, Japan)10サイト(Sofia, Victoria, Florida 2 , New York, Taiwan, Ukraine, Johannesburg, Chiba, Kobe)  を結んだISDN回線使用多地点接続テレビ会議を行った。約200名の中学生・高校生が現在の学校生活から「これからの学校・未来の学校」をテーマに多様な表現で発表し,また次代を生きる仲間としてのつながりを実感した。

 001年2月から関係者間のメール交換で準備を始めた。決定された必要事項や情報は,順次JEARNバザールホームページ(http://www2.jearn.jp/fs/37/index.html上に公開掲載された。

3.2 環境問題をテーマとしたハワイ州高校生との交流

京都府立城陽養護学校通学高等部は,昨年から環境問題について学習してきた。太平洋に浮かぶ同じ島国に生きる高校生が自国の環境問題を考え交流することで共通の問題を見つけられるのではないか,またその環境問題を解決するための提案ができるのではないかと考えた。

メーリングリストを活用することで1)時差の問題について2)ホノルル地区教育委員会にある多地点接続装置の費用問題3)日程4)テレビ会議の内容について話し合うことができた。また,テレビ会議後,反省や感想などを教員間で交流することができた。

テレビ会議には,カラニ高校(日本語教員・社会科教員)ハワイ大学(日本語教員・遠隔教育担当)保護者,テレクラス・ハワイ,マッキンリー高校(数学科教員),教育委員会で多地点接続装置(PEACESAT管理)を管理する担当者,保護者など10名近く参加した。

3.3.講習会実施

大阪,名古屋,東京,熊本においてJEARNシステム講習会を行った。内容は先生が国際交流活動を行ううえで必要な一般的な機能の説明・実習であった。講習会は当初考えていたシステムの説明というものから,先生方の情報交換会の意味合いを持つものになっていき,事務局と各地の先生方との繋がりが緊密になると共に,各地の講習会に参加された先生方の間も確実に繋がってきたと実感できた。

4.実践活動の成果のまとめと,実践活動の問題点・課題

 JEARN(グローバルプロジェクト推進機構)は,過去積み上げられた経験やノウハウという人的資源と,ICTを活用した新しい仕組みを連携することにより,これらの障壁を乗り越えて多くの人々に国際交流学習のきっかけを提供しようとしている。
今まで国際交流学習というカテゴリーでのポータル(入り口)サイトがなかったが,JEARNは自らの情報発信や交流だけではなく,地道な活動を継続する他の活動を支援するハブ的役目をも担うことを目指したホームペ−ジ・システムとなっている。

 ホームページ群は,できる限り多くの情報を,読みやすく整理して,早く提供することを目指して頻繁に更新を行うことを目標にしている。この努力が効を奏してホームページのアクセス回数が月を経ると共に増加している。それも,日本国内だけではなく,海外各国からもアスセスされている。

 個別の国際交流活動を行う上では,はっきりいってJEARNのシステムは必要ない。必要な部分としてはホームページ,掲示板,メーリングリストだけであろう。

後は事務局のサポートがあって国際交流活動が成功すればそれで終わるのである。

しかし,これでは同じような交流活動を行いたいと望んでいる先生方には何も情報として残らない。

JEARNのシステムは個別の国際交流実践の情報を確実に載せることによってそこから派生する多大な効果が期待できる。先生方に対するJEARNシステム利用技術の浸透と先生方の情報共有化の考え方への意識改革が今後の課題となるであろう。

 また,国際交流は先生一人でするものではないはずで,先生が持っていないスキルを学校内あるいは地域から借りてくればよいのである。ひとりで悩まないでみんなと楽しく国際交流しましょうよ,と用意した機能がもっと活発に利用されて特に地域の人達が学校に入りこんで,子供達を指導するのがあたりまえになればいいと事務局では思っている。

さらに,グローバルプロジェクト推進機構JEARNが,学校や地域ボランティアとともに「子どもたちを世界へ」つなぐ海外交流支援組織であるうえは,海外の学校・教員・ネットワークとの密接な連携がなければ,この仕事は成立しない。むしろ近い将来に,JEARNが海外から学校間交流の日本側窓口として認知され利用されるという期待がもたれる。海外組織との人の交流や密接な連携なくJEARNの未来はない。

5.JEARN今後の課題

 インターネットの大海原に浮かぶ小船を認知し,連携し,協働する国際交流学習ポータルサイトとして,或いは情報ハブステーションやJEARNプロジェクト企画運営サイトとして,グローバルプロジェクト推進機構JEARNは,始動からテストランへ,そして現在,エンジンを全開し機能し始めた。

 現在抱えている問題として,第1に,JEARNユーザーの拡張,第2に,JEARNコーデイネータとボランティアとの協働,第3に,JEARNユーザーが常時選んで使える多様かつ新鮮で豊かなJEARN栄養の補給,第4にJEARN活動の心臓部,エンジンルームとも言えるJEARN事務局の存在がある。近い将来,NPOを目指したいJEARNであるが,グローバルプロジェクト推進機構JEARNのエンジンルームであるJEARN事務局のエンジン用燃料(資金)を何処から得るかいまだ不明である。

 次に目指すのは,ちびっこJEARNサイトである。このEスクエアプロジェクト「国際交流のバリアを超えて,子どもたちを世界へ」のバリアとは,大人側のバリアであって,実は子どもたちの意識は既に世界へ歩き出しているようである。それがまた,JEARNの究極のゴールでもある。