3.実践授業の報告



3.2.3 実践授業その2

日時: 2002年11月13日(水)13:30〜14:15
新潟県・三市南蒲学校視聴覚教育研究会授業検討会の公開授業として実施
概要:  前回の授業では,1年生にうまく遊びを教えられなかった友だちの問題を解決する議論を行い,「違う方法を試す」と「他のグループに行かせる」のふたつに意見が別れた。今回は,ワールドスクールネットワークの環境特派員グレッグもテレビ会議で参加し,さらに話し合いを深めていった。

 多目的教室に児童たちが丸く座り,前方にグレッグの映るスクリーンがある(図5)。
 はじめに1年生にうまく教えられなかったという男の子が,「他のグループを見ながらつまらなそうにしている子にはどうすればいいか知恵を教えて下さい」とみんなに呼びかけると,両グループからどんどん意見が出てきた。発言したい児童は立ち上がってはっきりと意見を言う(図6)。児童たちは緊張している様子はなく,「休み時間にやりたい1年生を募集する」「他のグループに行かせたら,教える人があまってしまう」「相手が楽しんでくれるまでなんとか工夫したほうがいい」「無理矢理教えると相手の気持ちに傷がつく」「自分が決めたことだから最後までやったほうがいい」など,流れのある議論が展開していった。
 最後には「違う方法をやってみて,それでダメなら他のグループに行かせる」「1年生のやりたいように自由にやらせる」など,「相手の気持ちを考えながらやる」の意見が両グループから出てきた。
図5 テレビ会議の様子 図6 意見をいう児童

 最後にグレッグから「子ども知恵図鑑に上通小学校あてに返事が来ています。子ども知恵図鑑でいろいろな知恵を探したり,みんなの探した知恵をどんどん登録したりしてください。」というアドバイスがあった。


子ども知恵図鑑を利用した状況・場面:

 グレッグから上通小学校の書き込みに対する返事が紹介された(図7)。

図7 桃山中学校OBからの登録内容

授業の詳細

【板書内容】
<1枚目黒板>
・他のグループを見ながらつまらなそうにしている子にはどうしたらよいのか?
「違う方法でたくさん試す」

教える人があまるとじゃまになる
少し時間が足りない
ほんとに良かったと言うところまで
がんばってやる
自分が決めた事だからさいごまでがんばってやる

「他のグループに行かせる」

相手はつまらなそうでいみがない
他の所に回る
休み時間にも教える
やりたい人をぼしゅうする
時間を作ってもらう
相手の事を考えていないのでは?
相手の気持ちを考えながらやる

<2枚目黒板>
ちがう方法をやってみてそれでもダメなら他のグループに行かせる
初めに相手に見せてえらばせる。そこからちがう方法をためす
これがおわったらこれ→相手を自由に
上っ子まつりのように自由にえらばせる
あいての気持ちを考えながらやる

【進行】

先生: 前回色々話し合ったけど,なかなかうまく行かなかった,,,T君。少し話をしてくれるかな?
T君: 僕がこまを教えようとしたら,1年生がブーメランや竹うまを見ていて,話をしても「うん」や,「そう」としかいわなくて,それが困っています。みなさん助けてください。
先生: では,みんなで考えてみましょう。(黒板にタイトルを貼る)では読んでみましょう。
児童: 「他のグループを見ながら,つまらなそうにしている子には,どうすればよいのか。」
先生: そう,この前これについて話し合ったけど,意見は2つに分かれたんだよね。どういうことだったかな。
児童: 「他のグループに行かせる」「違う方法を試す」
先生: では,どっちがいいのだろう。意見があるかな。(以下「他のグループに行かせる」の意見の児童を「児童(A)」「違う方法を試す」の意見の児童を「児童(B)」と記述する。)
児童(A): 他の所を見ていて,行きたいと言えば行かせる。
児童(A): 違う方法を試しても,相手がつまらなそうにしてるのなら,他の方法を試しても意味がないと思います。
児童(B): 他のグループに行ってもそこのグループの邪魔になるから(反対)。
児童(A): そこに行きたいと言うのに行かせないのはいやがると思います。
先生: 話をつなげていこうか。まず,先ほどの意見に対して意見していこうか。
児童(B): 他のグループに行ってしまったら,僕は何を教えたらいいのですか。
児童(A): その時はその時でみんなに募集をしてやりたい人でやればいいとおもいます。
児童(A): 他の所に言ったら,他の人にいいか聞いてみて,他の所を回ったりする。
児童(B): でもそれをしたら,他のグループの邪魔になる。
児童(B): いいと言っても一人で二人の面倒を見るのは忙しい。
児童(A): そういう時は,前半とか後半とかきめればいいと思います。
児童(B): 前半,後半をきめたら,後半の人がなにをしたらいいのか・・・。
児童(A): それじゃあ,自分も他のグループについていって迷惑にならないようにすればいい。
児童(B): その時,時間がなくなったらどうすればいいですか。
児童(A): 時間は15分交代にしたらいいと思います。
先生: 前半,後半についてはどう思う。
児童(B): 前半,後半をきめてしまうと,時間が短くなってわざとか覚えられなくなると思う。
先生: なるほど,新しい意見だね。時間が短くなるとわざが覚えられなくなると言う事ね。
児童(B): 時間が短いとせっかく覚えた技とかもったいないし,余った技とか教えてあげられないのはどうしたらいい。
先生: 教え切れなかったらどうしたらいいのかということだね。
児童(A): 休み時間とかに教えてあげればいい。
児童(B): 相手がいやがったらどうしたらいいのですか。
児童(A): やりたい人を募集して,やりたい人だけやる。
先生: やりたい人を募集する。その方法は。
児童(B): でも,そんなことは,やりたい人が全員いなくなっちゃうかも知れない。いなくなったらどうしたらいいのかな。
児童(A): じゃあ,その時はやめればいい。
児童(B): でもそれだと,せっかくやってきた事が無駄になっちゃう。
児童(A): その時はダメでも,後からやりたい人が出てくると思います。
児童(B): やりたい人が一杯出ても,手が回らないし,二人でやっても人数が読めないのでやりたい人を募集すると分からなくなる。
児童(B): 多くても同じ学年の人を呼べばいいと思います。
児童(B): じゃあ,みんな遊びに行ってしまったらどうしたらいいのですか。
児童(B): じゃあ,1時間目や2時間目に時間を作ってやってもらえばいいと思います。
児童(B): さっき,一人の人が何人も教えるのは難しいと言ったけど,そういう人数が教えられるように,子ども知恵図鑑では練習してきたと思います。
先生: 話を整理しよう。せっかく,知恵を見つけて教えているのだから,一人の人にきちんと教えるべきではないかという意見。もう一つは,新しいルールを考える。ひとりにつくような形ではなく,休み時間に教えるとか,前半後半を決めるとか,他のグループに行きやすいようなルールを考える。他に意見がありますか。
児童(A): みんなが遊びに行ってたら,勉強する時間を利用すればいい。
児童(B): この時間は教えるのに大変なので1年生から足りないと言われたらどうするのですか。
児童(B): 他の勉強の時間はそれはそれで大切なのでそれは止めた方がいいと思う。
先生: いろいろ言いたい事はあるとは思うけど,全く違う意見を持っている人はいないかな。
児童(A): つまらなそうにしてたら,他のグループに行かせるのは違う。それは相手の事を考えてない事になる。
児童(B): 他の違う方法でやればいいと思う。
児童(A): 相手の事を考えて,じゃなくて,相手が楽しんでくれるまで工夫して頑張る。相手にも伝わると思う。
児童(B): 楽しんでくれるか分からないから,一度他の方法を試した方がいいと思う。
先生: Iさんはビデオを使って説明したいそうです。
児童I: 今1年生を教えている様子です。けど,色々な方法を使っても他の方を向いているので他のグループに行かせた方がいいと思います。
先生: 一生懸命教えているけど,なかなか集中してくれない様子ですね。それについてどうですか。
児童(B): でも何回も練習する内にできるようになってくると思います。
児童(A): 何度も試してみても違う方法ばっかりやったら,相手の気持ちに傷がつくと思います。
児童(B): だったら,見本を見せたらいいと思います。
児童(A): 僕は何回もやると他の方を見ていたらどうしたらいいのですか。
児童(B): たしかにTさんは一生懸命していたけれど,他の方法も試せば良かった。
児童(A): 相手の気持ちを考えながらやる。
児童(B): 相手の気持ちを考えながらやるといっても,結局おしつけてることになる。
児童(B): 自分で決めた事だから,最後まで教えるべきだと思う。
児童(A): 自分で決めたからいいと言うのではなくて,1年生はよくわかっていないこともあるので,よく分かっていないで選んでいるかも知れない。自分のやりたい事を説明するのに言葉だけで分からないので,実際にやる事がいいとおもう。
先生: 今少しずつ2つのグループの意見が近づいてきているよね。素晴らしい事ですね。この2つの意見をあわせたような意見は他にないですか。
児童(A): 違う方法でやってみてダメだったら,他のグループにつれていってみる。1年生はいいと思っているだけで,やってみて,楽しい事もあるかもしれないから,色々な方法で試してみて,それでもだめなら,他のグループにつれていく。
児童(B): 初めから一緒にやる人をきめないで,いろいろ体験させる。
児童(B): 1年生がやる気が無さそうだったら,他のグループに連れていって,それでまたやってみる。
先生: 他の方法をやらせてみて,相手に選ばせる。まだやると言えばやらせてみる。なるほどすごいねぇ。
児童(A): 賛成してくればいいけど..上っ子祭りのように,コマのコーナーを作っていろいろ行ってもらう。いろいろ体験してもらえば,後悔がないと思う。
児童(B): 私は自由の時間とかではなく,他のグループに連れていって,他の方法を試してみて,それでも他のグループに行きたいと言えば,連れていく。
児童(B): まず色々やってみてもらって行きたいと言えば,連れていく。そしたらたくさんの知恵を学べる。
グレッグ: たくさんの話を聞かせてもらいました。前回も言ったけど,深い話が出来ていますね。初めは2つの方法に分かれていましたが,2つとも共通で,相手の気持を考えて楽しんでもらおうという事は共通です。それはどちらのグループでも同じですね。そのような行動はとても大切な事。今世界では相手の気持ちを考えられる人はそんなにたくさんいません。みなさんのなかにたくさんいるのが嬉しいです。
これからも知恵を教えて下さい。
先生: グレッグさんありがとうございました。
今,グレッグさんの話にもあったのだけれど,「相手がつまらなそうにしていた」というTさんの相談だったけど,さっきビデオでも見たように,Tさんは相手の気持ちを考えて一生懸命教えてくれていました。1年生の皆に作文を書いてもらいました。Tさんが教えた女の子の作文がここにあります。全ては読めませんが,なんと「とても楽しかった」と書いてあります。「また,教えてもらいたい」と書いてあります。一見つまらなそうにしていたのかもしれないけど,Tさんの気持ちが伝わっていたようですね。今グレッグさんが言っていた事「相手の気持ちを考えながらやる」事がとても大切と言う事が分かったよね。
グレッグ: 先日子ども知恵図鑑の「My知恵」に登録しましたよね。
実はそれに対して,京都から上通小学校の皆さんに返事がきています。みなさんの色んな知恵に感動してお返事を書いたそうです。他にもいろいろな知恵が入っているのでぜひ見て下さい(図7)。
先生: 子ども知恵図鑑にはたくさんの知恵があるそうですね。皆でまた知恵を入れていきましょう。みんな良く頑張りましたね。では,今日配った振り返りカードを書いてみて下さい。(5分経過後)途中ですが,グレッグさんにお別れの挨拶をしましょう。
児童全員: ありがとうございました。


前のページへ 次のページへ