地図利用地域学習サイトの研究開発と共同利用の実証実験

 

1研究の背景

鳥取県では,平成10年12月に鳥取県教育情報通信ネットワーク(略称:Torikyo-NET)を設置し,県内小,中,高等学校のインターネット接続拠点として役割を果たしてきた。しかし,光ファイバー,CATV等のインフラ整備や校内LANの整備などが進みつつあり,従来のインターネットに接続できる段階から次の段階に進む必要が発生してきていた。

そこで,平成15年度完成予定の鳥取県情報ハイウェイにあわせ,子どもたちの情報活用能力育成を育成する場,コミュニケーション能力育成の場として,さらに県内教職員の情報交換の場としての拠点機能の充実を平成13年度より図っている。

 

2概要

今回のプロジェクトは,Torikyo-NETの構想の一環として,鳥取県下を対象とした地図と情報の登録閲覧システム(Webマップ鳥取県)の研究開発と,そのシステムで狙った子どもたちの自発的な学習活動に関する実証実験を行った。

 

3開発システムの特徴

開発したシステムは,小学生でも利用しやすい参加型・自己増殖型学習データベースサイトである。ただし,通常のデータベースサイトと異なり,学校ごとの個別利用情報と全学校への共同利用情報を統合管理するデータベースを特徴としている。これにより,使用している学校しか閲覧できない「学校専用」情報(:学校スクウェア)とすべての利用者が検索・閲覧できる「共用」情報(:公共スクウェア)という2重構造を持たせることができる。

単に,子どもたちが調べ学習を行うことで集まった情報を蓄積していくことを目的とするのではなく,情報活用能力の育成を子どもたちの成長段階と照らし合わせ,

1)自分たちの調べた情報を友達同士など知っている人に公開する段階

2)自分たちの調べた情報を他の学校の子どもたちに知らせる(知らせたいと思う)段階

3)自分たちの調べた情報に公共的な価値を感じ,一般の情報として公開する段階

といった段階を踏むことが可能なシステムを考えた。

 

4実践事例

(岩美南小学校4年 総合的な学習の時間)

子どもたち自身が1年間の総合的な学習の時間で調べてきた「岩美南小学校校区のきらり(私たちの町じまん)」をWebマップ使って,より多くの人に知ってもらい,それに対する校外からの意見・感想を生かしてより良い情報発信を考えることができることを狙った。

Webマップの機能を使って情報ページを作成することはさほど難しくなかったが,単に情報ページを作成しただけでは校外に発信したという感覚を持ちにくい。自分たちの作った情報ページの掲示板に外部の先生や他の学校の子どもたちから書き込まれることにより,自分たちの作成した情報ページが他人に見られているという実感を持つことができた。

そして,掲示板に書き込まれた感想や質問から,作成していた情報ページを修正したいという気持ちを子どもたち自らが持ち,修正し,さらに多くの人に見てほしいという気持ちで共有スクウェアに公開した。

(智頭小学校4年 社会科)

2学期の社会科の学習において県の副読本等で鳥取県の特徴のある地域のことを勉強してきているが,実際に行ったことのない地域のことは実感を伴って理解することは難しい。そこで,同じ県内でも智頭町とは異なった特徴を持つ境港市の境小学校の3年生と交流学習を行うことで学習している地域を身近にとらえさせたいと考えた。

Webマップ上に2校だけのID,パスワードを発行して2校だけが参照できる状態にし,お互いの学校で地域の情報ページを作成する。相手の情報ページの掲示板に感想や意見を投稿させることで,副読本にはない内容まで学習を深めることができた。

また,同じ時間帯に授業を設定してお互いに掲示板に書き込みを行うと,リアルタイムに掲示板の内容が変化することでより相手を意識することができた。

 

5成果と課題

 限られた時間でのWebマップの開発において,地図の精度やマッピングよりも,情報ページの作成のしやすさにポイントをおいた。実践授業後のアンケートにおいても,子どもたちは情報ページの作成操作自体に難しさはほとんど感じておらず,また作成したいという感想が多かった。

 また,各情報ページに掲示板機能を持たせるようにしたことが,当初の予想以上に効果を発揮し,子どもたちが自ら修正したいという意欲に結びつけることができた。

 問題点としては,掲示板機能を利用する場合,公共スクウェアに公開していない段階では学校ID,パスワードを知る者しか書き込むことができない。もちろん,公共スクウェアに公開した場合はゲストでログインできるので誰でも書き込むことができる。しかし,子どもたちに情報ページの修正段階を踏ませるには,最初に情報ページを作成したときの掲示板への書き込みが重要であり,校内や保護者等からの書き込みもそうだが他校の子どもたちの書き込み

が重要なポイントとなる。その意味ではセキュリティ面も含めてこの機能をどう発展させるかを検討する必要がある。

 

6地域への展開

 「1.研究の背景」で述べたように,鳥取県はTorikyo-NETというネットワークを中心として,子どもたちの情報活用能力,コミュニケーション能力をどう育成すべきかを検討し,学校での実践に役立つシステムを開発・提供し実践研究を行っていきたいと考えている。今回のプロジェクトはその足がかりとして重要な役割を果たした。

 すでに研究内容はTorikyo-NET上で配信しているが,さらに様々な形で県内に広げるとともに,この実践研究を教育研修センターの研究として継続・発展させていきたい。