Eスクエア(e2)・プロジェクト 成果発表会

広い目で世界を知ろう

− International exchange project −

福岡県福岡市立早良小学校 龍造寺 譲
http://www.edu-center.plala.or.jp/schoolhp/esawara

キーワード: 小学校,総合的な学習,国際理解,国際交流,電子メール


1. はじめに

 現在,総合的な学習の導入に向けて各地域で様々な取り組みがなされてきている。
 本校でも,本年度の総合的な学習の実施委員会に於いて地域に重点を置いた地域の人々とのふれあい活動,国際理解に重点を置いた活動,環境・福祉に重点を置いた活動,そしてそれらを有機的につなぐ活動のあり方について様々な角度から追究している。しかし,まだ十分な議論がなされておらず,暫定的にカリキュラムを組んでいるにすぎない。 この「広い目で世界を知ろう」の企画も実施するにあたってはかなりの時間が必要となることから現行の授業時数から国語に関するもの,社会に関するもの,算数に関するものなどをピックアップし,実践を行った。
 海外の国々とメール交換することは容易ではなかったが,やっているうちに本当に総合的な学習をしていかないと国際理解は困難であり,自分を知り,社会を知り,自国の文化を知ることが国際理解をする上で重要であることに気づいた。

2. 実践の前に(挫折の連続)

 このEスクエアプロジェクトを実施するにあたり,私たちは交流相手校を決めたり,コンピュータをネットワークにつなぎ,海外ともつながるようにしなければならなかった。
 海外の学校と交流するにあたってどこに連絡をしたらよいのか,どのように手続きを踏まえていけばよいのかさっぱり分からず,はじめから挫折してしまった。
 コンピュータを4階の5年教室に置くことはできたが,3階のコンピュータ室にISDN回線があるのでそこからケーブルを持ってこなければならなかった。はじめは天井に沿わせていけば何とかなるだろうと考えていたが,階段の所で非常扉が閉じられなくなるのでこの計画も失敗だった。結局鉄筋の柱の中にあるパイプを通して4階までケーブルをつないでいった。

3. 海外とのメール交換

(1) 日本人学校への質問メールを送ろう

 子どもたちと海外のことについてどのようにして調べていけばよいのかを話し合い,英語で書かれているホームページを読んでもさっぱり意味が分からないので,日本人学校のホームページを読んでいくことにした。ホームページを読んでの感想から始まり,その国の気候,品物の値段などについて質問し,メール交換していった。

(2) ロンドン日本人学校の生徒との交流

 ロンドン日本人学校の先生にお願いしてメール交換してくれる児童を紹介してもらい,個人的にメール交換していくことができるようになった。
 はじめは,どちらも簡単な挨拶から始まり,すぐに仲良くなっていき,ロンドンでの生活や建物の違い,気候の違い,食べ物のこと,友達のこと,遊びのことなど次第に交流することが増えていった。

アメリカのホームページ
図1 アメリカのホームページ

(3) e−palsで一気に世界へ

 どこかに交流を希望している学校がないかとアメリカの小学校のホームページを見ていたとき,ふとe-palsの文字を見つけ,もしやと思いクリックしてみた。
 ここに自分の学校を登録すれば世界中からメール交流を希望している学校が見つかるのではないかと思い,本校を登録した。
 翌日早速メールが届き,次々と交流希望する学校が見つかっていった。e−palsに登録しているのはほとんどが先生なので,お互いすぐに意気投合し,お互いの学校のことについて交流していくことができた。

4. 増えすぎたメール交流希望校

 初めのうちは何通か子供に質問してみたい内容を書いてもらって私が翻訳してメールを出していた。しかし,だんだんと交流相手校が増えていき,子供へのメール翻訳が追いつかなくなってきた。結局,グループでまとめて質問したいことを送り,相手校からも何人分かまとめて返事を書いてもらうという形にしていった。
 これらの交流の中でいろいろな質問がなされ,子どもたちも毎日どのようなメールが来ているのかを楽しみに待つようになっていった。

作成中
図2 メールを読んでいる所

5. 深まる交流

アメリカの小学校を中心にカナダ,ノルウェー,イギリス,トルコ,アラブ首長国連邦など世界中からメールが届き,世界中に発信していくことができるようになった。
 初めのうちは教師同士の学校紹介から始まり,お互いの学校での出来事,学習していること,生徒からの質問というようにメールの中身が変わっていった。
 これが発展し,子供から直接メールが届いたり,写真を送り合ったり,アンケート調査をしたりと次第に子供同士でのメールのやりとりが行われるようになってきた。

例えば
○ どうして家の中に入るときに靴を脱いで入るのか?
○ 畳の部屋は考え事をするための部屋なのか?
○ ポケモンゲームはどれくらい流行っているのか?
○ そちらの学校では昼休みは何をして遊んでいるのか?
○ 好きなスポーツは何か?
○ 宿題が出ているのか?
 など,日常生活や学校生活に関するたくさんの質問をお互いにしていき,子どもたちはお互いの文化の違いや考え方の違いなどに気づいていった。また,クリスマスやミレニアムについてお互いどのような祝い方をするのかを交流しているとき,どうしてしめ縄をするのか?年越しそばはなぜ食べるのか?など日本の文化について紹介しなければならなくなり,相手の国の文化を知るためには自国の文化についても知らなければならないことに気づいていった。

6. 実践の結果と考察

 子どもたちはこの「広い目で世界を知ろう」の学習の中で様々なことに気づき,興味を持ち,メールを書いていった。この実践は本来メールを書くことが目的ではなく,メール交換を通じて子どもたちがより広い視野に立って物事をとらえ,世界の人と心を通じ合い,世界の中の日本人としてもう一度自分を認識してほしいという願いを持っていた。子どもたちにとって自分が考えた質問やメールの返事が返ってくることは大変な喜びであり,また新たな質問を考えてメールを送ったり,その国のことについてもう少し調べてみようという姿が見られた。
 また,メールと一緒に送られてくる写真はより一層子どもたちのイメージをかき立て,アンケートの結果からも分かるように「自分もその国へ行ってみたい」「自分も英語が話せるようになりたい」「もっと他の国にもたくさんの友達がほしい」など様々な夢や希望を持たせることができた。そして,これからもっと環境保護についての取り組みや,ボランティア活動のこと,お互いの国の文化についての比較調査などいろいろな内容で交流できる可能性が見えてきた。まだこの交流は始まったばかりなのでこれからますますお互いのことを知り,子供同士が1対1でメール交流をしていくことができるようにしていきたい。

手紙 クリスマスカード
クリスマスカード
手紙 ミレニアムカード
ミレニアムカード
図3 アメリカから送ってきた手紙