Eスクエア(e2)・プロジェクト 成果発表会
インターネットやTV会議システムを活用した授業
− 確かな学力を育成するために −
福島県双葉郡葛尾村立葛尾中学校 田代 勝俊 志賀 博史
http://www.katsurao-jhs.katsurao.fukushima.jp/
1. はじめに
1.1 本校の実態と研究のねらい
本校は阿武隈高地のほぼ中央に位置する全校生徒72名のへき地小規模校である。素直で勤労精神に富む生徒が多い反面,隣接する学校が遠距離のため,他校との交流が図られにくく,小学校入学時から転出入やクラス替えもほとんどないので,学校生活の中で活発に活動する生徒と他人に依存してしまう生徒が固定化し,良い意味での競争心や自分を高めようとする向上心が育ちにくい。
そこで,生徒一人一人が自己成長を遂げるため,学習環境の一部としてインターネット等を活用したコミュニケーションの場を多く重ねるとともに,「自己学習力」「課題認識」「自己表現力」の観点から,確かな学力を生徒一人一人に身につけさせたいと考え,その指導法の研究を推進していくことにした。
1.2 本校のネットワーク環境
本校では,視聴覚室に生徒用のMacintosh が33台(図1),職員室では教師が個人で所有するノートパソコンをすべてLAN 接続(図2)し,校内のどこでもインターネットが利用できる環境にある。また,平成10年度,村の事業により学校を含む公共施設や村民全戸にTV会議システム(Phoenix-Mini)が導入された(図3)ため,CU-SeeMeのようなリアルタイムのTV会議が実現可能である。

図1 視聴覚室のようす |

図2 職員室のようす |

図3 Phoenix-Mini |
2. 実践事例
2.1 豊かな学校生活のために(3年学級活動)
(1) 実践のねらい
修学旅行において,計画・実行・学習のまとめのすべての場面を通してインターネット等を利用することで,自主的に活動させるとともに,今後の諸活動への関心を高めさせ,積極的に取り組む態度を養わせる。
(2) 実践の内容
1) 修学旅行事前の下調べと班別自主研修コースの計画(自己学習力)
- 地図やガイドブックばかりでなく,インターネットを利用して見学できる時間や料金,交通手段など,関連するWebページから生きた情報を検索したり,見学先に直接電子メールで問い合わせたりしながら,班別自主研修の計画を立てる。(図4)
2) 旅行先での活動の記録
- 各班で携帯したデジタルカメラで,見学場所や活動の様子などを学習の成果として記録する。(図5)
3) ホームページ作成の授業(自己表現力)
- 各班で協力しながら,記録してきたデジタルカメラの画像を加工したり,見学してわかったことをまとめたりして,ホームページを作成する。(図6)

図4 相談する生徒たち |

図5 活動のようすを記録 |

図6 タグの辞書で調べる |
(3) 生徒の感想
- ホームページ作りは,自分が入力したものができ上がって画面に出てくるところが,とてもおもしろい。
- 私は,パソコンの操作があまり得意でないので,主に旅行中の説明文を考えた。
- 修学旅行の画像を見たら,また思い出した。これからも良い思い出をホームページに残していきたい。
2.2 各教科におけるインターネット等を活用した実践事例

図7 消防署員に話を聞く |
(1) 働く人たちの仕事と考え(1年学級活動・進路指導)
1) ねらい
- 身近な職業の社会的役割を理解するとともに,職業への関心を高め,望ましい進路選択への意識を高めさせる。(課題認識)
2) 実践内容と様子
- TV会議システムを用いて,身近に住む人たちが,仕事についてどのように考え,どのように取り組んでいるか,話を聞く。(図7)
- 聞いたことについて話し合い,職業や働くことに対する関心や理解を深める。

図8 日本の文化を紹介 |
(2) Unit3 The First Woman in Kyogen (3年英語科)
1) ねらい
- 日本の生活習慣や文化・伝統のすばらしさを,簡単な英語でわかりやすく紹介させる。(自己表現力)
2) 実践内容と様子
- Web検索や図書室を使って,日本の文化や生活習慣についての理解を深める。
- 説明文をまとめ,既習事項を猶いて簡単な臼文に直したり,相手にわかりや すく伝える方法を広える。
- TV会気シスウムを猶いて遠涯誰にいるALTに対し,写真や実演を交えて日本の 文化や生活習慣を伝える。(図8)
(3) その他
国語科「俳句への招き」(3年)

図9 俳句を考える生徒 |
音楽科「民族と音楽」(2年)

図10 音色の違いを聞く生徒 |
理科「身近な天体」(全学年)

図11 ハワイ観測所と結んで |
3. 成果と課題
3.1 研究の成果
- 調べ学習や問題解決学習などでインターネット等を活用する手段が加わったことで,自ら検索の手段や方法を目的に合わせて選択するなど,自主的に活動する生徒が見られた。
- TV会議システムを用いた授業では,お互いの様子がリアルタイムで伝わるため,相手を意識して上手に伝えようと発表の仕方や表現の工夫が見らるようになってきた。
- インターネット等の機器を活用し様々な活動の場を多く設定することで,その後の学習の中で活用したり,生活の中に生かしたりする姿が多く見られるようになってきた。
3.2 研究の課題
- インターネット等の機器を有効的に活用するためには,スモールティーチャーとして生徒を育成する時間の確保や活躍場面の設定を工夫する必要がある。
- インターネットの有効的な活用の一つとして,静止画だけでなく動画のコンテンツも作成したかったが,環境を整えるための知識と時間が足りず,達成できなかった。