Eスクエア(e2)・プロジェクト 成果発表会

海外修学旅行支援プログラム

− 企画立案の発端・経過から現在に至る現状報告と将来の展望 −

神戸市立摩耶兵庫高等学校 地歴公民 浅井 徹
asai@kobe-u.ac.jphttp://www2.kobe-u.ac.jp/~asai/

キーワード: 高等学校,海外修学旅行,学校間交流,メーリングリスト,
TV会議システム,和太鼓,ロサンゼルス,アナハイム


1. はじめに

 今後、海外修学旅行が定着するであろうが、現在、公立高校のみならず私立高校においても海外修学旅行実施の検討さえなされていない学校も、まだ少なくない。修学旅行の現状と将来、そして、海外修学旅行を実施するに際し、どのような手続きが必要となるかを、インターネットを使った本校の経過をふまえ、その事例と展望を述べたい。

2. 本校の取り組み

(1) インターネットがなければ今回の修学旅行は実現できなかった

 今回、頭を悩ませたことの1番目は、ロサンゼルスかアナハイムの高校で、学校交流をしていていただける学校を探すことであった。伝手を頼って交流校を探したものの、あてがあるはずもなく空振りばかりであった。最後の手段として、いろいろなメーリングリストに投稿したり、日米のいろいろな関係各機関に電話・FAX・E-mail等の結果、ようやくアナハイム市にあるLoara高校が見つかった。

 2番目は、いかにしてLoara高校との学校間交流を行うかであった。事前に、Loara高校のScott先生とE-mailの交流はしていたものの、インターネット交流だけでは如何ともし難い部分も多くあり、学年の先生6人で下見に行った。そのとき思ったことであるが、インターネットでの事前打ち合わせと下見確認はともに大切な要素であった。

 3番目は、学校間交流の内容を如何にするかであった。本校には和太鼓部があり、3学年生徒のうち数名がここに所属していたので、学校間交流には和太鼓の演奏をしようということになった。最初は、日本から和太鼓を持っていこうということになったが、見積もりを取ってみると、目玉が飛び出るほどの金額であったので、持っていくのは断念せざるを得なかった。しかし、持っていくのは断念したものの、アメリカで如何にして和太鼓を調達するかが問題となり、ここでまた、頭を抱えてしまった。 調達までの経緯経過を簡単に述べると、下見の際、宿泊予定のMiyako Inn Spa Hotelの中にあるLounge「王者」に毎日通い、ママと親しくなり、困ったときには相談に乗っていただけることをお願いしていたことがラッキーであった。そこから、CATV会社社長・秘書・お寺住職・会社員・2世ウイーク関係者・ロス和太鼓クラブを電話・FAX・E-mail等を経て、ようやく和太鼓が借りられることとなった。

 4番目は、今回の「海外修学旅行支援プログラム」の目玉の1つである、現在も交流中の本校とLoara高校とのメーリングリストである。

 5番目は、TV会議システム交流である。

 以上5つの項目をあげたが、そのどれをとってもインターネットなしには実現しなかったであろうし、これからも成功しないと思っている。

(2) 海外修学旅行が正式に許可となる

【1年次】
1) 平成10年1月19日
 (保護者向けプリント配布)
保護者会にて修学旅行が海外も可能であると公表、来年度の諸費増額のお願い
2) 平成10年1月28日
 (第1回保護者会実施)
保護者会にて修学旅行が海外旅行になる場合の説明・諸費増額の承認・質疑応答
3) 平成10年1月31日
 (第1回修学旅行アンケート実施)
結果:「行きたい・行っても良い」が国内36%・スキー32%・海外60%

【2年次】
4) 平成10年7月3日
 (保護者向けプリント配布)
保護者へアンケート結果を報告
5) 平成10年7月4日
 (第2回修学旅行アンケート実施)
結果:アメリカ69%・オーストラリア13%
6) 平成10年7月17日
 (保護者向けプリント配布)
アンケート結果報告
7) 平成11年1月27日
 (第2回保護者会実施)
保護者へアメリカ修学旅行の実施予定を説明・質疑応答

【3年次】
8) 平成11年7月1日
 (保護者向けプリント配布)
海外修学旅行の準備経過報告
9) 平成11年7月12日
 (第3回保護者会実施)
個別にアメリカ修学旅行を説明
10) 平成11年9月7日 神戸市教育委員会から正式にアメリカ修学旅行の許可が下りる
11) 平成11年11月19日
 (第4回保護者会実施)
海外修学旅行の経過報告と参加承諾書を提出

ロアラ高校(アナハイム市)
図1 ロアラ高校(アナハイム市)
スペイン語の授業風景
図2 スペイン語の授業風景

4. 修学旅行メーリングリスト(syugaku-ml)

 念願の修学旅行メーリングリストが、平成11年10月17日から始まった。本校3年生有志と教員が参加し、活発な意見交換がなされている。
 枠内は、最近の本校生徒とLoara高校Scott先生とのメーリングリストのやりとりである。だいぶ滅茶苦茶な内容・英文であるが、それはそれでお許し願いたい。

 Hi Scotto. Thanx for your mail. 
   
  >>Your English is very fine. I'm looking forward to meeting you in May. I hope to get some 
  >> of my students on this mailing list soon. 
  Thanx(^^) But, It's difficult for me to understand English. so I have to study English very hard. 
  Me too, I'd like to meet some your students early on this ML. I wait for your good response. 
  >>What kind of music do you listen to? What groups do you like?  Many students 
  >>here are talking about "Limp Biskit" or "blink 187". 
  I listen to Reggue. and My favorite groupu is [shava] of Reggue sound. 
  うーん ちょっとそのアーチストは分からないですねぇ。<LIMP BISKIT,BLINK 187, 
  やはり、世界は広い。。音楽とかの話しもいろいろしたいです。(^^) 
  >>今、5月の訪問の計画を立っています。 
  >>うちの生徒はじっさいの日本人に会うなんて感動しています。 
  >>英語と日本語でなんとか話ができるでしょう。先生の立場から、 
  >>生徒たちがどうゆふうにcommunicateするか、とてもおもしろいでしょう。 
  少しずつ計画が立ってきているんですね。とても楽しみです。 
  しかし、ちゃんとcommunicateできるかは、心配です。 
  少しでも英会話ができるよう、勉強したいと思います。 
  ケレヨキ。。ぜひ行ってみたい。(^^;

written by yu〜ki

5.おわりに

 主題の「海外修学旅行支援プログラム」と、副題の「企画立案の発端・経過から現在に至る現状報告と将来の展望」の内容に沿って報告させていただいた。修学旅行の主流が海外へとなるのは現状から見ても間違いないことであり、そのためにも今後、各校がどのような企画を立案し、どのように遂行していくかが大切となる。
 現在、多数の私立学校が海外修学旅行を実施してはいるものの、まだまだ公立高校では日程・費用・安全面・生徒指導・教職員の理解など、課題が山積しており、実施している高校でも、そのほとんどがアジア方面となっている。
 今日まで、アメリカ本土への修学旅行を実施した学校は、2年前、熊本県の公立高校ただ1校だけであった。本校は2番目となる。
 今後、欧米方面へと、ますます盛んになるであろう海外修学旅行。その海外修学旅行の実施に際して、多少なりとも手引きとなる内容の修学旅行版「このゆびとまれ」を、できれば作成し、少しでも皆さまのお役に立てることができればと思っている。