Eスクエア(e2)・プロジェクト 成果発表会

墨田中実践「ふれあい学習」の情報化

− 校内LAN:墨田中学校ネットワークの構築 −

墨田区立墨田中学校 三橋 秋彦

キーワード: 中学校,校内LAN,インターネット,ふれあい学習,地域との連携,LANの構築


1. はじめに

 今回の発表は、墨田中学校における先進的事業の序論として発表をするつもりである。
 墨田中学校が校内LANのネットワークを構築し、インターネットで学校を開いていくのには必然性がある。墨田中学校は平成8年度より「ふれあい学習」の実践を通して、地域に学校を開いてきた。この実践は、文部省や東京都の研究指定を受け、総合的な学習の典型として多方面で紹介されてきた。本校には、校長諮問の機関である進路指導総合改善推進会議がある。墨田中学校に縁をつないでくれる方々を集めて、学校へのアドバイスを頂いている。本年度の研究の課題は、ふれあい学習の情報化が課題であった。本年度、インターネット接続の努力に、推進会議の場で地元の有識者から支持を頂いた。

2. 墨田中実践は「ふれあい学習」

 墨田中学校の実践は、ふれあい学習である。ふれあい学習は総合的な学習として評価が高いのであるが、本来「地域と共に生徒の生きる力を育てよう」という学校を地域に開く試みである。総合的な学習という術語が生まれる前、4年前から始まった教育実践である。地域へ学校を開くため「ふれあい学習」は構造を持っている。ふれあい学習で学校改革を仕掛けたのであるから装置がある。


 第一ステップ <地域の人材を学校へ> 
 第二ステップ <学校から地域へ> 
 第三ステップ <地域と共に学ぶ> 

 三つのステップはふれあい学習の構造であるが、「ふれあい」というキイワードで展開した学習を全てふれあい学習といっている。ふれあい学習は、実践2年目から文部省進路指導総合改善地域指定と東京都ボランティア普及事業協力校、墨田区教育委員会奨励校の研究指定を受けている。

3. ふれあい学習の情報化

 ふれあい学習の学習理論は問題解決学習である。このふれあい学習の学習観は、情報化による学びの変化と同じ方向性を持っている。また、ふれあい学習は全国の学校で展開されている。お互い学校間で交流するための基礎がある。墨田中学校は声の届く限り、足の及ぶ限りの地域へは開いたが、遠い地域との交流はまだまだ発展の余地がある。つまりふれあい学習の今年の課題は情報化であった。無論、情報教育は教科教育でもふれあい学習でも展開してきた。しかしネットワークを利用する環境がないことは、ネットワークに生きる資質を培う上で致命的な問題である。

4. 墨田中学校のインターネット接続

 墨田中学校のインターネット接続は、パッチワークで実現しようとした。墨田区グループ研究とCECの先進企画「校内LANの構築と活用」、生涯学習団体「墨田区ネット研究会」の活動などに支えられて実現したものである。


 第1段階(1学期)
主事室内実験用小規模ネットワークの設置 
墨田区ネット研究会発足 ISDN回線の確保 
文部省通産省などのネットワーク施策の研究
 第2段階(2学期)
CECの先進事業の計画
先進校のネットワーク利用の研究
滋賀大学付属小中学校ネットデイ参観 
 第3段階(3学期)
ネットデイの展開

 当初小規模ネットワークの実験から始まり、社会教育登録団体墨田区ネット研究会の発足により、墨田区ネット研究会の回線を利用したインターネット接続の実験をすすめた。学校利用のための研究は、財団法人コンピュータ教育開発センター(CEC)の先進事業に選ばれ、大きく前進をした。ワーキンググループの主査である林英輔流通経済大学教授の働きかけにより、柏インターネットユニオン(KIU)の協力を得て、1月29日のネットデイ(ボランティアによるネットワーク構築)をむかえた。29日のネットデイ以降もネットワークの調整のために継続的な努力をしている。
 インターネットを利用するものとして教師と生徒がいる。そしてそこには、2つの異質なネットワークが存在する。校務遂行用のネットワークと学習用のネットワークである。前者は業務のOA化であり、後者は社会の変化に対応した能力を育てるための学習環境の整備である。この場合、後者の実績が少なくまた2つのネットワークのバランスは事例として少ない。とりわけ学習環境の整備として考えるならば、利用しやすい環境づくりが求められるべきである。利用しやすい環境づくりとは、インターネットの利用環境を生徒に近いところへ設置することである。そのことによって情報化に伴うノウハウが積み重ねられていく。このノウハウには、情報倫理や情報に対する安全の問題も含まれていく。
 インターネットの導入は物理的環境だけでなく、社会の仕組みづくりも含まれていく。生徒に近いところへインターネット環境を導入する方法が、校内LANである。コンピュータ教室という特殊な学習環境で学ぶためには、そのような授業づくりが必要である。情報化社会に生きるとは、特殊な環境の中の情報化を意味していない。中学校1年生で既にコンピュータの操作ができるので、今更墨田中学校でコンピュータの使い方を前提にした情報教育は必要ない。

5. 墨田中学校流のネットワーク構築の二側面

 学校の情報化には校内LANが必要とされる。校内LANの構築には、現在3つの方式で行われている。専門のノウハウを持った企業によるものとボランティアによるネットデイ方式、そして専門性を持ちつつ企業化されていないグループによる構築である。
 墨田中学校のネットワークの設計は、ワーキンググループの林英輔先生(流通経済大学)を中心とした大塚秀治先生、牧野晋先生、松本彰夫先生(麗澤大学)の柏インターネットユニオン(KIU)のグループによるものである。つまり専門性を持ちつつ企業化されていないグループによるネットワークの構築である。
 この事業の推進には、柏インターネットユニオン(KIU)とKIU協賛のエルテル株式会社、伊藤忠テクノサイエンス株式会社、株式会社内田洋行や墨田中学校を直接支援してきたマイクロソフト株式会社、シャープシステムプロダクト株式会社、株式会社リクルート、アクトンテクノロジー、墨田区ネット研究会などの協力があった。
 校内LANには赤外線無線を用いて3つの系統を持っている。インターネットにはさくらケーブルテレビを通して出ていき、単独1校でフィルタリングをかけている。当初の取り組みよりも先進的事業にふさわしい環境が揃ってきた。運用に当たっては、墨田区教育委員会「インターネット」に取り組む際の留意事項に従っている。
 ネットワーク設計に際しては、考えの調整や判断材料として情報提供などにメーリングリストを用いて進めていった。メーリングリストで交わされたメールも900を越える数になる。書き換えされたネットワーク図は7枚、他にネットワーク配線マニュアル、UTPケーブル一覧表、ハブ&情報コンセント一覧表など多数に上った。これらはKIUのWebに掲載されている。
 KIUのネットワーク構築と同時に、ふれあい学習で学校づくりをしている墨田中学校は、ネットワーク構築の一部をネットデイのために切り分けている。ごく部分的なネットデイも、地域への啓蒙活動や教職員生徒の意識改革に役立った。

墨田中学校のネットワーク
図1 墨田中学校のネットワーク図