Eスクエア(e2)・プロジェクト 成果発表会

ネットワーク利用向上プロジェクト

− 地域教職員の情報活用能力向上をめざして −

上野原町立巌中学校 降矢 俊彦
http://www.kai.ed.jp/iwao-jhs/

キーワード: 情報教育,インターネット,教職員研修


1. はじめに

 1997年新校舎竣工の本校は,情報教育推進モデル校として三年間継続して情報教育に取り組んできた。本報告では,広く地域の教職員に対して本校の施設・設備を開放し開催したネットワーク利用を前提とした情報機器活用研修会と情報教育授業実践を発表した公開研究会をついての報告を行う。 

2. プロジェクトの内容

 本報告の内容は次の2つからなる。

1) ネットワーク利用研修会
2) 情報教育公開研究会
 研修会ではネットワーク利用についての基礎的な技術を,研究会ではネットワークやコンピュータを活用した授業実践を,それぞれ地域の教職員を対象に公開した。

 

3. ネットワーク利用研修会

(1) 研修会の企画内容とスケジュール

 研修会を企画するにあたって次のような内容を考えた。

 地域の教職員が積極的に研究会に出席するために,研修会の主催を上野原町教育委員会にもお願いすることにした。そのための話し合いを8月よりはじめ,具体的に次のようなスケジュールで研修会を運営することになった。
8月 上野原町教育委員会との研修会についての話し合い,研修会実施細案の決定
9月〜10月 研修会案内発送,研修会実施・反省
1日目 インターネット研修会(使用ソフトウェアInternet Explorer,Frontpage Express )
2日目 授業参観,研修会(使用ソフトウェアFrontpage Express )
3日目 研修会(使用ソフトウェアPower Point)
4日目 研修会(中学校での校内ネットワークの管理について)

(2) 参加者について

 9月に発送した研修会の案内に対して,図1 のような参加申込があった。 地域の小中学校から50名に加え,上野原町教育委員会からも2名の参加希望があった。52名のうち4名の参加者は研修期間中自宅で利用するためのノートパソコンの貸与希望があった。また,参加者には4名の校長・教頭が含まれていた。図2 は研修会の様子である。


図1 参加申込者の内訳

図2 研修会の様子

4. 情報教育公開研究会

 本校では,課題解決学習を基本に,生徒の主体的な学習活動の実践を継続して研究している。今年度は情報機器活用を全面に出した次の実践(表1)を行い,その成果と全校体制での情報教育推進の工夫を公開研究会で発表した。

表1 情報教育に関する授業実践

教科

学年

単元名

内容

国語

 

2年

連歌の世界

連歌形式の作品の創作,電子会議室への書き込みを利用

3年

読書の秋

短編小説の感想を電子メールで作成,電子会議室で意見交換

社会

 

1年

地球環境問題

環境についての学習,学習の発表でプレゼンテーションソフト利用

2年

天平文化

インターネット上で歴史文化の調べ学習,修学旅行とも関連

数学

 

1年

課題学習

コンピュータシミュレーションを利用した課題解決学習

3年

関数

2次関数のグラフの学習,コンピュータグラフィックスの利用

理科

2年

動物の生活と種類

地域の生物の調べ学習,成果発表意見交換でインターネットを利用

音楽

2年

交響曲第5番ハ短調「運命」

ベートーベンについての学習,学習用ソフトやインターネットの利用

美術

3年

ヴァーチャルミュージアム

仮想美術館の創作,インターネット上での美術鑑賞とレポート作成

技術

3年

簡単なプログラム作成

ロゴ言語の学習,ソフトを使ったプログラム作成

家庭

2年

献立の作成

栄養計算の学習,表計算ソフトを使った栄養計算で利用

英語


 

1年

国際交流

ニュージーランドとの国際交流,電子メールの利用

2年
 

地域紹介
 

英語版地域紹介ホームページの作成
 

 各教科の実践は,全教師が情報機器を選択肢の一つとしてその利用が教育効果をあげるために,次の点に留意して指導計画を作成した。

1) 道具としてコンピュータを利用する。
2) 学習の中で利用するコンピュータのメリットを考える。
3) 多様な方法で授業にコンピュータを取り入れる。
4) コンピュータ教室での授業へのティームティーチングの導入を進める。
5) 全教師が使える環境整備を心がける。
 特に教師が情報機器を自由に利用できる環境整備のために,情報教育研究の推進委員会とは別に,情報機器利用のための組織=情報教育部会を設置し,推進委員会で企画立案された情報教育の実践を支えたことも含めて発表した。

 

5. まとめ

 研修会では,情報教育推進モデル校としての本校校舎の情報機器の施設を,地域教職員に開放できたことが成果の一つであった。参加教職員にとっても,勤務校と同じ地区内の研修会場の意味は大きく,本地区のように県総合教育センターから遠距離にある場合は時間・距離ともに恩恵があった。また,本校職員が複数で研修会運営にあたったことは参加者からの評判もよく,研修中の貸与ノートパソコンの利用とともに好評であった。今後は,授業公開・ネットワーク管理を中心とした研修会等,参加対象をより明確にした研修会開催への希望があり,検討していきたい。
 公開研究会は,中学校の学校現場で情報教育を全校体制で実施していることへの評価が高かった。各教科の視点から情報機器を取り入れた授業実践を行ったが,校内で統一された情報教育への考え方や体制の中で,生徒の情報活用能力も自然と向上していることも評価を得た。また,この教科でこういう活用方法があったのかという参加者の感想もあり,地域の学校での情報教育実践の手がかりとなる研究会になったと思われる。