帝塚山学院泉ヶ丘中高等学校 辻 陽一
http://www.wit.ne.jp/cec
キーワード: 総合的な学習,マルチメディア、国際共同学習、共同作業、プレゼンテーション能力
本プロジェクトは、CECの協働プロジェクトの一つで、国内24の小・中・高等学校が参加している。参加校の生徒が継続的交流を行うためマルチメディア作品の制作を行う。その際、技術面や著作権問題を含む倫理面などのスキルを高める必要がある。このため、地域を東京、名古屋、大阪周辺の3地域に分散し、各地域ごとにワークショップをそれぞれ三回程度実施した。
作品は、かぐや姫など日本の民話、餅つきなど日本の風習、昔ながらの商店街など観光客が訪ねない庶民が利用する施設などをFLASHやパワーポイントなどを使って、マルチメディアやアニメーションに仕立てたものを中心に作成。地域ごとのホームページに掲載。
図1 生徒のマルチメディア作品 |
図2 生徒の作品 |
日本の参加校の生徒たちが制作したマルチメディア作品を電子掲示板や(東京校)、ホームページ(大阪校)に登録する。
今回のプロジェクトでは、特に、Flashを使ったアニメーションが多く作られた。アニメーションは初めてという生徒が、簡単にアニメーションが作れることを知り、感動するという姿が各校で見られた。内容としては、かぐや姫など日本の民話、餅つきなど日本の風習、昔ながらの商店街など観光客が訪ねないスポットなど。
マルチメディアの制作はもちろん、パソコンにもなじみがないが、国際交流という言葉に惹かれて参加した生徒も多い。そこで東京校、名古屋校、大阪校、それぞれ2回程度、地域で技術講習会を開催した。ここでは、ホームページの制作や著作権問題などを学習。
12月12日、韓国の新亭女子商業高等学校のジン・ジョンウク事務局長と生徒1名を招待し、東京校・大阪校の生徒も参加して、実践報告を行った。本プロジェクトが実際にスタートしたのは、11月のことであったため、中間発表会という形をとった。マルチメディアを通じた国際交流という本プロジェクトは参加者の多くが初めての経験で、具体的なイメージを持てない恐れもあった。そこで、サンプル作品を作りプロジェクトのイメージを高めることにした。
「花咲か爺さん」のアニメーションをサンプル作品として制作したが、イラストと日本語部分は東京校の高校生と小学生が担当。英語訳は大阪校が担当し、名古屋の会議で、発表した。この発表会では特に小学校の生徒が朗読した「花咲か爺さん」は、見事で、参加者の感動を誘った。このように、日韓や校種を超えた交流が名古屋での会議でスタートが切られたが、これは、大阪校の日米韓三カ国マルチメディア共同作成合宿にも受け継がれた。
図3 韓国の生徒のパワーポイントファイルより |
12月22日から3日間、韓国4名、ハワイ1名、大阪校8校の生徒約40名が大阪市内の学校(帝塚山学院高等学校)のコンピュータ教室で、本プロジェクトのテーマ曲やアニメーション作品を作成した。特に、ハワイの生徒は、日英バイリンガルであったことと、ハワイ教育省のE-School参加生徒で、コンピュータ操作に強かったため、作品の英語化と作品の制作指導を担当するなどし、韓国や日本の高校生に大きな影響を与えた。
韓国の生徒は日本の生徒とイラスト制作などで協力したほか、韓国や学校を紹介するホームページを制作し、プレゼンテーションを行った。
図4 浦田氏の指導を受ける生徒 |
技術講習会や国際会議、ワークショップは、ある意味でイベント的である。ネットワークやコンピュータの環境が異なる参加校が足並みをそろえてプロジェクトを実践するために、これらイベントは不可欠であったが、プロジェクトが進むにつれて、校種を超えた交流が進んできた。
名古屋の会議が終わった後、東京校と大阪校の生徒が深夜チャットをするという報告もあったが、グループで担当した作品の制作をメールを使って連絡をとりながら続けたり、電話でコンピュータに詳しい生徒にFlashなどのソフトの使い方を教えてもらいながら、休日に自宅で制作を進めるなど日常の中でマルチメディア作品の制作がすすめられている。
「2. 実践のねらい」で挙げた項目は、成果でもある。特に本プロジェクトのキーワードであるマルチメディアについては、制作は初めてという生徒がほとんどであったが、本プロジェクトを通じて、技術を身につけ、その楽しさを知ったという生徒が多かった。海外の生徒や校種・地域の異なる生徒との交流は、直接交流の他に、電子メールやチャット、インターネットを使った作品の共同制作へと進んでいった。絵が得意な生徒、作曲ができる生徒、朗読が上手な小学生など、多様な能力を持った子どもたちの能力がマルチメディア制作という場で発揮されたことも大きな成果と言えよう。
生徒の感想文を紹介する。
「このプロジェクトは、私にたくさんのものをくれた。お金では買えない、自分が動かないと得られない、そんな大切なものをたくさんもらった。すごく自分の世界が広がった。こういう体験を大切にしてこれからもいらんなことに挑戦していきたい。英語もがんばってもっと自分の伝えたいことが伝えられるように勉強したい。コンピューターも、少しでもうます扱えるように練習したい。そういうふうに自分がこれからがんばろうと思えるようになった。」
マルチメディアを作る教育環境は、まだまだ未整備である。今後、学校現場にもマルチメディア環境が整っていくことと期待されるが、本プロジェクトは、そのパイロットプロジェクトとして第一歩を踏み出したものと言える。この種の実証実験がさらに進められることが必要と考える。