滋賀県立八幡工業高等学校 野口 豊
http://www.hachiman-th.ed.jp/
キーワード 高等学校,学校図書館,社会,国語,美術,
学校図書館は,読書指導を通じて生徒の心や教養を育むばかりでなく,学習センターとして授業に役立つ教材を豊富に用意し,生徒の知的好奇心を刺激するような存在でありたいと願っている。そのために,従来の図書資料ばかりでなく,インターネットによって得られる情報も活用して,調べ学習を支援する体制を整えることにした。多様で豊富な情報に接する驚きや発見を通して,生徒たちの情報整理能力や情報活用能力を育成したい。
本校は平成10年度から3年間,文部省の光ファイバー事業の研究指定を受け,校内にネットワーク網を設置して,全校をあげてインターネット活用に取り組んでいる。図書館にも端末をのばして,今年度からインターネットが利用できる環境になった。これから紹介する3つの授業事例は,いずれも図書館を利用して,約1万5千冊の図書資料とインターネットから得られる情報を使って行われたものであるが,最終段階では図書館にある1台のコンピュータでは到底間に合わず,情報電子科のコンピュータ室に移動して,40余台のコンピュータを使って授業を行うことになった。
この数年来,年間の授業計画のなかに,生徒が各自でテーマを設定して,レポートを作成し,クラスで報告,討論するという参加型の授業時間を設けている。講義式の一斉授業が,時には,教師の側からの一方的な知識の伝達にとどまるという反省をこめて,生徒が主体的に参加する授業を目指している。レポート作成のため,生徒は,図書館で各自のテーマに即して,書籍や資料を活用しながら調べ学習をおこなっている。今回の取り組みは,本年度より本校にインターネット通信網が設置されたので,授業にインターネットを活用しての調べ学習を取りいれた。
近江は歴史の宝庫であるばかりでなく,文学の世界でも,そこに生きる人間の生活が美しい自然と共に語られてきた。その伝統を受け継ぎ,さらに発展させるために,滋賀県国語教育研究会が編集した『近江の文学』(京都カルチャー出版)を使用して,郷土の文学に興味を持たせたい。ここでは,図書館資料やインターネットを活用して,作家の著作への関心を高め,作品の舞台となった郷土への理解を深めるように指導した。
美術における総合的な理解を深め,作家の心情や作品の意図,表現の工夫などを知るために作品鑑賞の時間を設けている。従来,教科書の図版を見るだけではなく,図書館を使って美術全集や画集で興味を持った作家や作品を調べる学習をしてきたが,ここでは図書に設置されたインターネットを活用して,作家や作品の情報を得ることにした。また,検索で得た情報により,世界の美術館にリンクして,更に多くの美術作品に触れることで美術作品鑑賞の環境の幅を広げた。
調べ学習では,生徒たちの設定するテーマが多岐に亘り,インターネットで検索してもなかなか情報が得られない場合もあった。また,インターネットで得られた情報がどこまで正しいものであるかについても,検討する余地がある。図書資料と併用することで,これらの点について,ある程度カバーすることができた。
従来の図書資料とインターネットの違いは,情報の新鮮さと情報入手の迅速さである。また,インターネットは情報検索の機能が格段に優れていて,知的好奇心のおもむくままに,関連項目への発展的な学習が容易である。
学校図書館では,生徒の求める情報の内容や質に応じて,従来の図書資料とインターネットを使い分けたり,併用したりしていく必要がある。