4.実施授業・交流



4.4.2 実施授業報告

(A)事前準備

(a)事前調整

 両校では平成13年度末より連携推進計画が立ち上がっていて、例えば小学生が高校で美術造形コースの生徒に陶芸指導を受けるるなど、さまざまな分野での交流が企画されていた。そこに本プロジェクトの実施が決定し、テレビ会議システムを利用が可能になったので、地理的条件を最大限に活かし、オンライン・オフラインの交流を併用してテレビ会議の長所や課題を児童生徒がより深く理解する交流をしたいと考えた。主に電子メールや電話での打ち合わせをした。
 小学校と高校という異校種で交流であったので、学校行事(例えば小学校は陸上競技大会、高校は定期テスト等)の違いで4回の日程調整を行うことも大変でなった。また、直接交流では校内への説明、相手校への依頼状の準備も行った。

(b)事前テスト

 MPEG2TS・RATの送受信テストでは、白島小学校から前田教諭の遠隔操作のみで両校のシステムを稼働するかを検証した。検証順序は以下の通り片方向、双方向の順に行った。


 テレビ会議2回目のときは、映像が表示されずに予定開始時刻を15分ほどオーバーした。原因は、基町高校側の映像を受信するための操作ミスであった。
 なおテスト、交流本番時とも白島小学校の前田教諭が主にシステムの操作を行い広島市立大学が遠隔監視をした。事前テストの映像が表示されなかったときなどは遠隔地から指示・操作した。
 また、音声の感度の事前テストはシステムを扱い慣れた教諭によるものであったが、マイクの使い方一つをとっても、本人が意識していない"使い方のコツ"があった。事前のテストでは音声がクリアだったが、本番になると発表者である児童・生徒の声が非常に聞き取りづらかった。今後は教諭だけでなく、発表者も事前テストに参加し、システムに多少は慣れておく必要があると思われる。

(B)活動内容

授業風景は別紙【添付資料6】を参照のこと。

日時 1回目 平成14年10月16日(水)16:00〜16:35
2回目 平成14年11月11日(月)16:15〜16:45
授業名 国内交流 隣接学校間交流
隣接小学校―高等学校の交流における高品質映像伝送システムの活用
実施場所及び参加者 1回目 白島小学校
2階南校舎TTルーム
前田教諭、パソコンクラブ児童13名
基町高等学校
3階南棟コンピュータルーム
難波教諭、インターネットクラブ生徒4名
2回目 白島小学校
南校舎2階TTルーム
前田教諭、パソコンクラブ児童14名
基町高等学校
南棟2階音楽教室
難波教諭、インターネットクラブ生徒5名
授業実施内容
  白島小学校 基町高等学校
  【1回目 10月16日(水)】
16:00   難波教諭が挨拶を行った。また、基町高の様子や基町高から見た白島小の映像などを紹介した。
16:06-16:10   1人目の代表者の生徒が、基町高にある不思議な扉等の珍しい場所を紹介した。
16:11-16:15   2人目の代表者の生徒が、基町高にある高校の模型や校内の写真などを紹介した。
16:16-16:20   3人目の代表者の生徒が、基町高の校舎にあるエスカレーター等の写真を紹介した。
16:21-16:27   4人目の代表者の生徒が、基町高の校舎にある普段使われていない足場等の不思議なスポットを紹介した。
また、紹介した不思議なスポットが、校内のどこにあるのか等のクイズを出した。
16:27 質疑応答がはじまり、手を上げた児童が質問を行った。
⇒基町高に入学できて、良かったと思いますか。
 
  代表者の生徒が回答した。
⇒勉強は大変ですが、学校生活は楽しいです。
16:29 前田教諭が挨拶を行った。
また、児童全員が御礼を述べた。
 
16:35 授業終了
  【2回目 11月11日(月)】
16:15 前田教諭が挨拶を行った。  
16:16 6年生の代表者の児童が、「ここがすごい!基町高校」というテーマで、基町高を訪問した際の感想(体育館・講堂の広さ、渡り廊下からみた景観等)を発表した。  
16:20 4・5・6年生の代表者の児童が、「ディスカバー白島小」というテーマで、白島小学校内にある不思議なものを紹介した。
(事前に作成した「はっぴょう名人」でのプレゼンテーションデータを利用)
また、紹介したものがどこにあるのかクイズを出した。
 
16:28-16:34   代表者の生徒が、「基町インターネット部の冒険」というテーマで、白島小を訪問した際に撮影した白島小との交流の様子等を紹介した。
(事前に作成したパワーポイントデータを利用)
16:35 前田教諭がプレゼンテーションへの感想を発表するよう促し、手を上げた児童が、目の付け所がすごかった等の感想を発表した。  
16:37 代表者の児童が、白島小の「リサイクル隊」の活動内容(プルトップ回収等)を紹介した。
(事前に作成した「はっぴょう名人」でのプレゼンテーションデータを利用)
 
16:40 前田教諭が、これで白島小の発表が全て終わったことを確認した。  
16:44 白島小の児童・基町高の生徒がともに整列し、スクリーンに写った相手校の映像をバックに記念撮影を行った。
16:45 授業終了

(C)ネットワーク構成図

ネットワーク構成図は別紙【添付資料15】を参照のこと。

(D)教室レイアウト

レイアウト図は別紙【添付資料24】を参照のこと。

白島小学校 2台のコンピュータとプロジェクターが設置されインターネット接続が可能な「2005年の教室」で、授業や学習活動の発展として教師だけでテレビ会議システムを操作している状況を想定し、学校にある機材を最大限に活用し、教師が使いやすく児童が遠隔コミュニケーションに違和感を持たずにすむ機材配置や会場づくりに配慮した。
基町高等学校 1回目は交流の司会役でプレゼンテーションが中心の活動であっため、機材の整ったPC教室を用いる必要があった。
2回目は、小学生のプレゼンテーションの内容を的確に評価するために、よい音声が再生できる点を重視してスピーカーシステムの整った音楽室で行った。

(E)サポート体制

事前テスト
2回目の基町高校側の機材設置や設定にサポートをうけた以外は、すべて双方の担当教員で行った。前田真理(白島小学校:担当教員)難波太(基町高校:担当教員)
交流本番
白島小学校 前田真理(白島小学校:担当教員)テレビ会議1回目 雑賀淳(内田洋行:授業記録)テレビ会議2回目 柴田賢史(内田洋行:授業記録)
基町高校 難波太(基町高校:担当教員)テレビ会議1回目 柴田賢史(内田洋行:授業記録)テレビ会議2回目 雑賀淳(内田洋行:授業記録)
広島市立大学 前田香織(広島市立大学:遠隔監視)河野英太郎(広島市立大学:遠隔監視)新谷和司(広島市立大学:遠隔監視)

(F)生徒の感想

白島小学校
1 今回は時間がおそくまでやって、私は最初は興味がなかったが、一緒にやってみてものすごくおもしろかったです。これからも高校生や中学生とプレゼンテーションをやりたいです。でも、今度ははやくつながってほしいです。今回は本当にありがとうございました。
2 今からこういうことが、もっとさかんになって、いろんなところで実行させれば、いいと思いました。
3 高校生の人がいろいろなことをおしえてくださり、とても勉強になりました。これからもつづけていきたいと思います。
4 発表するときすこしきんちょうした。だけどけっこうたのしかったです。
5 高校には、ほとんど行かないので、テレビ会議で高校のことがよく分かったので、よかったです。
6 基町高校の人たちもいってたけど、ぼくたち小学生がパソコンを使ってこんなことができてほんとなによかった。
7 ものすごく基町高校と白島小が深まったと思います。
8 11/11の交流では楽しかったし、もと町高校の人たちは、白島小がっこうのこんなところを注意してみているのかとわかった。
9 あんなふうに高校生のお兄さんたちとテレビ会議ができてよかった。
10 このようなこと(活動)は、しょう来のためにいいかもしれない。
11 また基町高校とちがったことをしてみたいです。
12 日食も見るのは楽しかったけど、パソコンを通じて話したり発表したりするのはもっと面白い。
基町高等学校
1 こういうことは何回もやったことあるけど、すごく勉強になったと思います。
2 小学生に触れる機会はそうないことだったので、いい機会だったと思う。
3 小学生の目線がわかった。
4 行ったときよりさらに上達していてよかった。なかなかおもしろかった。

(G)成果・課題

(a)教員の感想・評価

<交流1回目(テレビ会議)>
 小学生は見学への意欲や目的意識を持つことができた。また、はじめてのテレビ会議体験として参加するうえで望ましい態度を、高校生をモデルとする事で学ぶことができた。一方高校生は、情報活用能力では小学生より優れており、高校内でのプレゼンテーションは経験済みであったが「テレビ会議でのプレゼンテーションで相手は小学生」というさらに高度な課題が与えられた。そこで、テレビ会議ではそれを意識して「わかったら手をあげて」と遠隔から児童の活動を促したり、児童にあわせてわかりやすい言葉でゆっくり話したりして、双方向プレゼンテーションへと高める工夫を行っていた。交流後にはそれらに対する評価を適切に行い、今後の活動への意欲を持つこともできた。
<交流2回目(直接交流)>
 小学生はプレゼンテーションでの印象やもたらされた情報と実際の高校の施設とのギャップに驚きながら興味深く見学するとともに、情報とは発信する者の意図によって操作可能であることを具体的に理解することができた。これは、映像や音声でもたらされる情報を得て、かつ直接に現地にふれ発信者と直接対話することが可能な隣接学校間交流だからこそ学ぶことのできる内容であった。このとき、小学生はデジタルカメラで高校の取材をして、高校生はその撮影指導を行った。それを通して高校生は小学生の情報機器に関する知識技能の実態を知り、次の交流のてがかりを得ることができた。
<交流3回目(直接交流)>
 小学生は初めてのプレゼンテーション作成指導をうけ、スムーズに目標に到達することができた。高校生は初心者に教える経験を通して、初心者のつまずきの傾向を理解するとともに自分の情報活用に関する知識技術レベルをあらためて評価・認識することができた。この交流では画面づくりを目標として活動時間的にも精一杯であったが、次回の発表にむけてプレゼンテーションでの留意事項を直接高校生から小学生が聞く活動もあってもよかったと反省し、後日小学校ローカルで話し合いを持った。
<交流4回目(テレビ会議)>
 小学生が高校生にプレゼンテーションを行う活動が中心であった。小学生は高校生のプレゼンテーション視聴体験をもとに個性豊かな発表を行うことができた。テレビ会議であることを意識して、めりはりをつけるために群読をするグループがあったり、身体表現してみせたりした児童もいた。高校生は、小学生の技能面での成長やそれぞれの工夫・視点のおもしろさを認め、一方では画像処理や画面構成・言葉の抑揚や語尾といった残された課題の指摘を行い、適切に評価することができた。また、小学校訪問したことをプレゼンテーションとして発表し、そこでストーリーやユーモア、見る相手への思いやりといったプレゼンテーションをより楽しくする条件をさりげなくみせていた。小学生はこの発表にも非常に感動し、高校生に感謝して今後さらに上達したいと述べていた。
<交流全体>
 テレビ会議は小学生にもわかりやすく、好評であった。また、機器操作についても、動作の安定した遠隔操作可能なシステムであれば、片側からの操作で交流ができることが確認できた。本交流も4回の交流の全体を通して、学習活動の目標として掲げた内容をおおむね達成することができた。児童の地理的認識の発達に無理なく相手を意識することができ、かつ直接交流とテレビ会議との両方のよさを取り入れて情報活用能力を育成する活動として、今後の近隣学校間交流にテレビ会議を活用するひとつのモデルになりうる実践ができた。
 課題としては、活動の望ましいあり方を求めて連続交流を実施したが、校種の異なる両校の調整はなかなか困難であった。対応としては、テレビ会議が簡便であれば、長期の取り組みと設定して、教師の打ち合わせに、5〜15分の短時間のテレビ会議にと、短くても定期的に行うことで気軽により充実した交流活動にできるのではないかと考えられる。それを実現できる校内環境整備も重要である。
 また、本交流では、テレビ会議と直接交流とをあわせて行った。隣接している学校間の交流のため、移動に手間をかけずに実施できた。そのため生徒・児童にはネットワークはコンピュータといった交流と直接に触れ合うというギャップも体験できた。

(b)課題

(1)教室

 映像については、受信画面表示は大画面モニタや液晶プロジェクターでの投影のいずれかになるが、どちらでも暗幕は必須である。音声は、受信音声を快適に聴けるアンプやスピーカーシステムが必須だが、会話中心であれば簡易に外部入力対応のラジカセでも可能である。

(2)ネットワーク

 校内ネットワークのハブの性能が重要である。条件としては、マルチキャスト対応であること、全二重通信に対応できること、必要に応じてポートごとに設定ができること。学校の接続帯域はマルチメディア通信対応のため余裕をもって30〜100M程度は欲しい。

(3)設備及び機材

 授業風景撮影用のデジタルビデオはすべてサポートから貸与を受けた。その他ノートPC、液晶プロジェクター等は学校の既存の機材を活用した。

(4)サポート体制

 授業実施時において最低限必要と思われるサポート人員の人数は、各拠点に1名程度+ネットワーク全体を監視できる位置に1名程度。
 また、サポート人員に求められるスキルは以下の通りである。

<ネットワーク全体を監視できる位置のサポート>
・ネットワークで発生する障害に対応できる人。
・テレビ会議を遠隔操作し、現地の障害報告に対して問題の切り分けと対応を指示することができる人。
<各拠点でのサポート>
・テレビ会議システムを操作でき、エラーに対して問題の切り分けと適切な対応ができる人。
・配置された拠点の音響や映像設備の特性を理解して操作できる人。
・児童生徒の活動に応じて、効果的な音声や映像の切り替えや調整等ができる人。


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