Eスクエア(e2)・プロジェクト 成果発表会

瑠璃色の地球を守るために行動しよう

− 「ぼらぷろ」を横浜から発信しよう −

横浜市立本町小学校 6年担当  高木 伸之
honchoes@city.yokohama.jp
ayaka@ma4.jusunrt.ne.jp

キーワード: キーワード:総合的な学習,環境学習,平和,情報教育,遠隔学習,近隣校共同学習


1.はじめに

 子供たちがとらえる「瑠璃色の地球」の瑠璃色とは,「七色の光を放つ宝玉の色である。そしてその光を保つには,みんなの努力が必要である。」という意味を含んでいる。瑠璃色の地球の様子とそれを阻害する環境,平和問題等を対比し,瑠璃色の地球を守り続けたいという願いやそのためにはどうすればよいかという問題意識をもち,人間を含めた生物が生存していくための欠かせない条件として,食べ物,水,空気などの環境の必要性に気づくと共にそれらについて詳しく調べるための方法を工夫したりぼらぷろなどの具体的な活動を通したりしながら「瑠璃色の地球を守る」子供を育てることを重視している。
 本学年の子供たちが5年生のときには,「人とのかかわりの中で自分のよさを実感し,豊かに表現する子ども」を目指して,メール交流,テレビ会議交流,CD−ROM作りを中心にマルチメディアプロジェクト学習を進めてきた。交流を進めていく中で子供たちは,秋田で米作り農家を営む田中さんとの出会いをきっかけとして環境に対する問題意識を深め,地域清掃をはじめとする様々な活動へと発展させることとなった。特に「オールクリ−ン外国人墓地」でのボランティアのお兄さんとの出会いは,「ボランティアプロダクション」通称ぼらぷろ設立へと発展していくと共に,年間を通しての日常的活動として定着していくことになった。
 このぼらぷろ活動は,地域に根ざした活動として実践してきたが,本年度はさらに,より多くの人に広めていくために,横浜から全国,さらには世界に広げていくことを実現させたいと考えている。なぜならば瑠璃色の地球を守るためには,環境,平和に対する意識を広げ,地球規模で行動を広げていかなければならないからだ。そこで,子供の環境,平和に対する意識の高まりを行動に結びつけ,地球全体に広めていけるような年間計画を立て,足下からの実践が実を結ぶよう支援しながらテーマを追究していけるようにした。

2. 年間の学習構想

 ぼらぷろについての意識は,学年当初から学年全員の子供たち全員の中に高まってきていた。その思いや願いは次の子供(Aさん)の作文で集約できるであろう。

 私たちの学年では「ボランティアプロダクション」という会社?みたいなのをつくり,環境問題に取り組んでいます。地域のゴミ拾いや横浜の観光地,外国人墓地の清掃などに取り組んでいます。そのとき,たくさんのゴミが捨ててあっていつもびっくりします。 〜中略〜
 今,地球上のあらゆるところで酸性雨や温暖化,ダイオキシンなどの環境破壊が起こっています。わたしは,このことについても調べてみんなで瑠璃色の美しい地球を守っていきたいです。
 「地球に住む全ての人が,」というのは無理かもしれませんが,少なくとも,未来の世界の動きをつくっていく私たちぐらいはそうしたいものです。そして,このことを,私たちの地域や日本,世界の人に伝えていきたいです。「ぼらぷろ」はそういう私たちの活動です。

〜Aさんが海上保安庁に向けて書いた作文より〜

(1) 子供の思いや願いを生かして!

 上記の子供の作文は一つの例であるが,62名の子供たちから次の3つの思いや願いが伝わってきた。

ア ぼらぷろ活動を自分たちの足下から実践していきたい。
イ 環境破壊のことについて調べて地球にやさしい生活をしたい。
ウ 瑠璃色の地球を守るためにぼらぷろ活動を広め,みんなで取り組みたい。

このような思いや願いは,昨年度の活動からの積み重ねで62名全員のものになっているので実現できるように支援していこうと考えた。
 アの「足下からの実践」では,美しい横浜を守るための活動として「オールクリーン」「地域清掃」を年間の中に位置づける。特に,本年度からは保護者と共に取り組むことから始め,地域の青少年指導員の方,体育指導員の方を通して地域に広げることができるようにする。
 イの「環境破壊についての調査活動」では,本町の時間を中心として社会科,家庭科,体育科など,各教科等の学習の総合化を図り,主題構成を工夫して子供の思考がより深まるようにする。
 ウの「広める活動」では,地域に広げることはもちろん,多地域,諸機関などの人とかかわることを通してぼらぷろ活動が広まるようにする。
 本学年が「環境」を年間構想に取り上げたのは,以上のような子供の思いや願いがあるからである。そこで,ぼらぷろ活動と環境学習を一体化させ,子供が美しい瑠璃色の地球を常にイメージしながら,夢中になって楽しく学習が進められるように配慮しながら,本テーマの基盤である「瑠璃色の地球を守る」ための情報発信を含めた総合的な力が身に付くように支援していくことにした。

(2) マルチメディアが学習を支える!

 学年の友達,最高学年として学校全体,地域の人たち,インターネット,メールやテレビ会議を通しての交流等,いろいろな人とのかかわりを重視しながら相手意識と目的意識を明確にしたい。相手,目的を明確にすることでぼらぷろ活動を広めることへの必要感を感じ,コミュニケーションのある学習が展開できるであろうと考える。そのために様々な学習の場において,豊かなコミュニケーションと自己表現のための道具として,コンピュータ等を積極的に活用できるように支援していきたい。

(3) オープンスペース,オープンマインドを学習の基盤に!

 教室や学習センターを学習資料の掲示情報交換などのコミュニケーション,情報収集等の場として積極的に活用していく。そして,活用のコーディネートは子供とともに考えていく。 また,ぼらぷろ活動を広めるという視点に立って,地域の方や,全国の諸機関等に環境保護を働きかけていけるようなダイナミックな学習が展開できるようにする。

(4) T・T(ティーム・ティーチング)を機能的に!

 2グループを生活の基本グループとしているが,学年全体の意識を大切にし,学習内容や形態に応じてグループを弾力的なものとしている。必要に応じて個別に対応するなど,豊かな学習や充実した活動を保障し,個に応じた学びができるようにT・T(ティーム・ティーチング)を機能的に実施していきたい。
 以上のような手だてで,マルチメディアプロジェクト学習を通して子どもの自発性を引き出し,生活を含めたすべての学習の場において,自分で目標を設定し,課題を選択し,活動を決定して学習に取り組めるようにする。そして自分のめあてが実現できたことの喜びが味わえるようにしていきたいと考えている。そのことが自分や人のよさを実感し「生きる力」ことにつながると考えるからだ。そうすることで,人や環境にやさしい生活を創り出す子供になってほしいと願っている。

3. 2つのロングプロジェクト

 6年生のロングプロジェクトは,「ぼらぷろ」の情報発信と卒業活動の2つと考えた。それらがうまく融合して一つのものになることを目指して,マルチメディアプロジェクト学習の実践を図る。

(1) 「ぼらぷろ」を横浜から発信することを中心としたプロジェクトの設定

 本町の時間を中心に事実に即した問題を意欲的に追究する活動を通して,宇宙船地球号の乗組員としての意識をぼらぷろ活動という行動につなげていきたい。だから,地球を構成する水,土,空気,物質などの自然事象に直接ふれることはもちろん,直接体験のできない内容についてもインターネットやメール交流を通して体験できるようにし,地球環境に対する見方や考え方が広まるようにする。また,教科等の関連をはかり,図書資料やインターネット,メール交流を通して,地球環境に対する自分の思いを豊かに表現したり,問題解決をしたりすることができるようにし,環境を意識した小さなぼらぷろ活動が地球を守ることにつながるという実感が味わえるようにする。そのために環境に対して自分たちの主張したいことや自分たちの実践をその都度ホームページとして残すようにする。そして,そのホームページを効果的に使って学校,地域,全国に向けて発信する。

(2) 卒業CD−ROM「ぼらぷろ」作成へのプロジェクト学習の蓄積

 ぼらぷろ活動や各教科等,行事の記録をコンピュータを使ってまとめ,ホームページ化をしておく。このショートマルチメディアプロジェクトの積み重ねが学習記録の蓄積になり,瑠璃色の地球を守るためのロングプロジェクトの足跡となる。また,卒業記念CD−ROM「ぼらぷろ」作りをの内容を積み上げていくことになる。子供たちはこのCD−ROMのイメージをもちながら,1年間の活動をつくることになる。そうすることで自分自身の成長の振り返りもできると考える。また,卒業記念として将来の自分に向けてのメッセージの役割を果たすことにもなる。

4. 年間主題構想とマルチメディアプロジェクト学習実践

5. 今後の展開

 本学年の子供たちは,各教科等で学習したことをコンピュータでまとめている。それを卒業記念CD-ROM「ぼらぷろ」としてまとめることを意識している。「ぼらぷろ」の活動のまとめはその重要な部分として位置づけているロングプロジェクトの一つである。
 そこで,子供たちのもっているマルチメディアを使った表現力を生かし,地域や全国にぼらぷろ活動がアピールできるようにすることが子供を伸ばす支援の一つだと考えた。これらは,ぼらぷろ活動を広めるためにマルチメディアプロジェクト学習を役立てる実践プランなのである。
 例えば,地域清掃の様子をホームページ化し,全国に向けて発信することを通して,いろいろな人に活動を呼びかけたり,自分たちの環境調査をホームページを通して熊野川小学校にプレゼンテーションし,共同で環境学習をするというものである。ホームページ化することのよさは多くの人が活動を知ることができると共に,共感してくれる人が増えることであると考える。さらにその人たちの気持ちが返信されてくることや行動となってぼらぷろ活動が広がれば,瑠璃色の地球を守るという子供たちの夢に近づくものと考える。
ぼらぷろ活動を広げるためには,共に活動を理解してくれる「仲間」を増やし,さらに共感を呼ぶことが大切である。2学期以降,まず子供たちは自分たちの住む地域の中学生や町内会にも活動を呼びかけたり,交流している他県の学校に今まで以上に働きかけたりしながら,ぼらぷろ活動に生きて働く力となるよう,全国,世界にアピールしていきたいと考えている。