8.まとめ




 本プロジェクトは、従来の普通教室の設備を大幅に変える事なく、通常の授業スタイルを継承し、いかにIT機器・環境を活用した授業展開を行うかという点に焦点を当て実証実験を行った。教師・生徒のアンケートや評価の結果からも、 IT機器の有効活用について一つの方向性を示すことができたものと考える。
 デジタルペンシステムは、誰でも簡単に使えるという操作性と、教師が生徒の学習理解度を即時に把握でき、適切な学習指導が出来るなど即時性・効率性の高さが実証されたと考える。さらに、本プロジェクトについて興味・関心が高まり予定外のクラス、生徒から自分たちも使ってみたいとの強い要望により追加授業を行ったことも積極的な授業参加意識を即す前兆として、有効性の観点から有意義なものと考える。
 また、設備面で見ると、今回のプロジェクトで用いたIT機器は、デジタルペンとパソコンおよびプロジェクタ内蔵の電子教卓(一部の学校でのみ使用)である。これらは、従来の普通教室の設備を大幅に変えることを必要としないことから、今後の普通教室でのIT活用促進の足がかりになると考える。更にハンドリング性に優れている点で教室の外での活用なども期待できる。
 こういったことから、普通教室のIT環境が大掛かりな設備を必要とせず、誰でも簡単に日常用品を扱う感覚で使えるデジタルペンを含む様々なユビキタス機器・環境で今後補われていく事は充分に可能性があると思われる。
 ただし、ユビキタス機器のみならず、今回のツールや実験教材の開発など教育的側面からのソフトウェアやコンテンツの充実も継続して充実を図らなくてはならない。今回の実験を踏まえ今後は、教科書やドリル、ノートなど、既存の教材範囲までをシステムの中に取り入れることを検討する価値があるようにも感じられた。
 今回の実験で断定する事は適切ではないが、ユビキタス環境の充実とそれらに則したソフト面の教育環境の充実を図る事で、普通教室でのIT活用普及という課題がより具体的に進展するものと考える。
 一方、一度書いたものが消せない、有線・無線方式によるデータ転送のスループット時間等デジタルペン固有の問題も指摘された。しかし、これらは今後、デジタルペンシステムの普及効果などにより、一層改善され、実用に充分耐える製品に成長する可能性は大きいと考える。
 最後に、本プロジェクト推進にあたり協力実践校ならびに教科担当の先生方には多忙な中、並々ならぬご協力をいただき誠にありがとうございました。本報告書を纏めることが出来たのも皆様のご支援の賜物と存じます。書面を借りて厚く御礼申し上げます。



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