3.実践授業の報告



3.3.3 実践授業その2

日時: 2002年12月10日 13:40〜15:30
概要:  今年度最後の授業となる今回は,今まで子ども知恵図鑑に発信してきた学習のまとめとして「スローフードとは」をテーマにしたシンポジウムを行った。グループの代表がパネリストとなり,グループの活動とそこから見えて来た結果を発表した(図6)。外国の食べ物を調べることによって自分たちの食文化を見直す,「スローフードとは何か」について様々な角度から検討する,ファストフード店にアンケートする,など自主的,行動的な活動が紹介され,質疑応答,議論も活発に行われた。途中,廣川教諭が子ども知恵図鑑に書き込まれたファストフード店を比較した,東京の高校の書き込みを紹介し,議論は新しい方向へ展開していった(図7)。

図6 発表をする様子 図7 スクリーンで書き込み方法を紹介

子ども知恵図鑑を利用した状況・場面:

 1. 生徒の発表時に利用
 子ども知恵図鑑に掲載されたイスラエルの食べ物を実際に作り,日本の食べ物と比較することで,土地の食べ物と気候,風土の関係について考察した(図8)。

図8 イスラエルのフムスコロッケを調理した。

 2. 生徒の発表時に利用
 ファストフードについての意見をイスラエルの学校とやりとりした。そこから文化や宗教の違いや金額(価値)の違いについて考察した(図5)。


 3. 議論の刺激として活用
 子どもたちの議論が固まってきた授業中盤に,教師が子ども知恵図鑑に掲載されている東京の学校の書き込みを紹介し,議論に新しい方向性を与えた。家庭料理=スローフード,ファストフード店=ファストフードという考えに対して,ファストフード店ごとに作る時間や素材が全く違うのにどちらもファストフードなのか,という内容である。どちらも1年間,食をテーマに学習してきているので,他校の意見に刺激されて,後半の議論が活発になった。

図9 東京の参加団体からの書き込み

授業の詳細

司会:  「スローフードコース」は6つのグループに別れてそれぞれの方法でスローフードについて考えてきました。今日はそれぞれのグループの活動内容や調査したことについて発表してもらいます。また,それぞれがたどり着いた「スローフードとはなにか」についてシンポジストから意見を聞きたいと思います。発表のあと,意見や質問を聞く時間があるので,フロアの人も積極的に参加して下さい。
生徒1:  ぼくたちのグループのねらい。ぼくたちはワールドスクールネットワークを通して世界の人たちと交流したいと思っていました。調査方法は,おもに子ども知恵図鑑を使用し,気になった項目を見つけて質問や意見を書いて交流してきました。好きな食べ物についてコース内のひとにアンケートを取りました。おすし,ドリーメン,グラタンなどがあがりました。ぼくたちにとってスローフードとは世界の人たちと交流する手段のひとつであり,スローフードを通して世界の文化を学べるのかなと思いました。
司会: ありがとうございました。ここでメモを取る時間を1分とります。
生徒2:  私たちは世界各地のスローフードを比べ,それを通じてその地域の文化や気候について考えました。私たちはまず3つのグループに別れ,それぞれが特定の食材を使って外国と日本の料理を実際に使って比較しました。
 1つ目のグループはインドのカレーと日本のカレーを食べ比べました。インドのカレーはスパイスが多く,香りがきつかったため,おいしかったけれど日本の食べ物のように毎日は食べられないという結論がでました。
 2つ目のグループは外国のスープと味噌汁を作りました。外国のスープとして作ったイスラエルの「野菜たっぷりスープ」は具の種類がとても多く,これもさっぱ  りしていて毎日飲んでいても飽きがこないと思いました。
 3つ目のグループはイスラエルと日本の豆料理を食べ比べました。イスラエルの豆料理としては,フムス,フムスコロッケ。日本料理は,黒豆大福を作りました。フムスにはスパイスがたくさん入っていて,好き嫌いが激しかったです。
 次に私たちは食べた感想からそれぞれの国の文化や気候について考えました。まず3つのグループ全てが味が濃いと感じたことに着目しました。日本食の傾向を調べてみると,日本人は素材にできるだけ手を加えない,余計な味をつけない,あまり肉を食べないという特色がありました。それに対してインド人はハーブが好きで, 料理のほとんどに含まれていて,日本では味噌やしょうゆにあたるものだそうです。こういったところから,私たちは外国のスローフードの味を濃く感じたのではないでしょうか。
 2つ目に着目したのは,外国は材料をたくさん使うことです。これはイスラエル,インドともに菜食主義であることが関わっていました。肉を食べることができないので,その栄養分を補うため,たくさんの野菜やハーブを使うのです。その他,わかったことはイスラエル料理に乾物が多いのは乾燥帯であること,オリーブオイルをたくさん使うのはイスラエルが地中海式農業を行っているということなどです。
 私たちはこれらのことから,スローフードとはただ手間をかけて作るだけの料理ではなく,その土地の文化や気候が大きく反映されていることがわかりました。そのためにもファストフードばかりに偏らずに自分になじみのある土地の味も知ることがとても大切だと思いました。
司会: ありがとうございました。ここでメモを取る時間を1分とります。
生徒3:  私たちのグループはスローフードとファストフードとの違いについてグループに分かれて調べてきました。今までどんな活動をしてきたかというと,実際に私たちの身近にある代表的なファストフード店としてマクドナルドとミスタードーナツにインタビューに行ってみたり,2つのグループにわかれて自分たちがスローフードだと思うもの,ファストフードだと思うものなどを作ってみたりしました。
 では,まず代表的なファストフード店としてインタビューに行ったマクドナルドとミスタードーナツで質問した内容と返事について発表したいと思います。

● ミスタードーナツ
<質問> <返答>
Q:生産地は決まっていますか? 決まっています
Q:どれくらいで品物を廃棄しますか? 約8時間程で廃棄します
Q:添加物は含まれていますか? 含まれていません
Q:1個のドーナツはどれくらいで出来上がりますか? 品物によって違いますが10分程
Q:出来上がったもの全てを店頭に出しますか? 形のいいものしか出しません
Q:カロリーはどれくらいですか? オールドファッションなら140キロカロリー
Q:クリームなどの分量は決められていますか? 決められています
Q:衛生面で気をつけていることはありますか? 手をきれいに洗います
Q:ゴミはどれくらい出ますか? ポリ袋に4つ分ほどです
Q:分別はしていますか? しています
Q:ファストフードはよいと言えますか? よいとも悪いとも言えない
● マクドナルド
Q:生産地は決まっていますか? 決まっています
ポテト−アメリカからの輸入
肉−オーストラリアからの輸入
レタス−国産
Q:どれくらいで品物を廃棄しますか? ハンバーガーは10分
ポテトは7分
肉は焼いてから10分
Q:添加物は含まれていますか? 含まれていません
Q:1個のハンバーガーはどれくらいで出来ますか? 注文してから50秒ほど
Q:カロリーはどれくらいですか? BIGマックセットが一番高くて400,
ハンバーガーが一番低くて
120カロリー
Q:衛生面で気をつけていることはありますか? 15分に1回手洗いをする
ばい菌がつかない温度で
管理している
Q:ゴミはどれくらい出ますか? 多いときはポリ袋50個分
生ゴミが多い。再生紙を使っている
Q:分別はしていますか? しています
Q:ファストフードはよいと思いますか? よいとも悪いとも言えない

以上のことが私たちがインタビューした結果をまとめたものです。
 そこで私たちが考えたことは,この2つのファストフード店のゴミの量の違いです。どうしてここまでゴミ量に差が出るのでしょうか。私たちが考えたことは包装の違いです。ミスタードーナツでは品物にあまり包装をしていませんが,マクドナルドでは品物1個1個に包装がしてありますよね。また,飲み物の入れ物にしてもミスタードーナツなどではジュースを入れるのにガラスのコップを使っています。それに比べてマクドナルドでは紙コップですよね。それらのことがゴミの量の違いの原因だと私たちは考えました。
 また,どちらのお店でも衛生面には十分気を使っていることや,ファストフードによい点があるようにスローフードにもよい点があるため,一概にファストフ−ドのほうがよいとは言えないということを話されていました。
 このインタビューの結果は知恵図鑑にも載っているので詳しくはそちらを見てください(図10)。
 また,私たちのこのインタビューの結果をみて村橋さんというかたがイスラエルのハンバーガーの値段を調べてくださったので,それも紹介しておきます。イスラエルのハンバーガーは17.90シェケル。1シェケルは約25円なので,約447.5円。ハンバーガーとフレンチフライ,コーラのセットメニューは31.90シェケルでした。約797.50円だそうです。お店のひとに聞いてくださったところ,ハンバーグの牛肉はアルゼンチンからの輸入で,イスラエル国内で作っているそうです。また,基本的には注文を受けてから作っているそうで,混み合う時間は作りおきするみたいです。また,ユダヤ教には,食事に関する規則があって,お肉と乳製品を一緒に食べてはいけないことになっています。だからチーズバーガーというものが一般にはないそうです。ですが,宗教にこだわらない人たちは,食事規定にもこだわらないので,チーズバーガーを食べます。村橋さんの家の近所のマクドナルドでは,注文したときに「チーズ入れますか?」と聞かれたそうです。ということから,日本とイスラエルでのハンバーガーの値段がだいぶ違うことがわかりました。
 そして次に私たちは実際に私たちが思うスローフードとファストフードを作ってみることにしました。スローフードとしてはサンドウィッチを,ファストフードとしてはクレープを。2つのグループに分かれて作ってみました。
 作った結果は,普通ファストフードというからには早くできるものだと考えていたクレープが,スローフードとして作ったサンドウィッチよりもだいぶ遅くに出来上がりました。ファストフードとして作ったはずなのに,どうしてスローフードとして作ったサンドウィッチよりも時間がかかってしまったのでしょう?それはきっと私たちの考えていたクレープのファストフードはそこらへんのクレープ屋さんで頼んでから1分くらいできあがるクレープのことで,私たちの作ったクレープは1から作ったので時間がかかったのではないかということでした。
 この経験を生かして,2回目につくるときは,スローフードとしてほうれん草と小松菜のスープを,ファストフードとしてはミニピザを作ることにしました。なぜミニピザにしたかというと,普通のサイズのピザをスローフードと考えると,それに比べてだいぶ早くできるミニピザはファストフードなんじゃないのか,と考えたからです。
 私たちは,スローフードというのはゆっくり時間をかけて作った料理,地方の料理,ファストフードというのは早くて簡単にできる料理のことだと思っていました。が,最近気付いた,というより考えさせられた書き込みが知恵図鑑にありました。それはBEARさんの書き込みです。BEARさんは書き込みで,『食べ物そのものをファストかスローか分ける,というのは難しいのではないかと言うことです。
 例えば,ここで挙げられているおにぎりにしても,コンビニで売られている物はどう考えてもスローフードとは思えません。とはいって,今食べられているおにぎりすべてを「ファストフード」と言いきることはできませんよね。
 だから,「ファストフード」「スローフード」は食べ物によって違うのでなく,作った人,作られた地方,材料,食べられる場所などによって違うと思います。それから,食べ物を,「ファストフード」か「スローフード」かと分けることはできないのではないかと最近思いました。 「スローフード」とは伝統的な食べ物,地方の食材を守ろうと言う運動のことで,そのようにして守られるべき食べ物が「スローフード」と呼ばれているようです。
 けれど,今の日本人は家で何を食べているでしょう。
 洋食や,他の地方の料理をたくさん食べているはずです。と言うことは,厳密に言うと,私達が毎日食べているのは「スローフード」ではないのです。しかしそれと同時に,私達が食べているのは「ファストフード」でもないはずです。家で家族が料理してくれる物を,「ファストフード」だなんて言えません。
 私は,今の日本の家庭で調理される料理は,「ファストフード」でもなければ「スローフード」でもない,ひとつの独立した種類の食べ物ではないかと思います。』
 ということなどを言われていました。私たちはとても考えさせられました。今まで私たちは食べ物を作るのにかかる時間なので《スロー》や《ファスト》とわけていたと思います。これも確かに間違いではないと思うのですが,でも家で作ってもらった料理のようにわけにくいものなのもあるということや,作るのにかかった時間などではなく,作った人,食べられる場所によってもわけてもいいんじゃないかと思いました。どこで《スロー》か《ファスト》に分けるかというのは大変難しいことだと思いますが,ものや時間にとらわれずにいろいろな可能性に目を向けていくということも大切だと思いました。これからはいろいろな意見を参考にして《スロー》とは,《ファスト》とは,と調べていきたいと思っています。

生徒4:  私たちは日本人に合う味覚を探すために,若い人,お年寄り,いろいろな人にアンケートをとりました。20代以上の人には,「一番好きな料理は何か」「10代の頃とは好きな料理は変わったか」ということです。アンケート結果で一番好きと出たものから,和食,中華,洋食,その他をそれぞれ一品づつ実際に作ってみました。和食は大根と豚肉の炒め煮,中華はチャーハン,洋食はグラタン,その他はスペイン風オムレツです。
生徒5:  私は今までMETの活動のテーマとして「スローフードは必要か」を調べてきました。実はこのテーマを設定した時点では,「スローフード」という言葉が示す明確な意味を理解していませんでした。
 本来,「スローフード」とは,食べ物ではなく,運動のことを指す言葉なのですが,現在では食べ物のことをさすこともあり,いろいろとわかりづらいのも事実です。そこで今,ここで「スローフード」を守ろうという運動・活動のことを「スローフード運動」とします。ちなみに私がテーマとしていた「スローフード」とは,食べ物のほうと運動のほうと両方を指すと考えて下さい。
 さて,その「スローフード」ですが,METのスローフードコースで活動している人たちにもワールドスクールネットワークで書き込みをしている人たちにも共通した認識があったようです。すなわち,「食べ物はすべて,ファストフードかスローフードに分けられる」という考えと,「ひとつの食品は必ずファストフードかスローフードのどちらかである。つまり,ハンバーガー = ファストフードであって,ハンバーガーがファストフードであり,スローフードであることはない」というものです。
 前者については,コース内発表や書き込みから,後者については以前あった「おにぎりはファストフードなのかスローフードなのか」という意見からわかると思います。
 私もずっと長い間そのような考えを持っていましたが,「では家庭料理はどうなるんだろう」という疑問により,その考えが変化しました。WSNの知恵図鑑にも書き込んだ内容なので覚えている人もいると思います。
 結局その考えは「今の日本人の食卓には和洋折衷のおかずや,冷凍食品,加工食品などが混ざっている。スローフードとは,伝統的な料理,質のよい食材のことだと考えられるから,今の日本人の食卓にのぼるものはスローフードではない。けれど,ファストフードでもない」という考えに発展し,「日本人の家庭料理はスローフードとファストフードの両方の面を兼ねそろえている」という議論に達しました。
 それは,裏をかえせば今の日本人の家庭料理はスローフードとファストフードなくしてはありえない,ということになります。今の日本人の食卓は,和洋折衷,伝統的な料理も基盤として入っているはずだからです。このことからスローフードは現在の日本の食文化を形成するのに一役買っているということがわかります。この時点でスローフードが大切だということが十分にわかりますが,それならなぜ「スローフード運動」が必要になるほど「スローフード」が廃れてしまったのでしょう。
 私はその理由のひとつに日本の西洋化があげられると思います。スローフードが日本が西洋化するにつれ,変化していったり,流行や廃りなどで減っていったということもあるでしょう。次にあげられるのは消費者の好みの変化です。ごく小規模なアンケートをとってみた結果,消費者の好む食べ物とは,「おいしく,安い」ものであるとわかりました。そしてファストフードは消費者に「おいしい」というイメージをもたれていませんが,消費者の好む食べ物の条件のひとつである「安い」という部分を持っています。
 つまり,現在の消費者の大半は,「味はともかく安くて早く食べられる」食品を求めていると考えられます。現在の社会の大半は,「味はともかく安くて早く食べられる」食品を求めていると考えられます。現在の社会の状態が続く限り,ファストフードは必要とされるでしょう。逆にスローフードはすたれていくばかりです。けれど,それは「スローフードが必要でない」ということを指しているわけではありません。むしろ,スローフードは人の精神を守るために必要なものです。食べることは生きることの醍醐味だと私なんかは思います。この原稿を作っている間も,「味はともかく安くて早く食べられる」というくだりにはうんざりしました。
 やはりここはスローフード運動がもっと盛んになり,人々がもっとファストフード以外の食品に興味を持つことが大切だと思います。
司会:  ありがとうございました。それでは質問に行きたいと思います。2さんに質問です。
 なぜ大福を作ったのですか。
生徒2: 私たちのグループは外国の豆料理と日本の豆料理を調べていました。大福には黒豆も小豆も入っているので。
質問: スローフードについて何かわかったことはありますか。
生徒1: スローフードは自分たちと切ってもきれないものだと思った。
質問: ファストフード店で持ち帰ると10分以上かかる。その場合はどうするのか。
生徒3: 商品としては10分以上はだめだが,お客さんが10分以上たったものを食べるのは自由では。
教師: 自分のバイト経験から補足します。10分以上立つと味が落ちるのがよくない。ファストフードが成功したのは,できたてであったかい状態で売っているからでは。
質問: 日本人の味覚に合うとはどういうものですか。
生徒4: 日本人がおいしいと感じるもの。
質問: ファストフードは2つのお店で比較しているが,スローフードはどうやって比較したのですか。
生徒3: 「ファストフード店」はあるが「スローフード店」と呼ばれるところはないので,お店を探すことができなかった。なので,2つのグループに別れて実際に料理を作り比較をしました。
司会: ではシンポジストに「スローフード」と「ファストフード」の定義を言ってもらいます。
生徒5: スローフードは伝統的な料理,作る人があまりいなく,貴重な食材を作っているもの。ファストフードは,ビジネスのような感覚で作っているもの。そのなかでも,ハンバーガーはドーピングっぽくて味気ないと思います。
生徒4: スローフードは家庭で時間をかけて作ったもの。ファストフードはお店で作られて自分は食べるだけのものをいうと思います。
生徒3: スローフードというのはゆっくり時間をかけた料理,地方の伝統料理。ファストフードは,食べたいときにすぐ食べられる,早くて簡単にできる料理のこと。
生徒6: ファストフードは,自分が何も料理をしなくて食べられる簡単に作れる料理。スローフードは10分以上手間のかかる料理をさすと思います。
生徒2: スローフードはその地域の文化や気候を知ることのできる料理。ファストフードはどこに行っても同じ料理。
生徒1: ファスト,スローと分ける必要はないと思います。なにを基準に分けるのですか。
司会: なぜ分ける必要がないと思いますか。
生徒1: 基準がないからです。
生徒4: お店はファストフードで,家庭料理はスローフードだと思う。家庭料理には家庭だけの味,作り方がある。おなじ料理でも家庭独自の作りかたがスローフードなのではと思う。
司会: 家庭料理のお店で作った料理はどうですか。
生徒4: それはスローフードだとも思うけど,お金を払って作ったものを食べているので,ファストフードだと思う。
質問: ファストフードはドーピングっぽいというのはどういう意味ですか。
生徒5: ファストフードは安い,早く食べられるという利点がある。逆に言うと,早く食べる必要があり,食事になんか時間を裂いていられないというのがあると思う。それは薬で栄養を補給していることとほとんど考え方が変わらないものだと思う。
教師: いくつか問題点が見えて来たと思います。ひとつはスローフードとは家庭料理かそうではないか,ということ。そとで食べたものでも場合によってはスローフードということもあるかな,ということです。東京国際学園もこの問題について考えているので,テレビを見てください。大画面モニターに「子ども知恵図鑑」の「食べ物と農業」を映す。
教師: 東京国際学園の書き込みを見て下さい。世界中で有名なM1バーガーと日本で人気のM2バーガーを比較しています。M1は値段も安いし早さも早い。M2は値段は5倍くらいするし,時間もかかっていますね。こういうのを君たちはどう考えますか。どちらもファストフード店ですが,このふたつのお店にまったく差はないのか。外で食べるものはすべてファストフードと考えていいのか,それともスローフードもあるのかな。あるいは,ハンバーガーはすべてファストフードと考えていいのかな。
今まで,家で作るものはスローフードだけど,外で食べるものはファストフードだ,という意見が多かったと思うのだけど,そのあたりを考えてみてください。
司会: 外で食べるものでもスローフードと呼べるものがあるのか,について何か意見はありませんか。
生徒6: 料亭やレストランは注文してから時間をかけて作っている。場所や作り方によって違ってくるのでは。時間がかかるのがスローフードと言えそう。
生徒5: M2バーガーはいくら時間をかけて作ってもマニュアルが決まっているし,誰が作っても同じなので,スローフードとは言えない。
生徒6: いままで出たようにファストフードとスローフードをちゃんと分けるのは難しい。
その間にどちらとも言える「ノーマルフード」というか新しい言葉を作ったらどうか。
司会: まとめます。ファストフードとスローフードを分けるのは難しいというのがわかりました。また,スローフードなどの料理を知ることによって,食だけではなく,文化や環境などいろいろなことについて知り,考えることができることがわかりました。スローフードはひとつの限定された意味を持っているのではなく,深く,いろいろな意味を持っているのだと思います。
教師: アンケートを配ります。今後,この学習を続けるならば,自分はなにをしたいか,後輩になにをして欲しいかを書いて欲しい。総合は毎年ゼロからのスタートではないと思います。今年やったことが来年に生きる。今年はここまで来ました。来年はここまでやってください,とするとずっとつながって積み重なっていきます。みなさんの意見を参考にしたいので,アンケートをしっかり書いて下さい。


図10 アンケートの報告


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