わたしたちの住みよい街を作ろう!

学校名:河内町立岡本北小学校(栃木県)
指導者:教諭 大西 誠 他1名(学年T.T)
児  童:6年生 男子29名 女子19名 計48名

1.単元について

(1)単元の位置づけ(5月〜7月30時間
9月〜11月25時間 計55時間扱い)

総合的な学習の時間・・・・・・・55時間
 学習を展開するに当たって特に配慮したことは次の点である。導入時には豊かな自然体験や作業現場での苦労という実際の体験活動を重視し,児童の考えを深めるよりどころとした。探求活動時には,児童の興味・関心に基づく課題別グル−プなどの学習形態の工夫,地域の人々の協力,インタ−ネットやビデオなど情報機器の活用を大いに図った。まとめ活動においては,児童の創意工夫を生かした様々な発表や意見交流の場を設け,自己の活動を振り返ることで今後の生き方について考えることができる児童を育てるようにした。
 また,以下の段階設定に基づいて学習展開していった。

(1)ふれる
〇 全員での共通体験をし,その体験から問題点や疑問を掘り起こす。
(2)知る
〇 全員でのテーマに基づく共通体験から共通理解を図り,学年の課題追求のテーマ設定していく。
〇 児童それぞれが調べたい課題を設定し,解決方法や誰を対象にどのような方法で伝えるのか見通しをつかむ。
〇 同一課題児童同士でグルーピングをする。
(3)調べる
〇 自分の課題解決に向けて,メディア・人材活用を図りながら問題解決的な活動や体験をしていく。
〇 中間報告会を催し,児童相互で意見交換をして,よりよい課題追求を図る。
(4)まとめる
〇 自分で調べた成果を,学年・教師・保護者・地域の人々等伝える相手に沿った表現方法でまとめていく。
〇 発表の仕方・聞き方のポイントについて話し合い,観点をまとめる。
〇 ポスタ−セッションを通して自分なりの表現方法で環境に関する考えを伝え,伝えた相手から評価・感想をいただく。
(5)振り返る
〇 活動中に記録してきた自己評価・意見交換の際得た学年間での他者評価・発表によって得た相手からの評価などから,活動全体を評価する
〇 製作した掲示物や作品・画像等で活動を振り返ることにより,今後の実生活に活かしていけるようにする。

(2)単元構成の意図

 栃木県の中央部に位置し,学区内を国道4号線や東北本線が通過している。 関東平野の北の端。東に鬼怒川,西に男体山,北は那須の連山がそびえる景色のよいところである。学校の北部,東部は田畑が広がり,学校の西部,南部には住宅地,工業団地が広がる住環境に恵まれた地域である。
 近年住宅団地の造成に伴い,児童数が増えつつあり,現在児童数341名。転勤に伴い,転入してきた児童も多く,地元のことをあまり知らない児童が多い。活発で元気がよいが,根気強く継続する活動は好まない子が多い。
 これらの状況を踏まえ,この地域環境を生かし,地域に愛着をもてる子どもを育てたいと考えた。
 しかし,単発的に行事を設けてもそれだけで地域を大切にする心や愛する心は育たないと考える。教科,領域,総合的な学習の時間等の内容の関連を持たせながら指導したり,系統性・発展性を考慮したりしながら取り組ませる必要がある。子供はそれまでの生活体験や学習体験などの先行体験を生かして予想し,その予想に基づいて自分なりの解決方法を考え,観察・実験などの学習に取り組むことになる。そのような意味で,体験の積み重ねは重要である。
 また,より多くの体験や人との関わり合いを援助し,多様な考え方に触れさせることで,自分で関心を抱ける課題を設定し,意欲をもって探求活動をする児童を育てたい。そして,それらの活動から今後の自己のあり方を見つめ直す学習も創造したい。
 以上の点に特に配慮して,指導計画を作成していった。
 なお,同じような考えをもって地域学習をすすめている団体と交流することは,児童に新たな視点や教師が与えられない考えに触れさせることができると思われる。過去3年間インターネット上でワ−ルドスク−ルネットワ−ク(以下WSNと略)という団体を利用すると有効であると思い,この電子会議室・知恵図鑑での他団体との意見交換を通して,児童に様々な見方,考え方に触れさせてきた。交流が深まると物品・ビデオ・直接会っての交流もあり,児童は今年度の交流も期待している。今回の単元も大いにこの場での交流を利用していくことにする。


(3)知恵図鑑活用の意図

 授業を進めるに当たっては,立場を異にする人の見方など種々の情報が必要であるが,時間・空間的に限界がある。そこで知恵図鑑を利用することは有効である。これにより,多くの情報を入手し,学習の幅を広げ,得た学習の成果を発信し,再びそれに対しての新たな見方・考え方に触れることができる。しかも、知恵図鑑は子ども主体で各団体の子どもの求めに応じて、カテゴリーを変更したり、追加したりしていただけるので、学習する側にとって大変都合がよい。更に,知恵図鑑の利用が発展して、交流相手と直接会ったり、ビデオ・物品交換したりすることができる。これにより、同様のテ−マで活動展開をする交流団体と地域環境も含めたより深い意見交換ができ,より広い視野から事象を見つめることができる。
 なお,知恵図鑑の登録・閲覧方法については,本単元導入前に全ての児童対象に3時限程時間を確保し,習得させた。その後は,児童それぞれの興味に応じて,休み時間や放課後も登録・閲覧できるようにした。特に,知恵図鑑に関心を持ち,活字入力の優れている6名が担当を希望し,知恵図鑑を毎日閲覧・登録し,学年全体にその情報を伝えてくれた。


(4)コンピュータ環境

(a) 使用機種
職員室:SOTEC Micro PC STATION 1台
     FUJITSU FMV 7000TX 2台
     FUJITSU FMV 6000NU 2台
コンピュ−タ室:NEC Mate NX MA23C 21台
(b) 付属機器
デジタルビデオ
    SONY NetworkHandycam 1台
デジタルカメラ
    SONY MABICA 1台
    SONY DSC-S85 3台
    CASIO LV-20 20台
(c) 利用ソフト
Picture Gear3.2 (画像処理) 
インターネットエクスプローラ5(ブラウザ−)
DVgate(ビデオ編集)
一太郎スマイル
(d)OS及び通信環境
OS:Windows2000(職員室)
   Windows98(コンピュータ室)
通信環境:1.5Mbps以上(光ファイバー接続)常時接続,職員室内LAN有、コンピュータ室内LAN有

 インタ−ネット接続環境が職員室とコンピュータ室に限られているため,情報の検索・閲覧・送信等は,教師の援助のもとコンピュータ室で行った。また,知恵図鑑の登録が授業中に限らないため,職員室での作業を行うこともあった。これにより,常時知恵図鑑の登録状況を子どもたちは把握することができた。


2.単元のねらい

・地域河川「谷川」への人々の取り組みや地域のごみ問題の現状から、地域に関心を抱く。
・地域に愛着をもち様々な取り組みを試みる人々に触れることにより,自分の地域での問題意識をもつ。
・多くの人々との意見交換を通して,地域をよりよくするため自分なりの課題設定をする。
・課題解決に向け,情報交換をしながら自分なりの方法で調べ,学習成果を多くの人に伝え,自分たちの実生活に活かしていく。

3.評価

問題解決力
・課題をつくることができる。
・課題解決の見通しをもち、自分で解決のための計画を立てることができる。
・計画をもとに工夫して解決することができる。
・追求過程や調べたことを見直し、よりよい方法を考えることができる。
コミュニケーション力
・自分の意見や考え方を発表したり、話し合ったりすることができる。
・友だちや周囲の人と進んで関わり、必要な情報を収集することができる。
・体験や人との関わりを通し、多様な考え方をもつことができる。
自己表現力
・調べたことを効果的にまとめることができる。
・調べたことを発表し、外部に発信できる。
・調べたことを活用したり、よりよい方法で取り組んだりすることができる。
自己評価力
・学習を振り返り、自分の意見や考えをもつことができる。
・自分を見つめ、自分のよさや成長に気付くことができる。
・自分の生き方を考え、行動することができる。


4.活動の実際(55時間扱い)

児童の活動と思考の流れ 教 材 等 教師の支援
地域に関心を抱く
1-4
私たちの住む街はよい所なのかな?
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感想や意見を出し合い,昨年までの活動を想起する。


・「地域河川(谷川)には多くの自然と人々の取り組みがあったね。」
・「地域のごみ減量化についていろいろなチャレンジをしたね。」
・「WSNの交流相手には,地域の特徴があったね。」

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私たちの住む街がよい所か否か,話し合う。
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私たちの街について知るためには,もっと多くの地域について知らなくてはいけないかもしれない?


WSN参加団体との交流する中で,学習が進められるよう学校紹介の記事やビデオを制作する。


ワークシート
黒板
ノートパソコン
(Picture Gear3.2)
液晶プロジェクタ
WSNのホームページ及び電子会議室










知恵図鑑
「メンバー図鑑」に学校紹介登録デジタルビデオ(WSNに郵送後日UP)
・過去2年間の実践について振り返り,自分の望む地域の将来について,考えてきた思いを振り返った。
・ホームページや画像を提示することで,視覚的に出来事を回想できるようにした。
・WSNや知恵図鑑を使うことにより広がる可能性について説明した。
・ビデオ作りは,時間内に終了できなかったので,主に放課後の活動となった。
地域を大切にすることを知る1
5-19
地域について愛着をもって取り組む人と地域について知る。
・ ツインリンクもてぎの里山見学
      (講師 崎野隆一郎氏)
・ 足尾銅山と足尾緑水公園の見学
      (講師 神山英昭氏)
・ 香港交流校教師の訪問による直接交流
      (講師 Benjaminご夫妻)
・ 地元に住む在日外国人との直接交流
      (講師 フィリピン人 メルチョラ氏)

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よい街とは,街のために何か働きかけをしている人が住んでいる所なのだね。
ワークシート
デジカメ
ノートパソコン(PictureGear3.2)
(Power Point)
液晶プロジェクタ
知恵図鑑
「グレッグの日本旅図鑑」より,崎野氏本人や足尾銅山の情報を検索
知恵図鑑
「メンバーひろば」に経過登録
・「グレッグの日本旅図鑑」より得た情報で見学前に事前学習を行った。
・香港校との交流が深まるよう保護者参観の機会を利用した。交流の印象を「メンバーひろば」に登録することで,今後の交流へとつなげた。
・在日外国人講師は,母国に強い愛着を持ち,日本の現状に疑問を抱く方をお願いした。
地域を大切にすることを知る2
20-25
住みよい街を作るために,私たちは何ができるのだろう?
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具体的な方法を考え、提案する。

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質問や意見を出し合い、整理していく。

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課題として適切なものを選ぶ。

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どんな課題に取り組んだらよいのだろう?

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自分が取り組む課題を決定する。

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同じ課題を選んだ人とグループをつくる。

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グループで相談し、具体的な学習計画を練る。

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グループの課題と知恵図鑑のカテゴリーの一致を図り,登録する。
・「川をきれいにする方法を探すことで街をきれいにしたいから,僕は(水と大地)で活動しよう。」
・「私は無農薬野菜栽培で安全な食生活を考えたいから,(たべものと農業)にしましょう。」
・「ぼくは街を探検して,子ども地図を作りたい。合うものがないから(地元たんけん広場)を作ってもらい,参加者を呼びかけよう。」
ワークシート
黒板


















知恵図鑑
「メンバーひろば」に課題登録
「地元たんけん広場」カテゴリーの新設
・足尾銅山の鉱毒問題の学習では,昨年ごみ学習で作った堆肥を利用した荒れ山の植林体験を行い,緑を守ることの苦労が実感できるようにした。
・グループによる共同学習を基本とするが、グループ化を強制しない。
・学習が成立可能か検討の参考になるよう、準備できる学習環境を提示した。
・自分が行う探求活動の中で知恵図鑑のどのカテゴリーが利用できるか検討することで,知恵図鑑の中でのグループ分けをした。
住みよい地域作りの探求活動を行う
26-44

課題別グループごとの探究活動

(詳細はグループの活動紹介例を参照のこと)
グループ別テーマ 1-13
1 川の汚れ 調査 8 街マップ作り
2 家庭排水の恐怖 9 不用品リサイクル
3 生ごみなくし隊 10 マイバックPART2
4 魚の駅作り 11 川クリーン作戦
5 無農薬野菜作り 12 花いっぱい運動
6 森のクリーン作戦 13 リサイクル品CM
7 リサイクル品のホームページ

中間報告会(2回)29-30時、38-39時

ここまでの活動内容と学習の成果をグループごとに発表

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質疑応答

ここまでの探究活動はよかったのだろうか?修正することはなんだろう?
新たな課題はなんだろう?

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これまでの経過と今後の計画・情報希望を知恵図鑑に登録
グループごとに
 デジカメ1個
 材料費
  (2000円以内)
人材バンク情報
傷害保険
ノートパソコン
デジタルビデオ
参考図書
その他多数













知恵図鑑
「地元たんけん広場」「水と大地」「たべものと農業」に登録・随時情報交換
・地域でどのような情報が得られるか,児童に提示した。活動中も保護者への協力を呼びかけ,情報提供を希望した。
・学習が成立可能か検討の参考になるよう、準備できる学習環境を再度提示した。
・探究活動は授業時間のみで終わらないので,保護者の協力を得ながら放課後や休日も利用した。
・知恵図鑑での情報交換の期間を長く取り,充実した探究活動を図れるよう,夏季休業日を挟んでの活動にした。
夏季休業日中に,新潟県塩沢町において3泊4日で国内外の知恵図鑑担当者会議を行った。これにより,他地域についての情報や国内外の物々交換を含めた交流・1uプロジェクト(生き物調査)のきっかけ作りができた。
住みよい地域作りへの思いをまとめ伝える45-53
どのようにまとめたら,住みよい街を作るためにやったことを伝えることができるのだろうか?
模造紙にまとめよう
CMを作って見せてあげよう
試作品・HPを作って見せてあげよう
劇にして,発表しよう
でも,私たちのやったことを伝えるだけで十分なのかな?

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・「僕たちだけが,がんばっても街はきれいにならない。」
・「家庭の中心と炊事・洗濯をするお母さんに協力を呼びかけよう。」
・「地域の人々が参加するのだから,意見を聞きこれからの活動に活かそう。」

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参加者に活動協力を呼びかけた方がよいのだね。大人から意見を聞くよい機会だね。

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見本商品を作ろう
レシピ・パンフを作り,配ろう
よい商品を探し,教えてあげよう
作り方・使い方の実演をやって,よさを広めよう

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グループごとに発表内容のまとめ作業を行う。

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ポスターセッション
住みよい街を作るため,役立つ・使えるアイデアを発表するぞ!
ワークシート
黒板
































各グループ要望した発表教材及び機材
3教室13コーナーでの発表ステージ
宣伝用ポスタ−
評価カード
・7月のグループ編成時に,10/30保護者・地域の方々へのポスタ−セッション形式での発表会で各グループの成果を競い,賞をつけることを宣言し,意欲付けをした。
・リハーサルも兼ね,ポスターセッション前に発表会を行い,児童相互の評価を行った。
・発表する相手と目的を考えてまとめ作業ができるよう,話合いの時間を確保した。
・児童が探究活動の中で関わりあった人々にも招待状を送り,活動全体への理解とお礼ができるようにした。
・失敗を繰り返しているグループもあったが,それも苦労の成果であることを認め,年度末までの決意表明で終わってもよいと助言した。
・知恵図鑑の利用は現時点まで終わるが,今後交流相手の要望に応じて継続することを確認した。
活動全体を振り返る54-55
活動のふりかえり
自分たちの活動がポスターセッション参加者に理解されたのだろうか?

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ポスターセッションの優秀賞発表

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児童の相互評価及び参加者評価カードの整理
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活動の感想・参加者評価についての話合い
・「大人は(よくやったね。)と褒めてくれたけれど,紹介したことを家でもやってくれるだろうか。」
・「保護者の中には,どの活動にも満点をくれた人がいる。真面目に見てくれただろうか。」
・「私たちのよいと思う活動と,大人のよいと思う活動が違う。」
・「私のグループは活動がまだ,終わっていない。続けてやっていきたい。」

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私のグループは卒業するまで,今の活動を続けよう。
知恵図鑑で交流する友達の意見をもっと聞いてみよう。





賞品

はさみ



振り返りカード



知恵図鑑
「地元たんけん広場」に結果と感想を登録
その後,関心のある児童の交流の場として継続登録していく。
・評価カードは児童用、保護者用,招待者用の色分けがしておき,それぞれの傾向がつかめるようにしておいた。
・参加した大人の視点について考えることで,子どもの話合いの場である知恵図鑑の有効性を意識させるようにした。
・ポスターセッションの際に,児童への公正な評価を参加者にお願いしたが,結果的に甘い評価が多く見られた。
・知恵図鑑での交流は,今後も続けてよいこと、ここでの思いは,2/8の子ども環境会議で訴える場があることを確認し,学習を終了した。

5.活用紹介例

課題別グループごとの探究活動(26-44)

 街マップ作りグループは,「地元たんけん広場」のカテゴリ−開設の呼びかけをした。「地元たんけん広場」ができた後も,地元の探検レポートを知恵図鑑での登録し,その活動が他団体の参考になった。また,そのことがこのグループの活動の励みとなった。

無農薬野菜作り
生ごみなくし隊・魚の駅作り

 無農薬野菜作り・生ごみなくし隊・魚の駅作りのグループは,昨年までの電子会議室でのやりとりが発展継続しての活動であった。
 昨年交流した団体へ,更に発展した内容を知らせるという意味で,知恵図鑑登録が励みになった。昨年お世話になった人への感謝と自己目標の達成に役立った。

森のクリーン作戦・マイバックPART2

 追求過程で「森に捨てられているものは,ごみではない。」という地域の方の返事や「マイレジカゴバック」の製作過程で挫折感を感じている時,知恵図鑑での励ましの言葉が,その後のやる気と達成感を倍増させた

川クリーン作戦

 「水と大地」において1uプロジェクトのホスト役となって,知恵図鑑の登録と呼びかけをした。
 1uプロジェクトだけでは,川がきれいにならないと判断し,川をきれいにする方法を考えはじめた。知恵図鑑を検索し,炭の利用法の情報を得たり,交流する愛知県の荻原小から綿の物品提供を受け,川をきれいにする取り組みを続けた。


6.知恵図鑑活用のポイント

学習記録として
 知恵図鑑への登録は児童でも簡単にでき,  システム面での管理に手間がかからない。しかも,画像が添付できるので,視覚的に伝えることができる。検索項目も登録できるので,後日登録した内容を種類別に閲覧することができる。これにより,必要に応じて学習経過を児童が見直すことや,教師が提示することがたやすくなった。また,ポートフォリオ的な評価記録のひとつとしても利用できる。
児童が知恵図鑑登録している様子

情報交流の場として
 本校も,今後ホームページ開設はぜひやりたいと願っている。コンピュータ機器設備等ハード面での環境は順次整ってきている。しかし,ホームページ開設に校内での話合い,それに伴う著作権・リテラシーの研修等ソフト面での整備が未だ不十分である。そんな現状の学校にとって知恵図鑑は活用価値が大いにある。
 知恵図鑑に記録された情報は,現在進行形のものが多い。また,以前に登録した内容も尋ねれば,登録した人からの返事が期待できる。また,発信した情報は英訳され,海外に発信される。これは,学習の中での情報発信,そしてその後の交流に限って考えると,単に学校がホームページで発信する以上の成果が期待できる。
香港校に紙工作の贈り物の返事が届いた

香港校からお礼の品が届き,返事を書いた

役割分担をして
 活字入力やマウス操作程度の学習は全員が済んでいる。しかし,知恵図鑑での情報交流は継続的に続く。授業時間外まで5月から,11月まで持続的に登録内容の確認をすることは苦痛に感じる児童もいる。また,コンピュータ室でしか,閲覧できない本校では空間的にも無理がある。
 そこで,児童の課題別グループとは別に知恵図鑑担当を決め,日常の情報交流を交代で行うことにした。また,課題別グループ内でも,知恵図鑑登録を念頭においてデジカメ記録係担当や報告書担当がいたので,それらの児童が探究活動中は登録・閲覧をしていた。結果的に,知恵図鑑担当者希望者は増え,学習当初4名だったのが,学習終了時には10名になった。

7.成果と課題

 WSNの「知恵図鑑」を活用した学習はそれまでの児童と教師の内面的な視野と物理的な地域を大きく広げてくれた。教室や限られた空間から脱し,世界をより広く近く感じることができた。
 また,児童は「地元たんけん広場」や「水と大地」の1uプロジェクトではホスト的な役割まで担うことで,どう発信したら他の団体との交流が持続し学習が進められるか,自分たちは正しく判断し活動を続けているのか,などについて見つめ直し,コミュニケ−ション力育成に効果を発揮した。
 今回本校は総合的な学習の他,道徳でWSNを利用させていただいた。しかし,様々な場での利用が可能である。「知恵図鑑」利用に興味を高くもちながら卒業していく児童が引き続き利用し続ける方法がないか,再検討の余地がある。
 「知恵図鑑」は利用すれば,利用するほど情報共有する交流相手について,知りたくなる。今回は,物品の交換などで交流したが,簡単なビデオクリップがつき,動画が載せられると更に,有効性が高まると思われる。
 また,「知恵図鑑」に載せる内容は文章を見せることを考え,推敲している。各団体内部での発信前の意見交換の場があると,学習過程が透明になり,発信内容に児童が自信を持てる。児童の振り返りや教師の評価にとっても,より使いやすさが増してくると思われる。


活動終了についての知恵図鑑

足尾銅山植林体験後の振り返り記録プリント

川クリーン作戦グループはその後も活動を続け,理科展覧会で出品作品が入賞した