Eスクエア(e2)・プロジェクト 成果発表会

見る,食べる,遊ぶ,そして考える ふるさとの川,吉野川

− 上流,中流,下流との交流を通して −

徳島県三好郡三加茂町立三庄小学校 鶴田 真由美
http://www.netwave.or.jp/~sansyo/

キーワード 小学校,総合的な学習,交流,共同学習,情報教育


1. はじめに

 本校のすぐ近くを流れる吉野川は全長194qで高知県にその源を発する。「四国三郎」と呼ばれ,坂東太郎,筑紫次郎とともに日本の3大河川として並び賞されている。自然も豊かで,その歴史や文化も興味深いものがたくさんある。またそれだけに,流域の人々の生活にも大きな影響を与えてきた。この吉野川流域に位置する3校がメディアを活用し,総合的な学習を共同学習として行うこととなった。インターネット等を利用したこのような大きな川での交流はこれまでにあまり見られなかったことである。この交流の中でのメディアの果たす役割を追求するとともに,同じ実践をする今後の学校のためにその交流マニュアルを作成することも目的のひとつとしてスタートした。
 本校は吉野川中流にあたり,メディア環境にも恵まれているため,3校のまとめ役として交流を計画してきた。学習全体を眺めながら,より効果的な交流学習を目指し,中心校の役割についての研究も進めることとなった。

2. 実践のねらい

3. 3校の位置

吉野川と3校の位置
図1 吉野川と3校の位置
  ○上流校・・・高知県長岡郡大豊町立豊永小学校
  ○中流校・・・徳島県三好郡三加茂町立三庄小学校
  ○下流校・・・徳島県板野郡吉野町立柿原小学校

4. 実践の内容

(1) 交流を支えるメディア群

 1) テレビ会議
テレビ会議風景
図2 テレビ会議風景
   
 初めての顔合わせはもちろんテレビ会議である。お互いの 学校のことや自分たちのことを紹介し合い交流が始まったが,一度も会ったことのない者同士,最初はどうしてもぎこちなかった。
 しかし,回を重ねるうちにだんだんとぎこちなさは消え,すぐそこ にいる友だちのように話すことができるようになった。テレビ会議の中 では学習していくテーマを紹介し合い,お互いの学習内容を検討し共同 学習として調べていくことを絞り込んだり,お互いへの情報の提供を行ったりした。そして調べたことを発表し合って,同一河川の流域でもいろいろな違いがあることを子どもたちは学んでいった。
 テレビ会議の形態も最初は全員での大会議から,グループごとの小会議とそのときの内容によって使い分け,テレビ会議が効果的にできるよう工夫してきた。
 2) ホームページの活用
 各校のホームページを活用して調べたことを発信し,お互いの学習に役立てた。これを見て自分たちの地域と比べ,情報を発信したり,メールを通じて意見を交換したりとメディアをその場に応じて有効に使いながら学習を進めていくようにした。

 3) メール
 メールを使い,子どもたちが自由に情報を交換していくようにした。最初は「今日の天気は・・・・」などと自分たちの生活のことから始まり,次第に学習していることについての質問や意見の交換へとつながっていった。
 学校間では担当教師がメーリングリストを組み,学習テーマやテレビ会議の内容,活動計画を細かに情報交換し,常にお互いにどんな活動をしているのか知ることができた。また,必要なときには画像をメールで送ったりとメーリングリストは欠かせないものとなった。

(2) 交流を固めるためのオフラインミーティング(直接交流)

 1) 交流会
 ネット上でのオンラインミーティングに対して,子どもたちが対面し直接交流を行うオフラインミーティングを 計画した。バスで中流の三庄小学校へ集まり,交流会を楽しんだ。子どもたちは始めは緊張したものの紹介式やゲームを通して次第に仲良くなり,まるで前からの友だちのように接している様子も見られた。
 お互いに調べたものをまとめて持ち寄り,中間発表会を行った。まとめたものには何メートルにも及ぶ模造紙あり,地図あり,web上に掲載されたものあり,イントラバケッツ(学習まとめ用ツール)でまとめたものありと多彩で,展示会形式にして参加者全員が楽しんだ。それぞれの展示場所にはそのグループの子どもたちがいて,説明をしたり質問に答えたりする自主的な活動が見られた。
 この後会場校である三庄小学校が世話をして,吉野川の石や植物を使った体験学習をして交流をより深めた。
パネルで展示
図3 パネルで展示
 2) 共同制作
 会場となった中流地域により親しんでもらうために河原で弁当を食べ,河原での遊びをすることとした。このころには3校の子どもたちは学校の枠を越えて入り乱れて活動した。
 その後,この楽しかった思い出を大きな画用紙に描く共同制作を行った。時間の都合で当日の完成には至らなかったが,3校を回しながら徐々に完成へと近づいている。
 3) 共同宣言
 交流会の最後には,3校の子どもたちの代表が今日の楽しかった思い出を話し,吉野川共同宣言を発表した。「私たちはこれからも吉野川に親しみ,吉野川について学び,そして3校が兄弟のようにして吉野川を守っていきましょう。」という共同宣言を胸に,子どもたちはそれぞれの学校へと帰っていった。

(3) 総合的な学習と交流学習のつながり

鮎漁に使うかんどり舟を見学
図4 鮎漁に使うかんどり舟を見学

 地域の川吉野川をテーマにした総合的な学習では,自分たちが調べたいテーマを決め情報を収集して調べ,調べたことをわかりやすくまとめて発信することを学習の課題としてきた。その中で人や自然との接し方を子どもたちに学ばせたいと考えた。今回各校だけの総合的な学習にとどまらず,交流学習として共同で取り組んできたことにより効果的に学習が進んだ。そのひとつは,交流学習により子どもたちは自然と人とのつながりを感じ,そのつきあい方を自然に学んでいったことだ。ふたつめには共同学習の中で伝えたい相手がいること,そしてその相手がはっきりとわかっていることは,不特定の相手に伝える以上に調べ方やまとめ方を工夫することができたということだ。また,交流学習から子どもたちは上流,中流,下流といった川の流れを感じ,それぞれの流域と比較検討することで一流域のみの調べ学習では得られなかった成果も手にすることができた。これらは各校ごとに調べ学習を行ったのでは容易にはできなかったことだ。このように交流学習が総合的な学習を効果的に進めさせ,また総合的な学習で交流学習が成立してと,お互いに切ることのできない関係がここに成立した。三庄小学校ではこの成果を生かし,校内でも4,5,6年生合同での「学習成果発表フェア」を行い,保護者や地域の方をはじめ他校の先生方にも見ていただき評価していただいた。

5. まとめ

 今回の交流はオンラインのテレビ会議やインターネットから始まったが,途中にオフラインの直接交流をとることでより効果的で密度の濃い交流へと広がりを見せた。それは毎日のように続く子どもたちのメールの交換やその後の交流や学習への意欲に表れている。これはオンラインの交流がオフラインの交流を取り入れることで,より活発なオンラインの交流へと発展していったことになる。インターネットを使った交流の中にも直接交流の必要性を痛感した。
 様々なメディアを使い分けながら今回の学習を進めてきたが,まだまだ効果的な使い方とは言い難い。その他の方法も試行錯誤しながら今後の活動を展開していきたい。
 また,子どもも教師も今後の交流には意欲的で,年度をまたいだ,また学年を越えた交流を今後も続けていきたいと考えている。その中で,吉野川流域での交流校がさらに増えることも考えられ様々な活動や交流の広がりが期待される。