5.プロジェクトの評価について



5.3 評価の結果について

5.3.1 評価会による評価

(1)項目観点評価(授業評価)

表6に示す


表6 授業評価
授業日 目標項目 認知 情意 技能
11/12 【テーマの重要性や課題点の存在を認識する】
 3班とも自分達に身近な「里楽」をテーマにしたが, 班毎で調べる目標に微妙な差があることに気づき,自分達の班の調べ目標がより明確になった。また,書き出したシートのうちの重要ポイントをマークしたことで調べるポイントが明確になった。
         
【調査に関して意欲を持つ】
【他班の意見と比較して自分たちのテーマに対する関心をより深める】
 調査の方法等に意見を出し合い,重複した調査対象には役割分担するなど,具体的に調査に対するイメージをもったことで意欲が高まった。
    
    
12/2 ※「書き込み」中心の日のため「ツール評価」で評価
12/5 【取材したことを自分なりに再整理しながら認識する】
 「起債」や「村おこしを支える人」など今まで知らなかったポイントを認識できた。
         
【他の人の発表も聞きながら自己のものと比べて新たな課題に気づく】
 類似テーマの調べ対象について,意見交換することで新たな認識を深めていた。また,質問をうけることで曖昧に認識していた部分があることを再認識し,更なる調べテーマを設定していた。
         
【他の人にわかりやすい発表ができる】
 ここでは「ディスカッション」が主のため,朗々たる発表はなされなくても良し。質疑応答数は相当数に上っていた。子ども達自身の自己評価はスムーズな質疑ができなかったという意見が多かった。
          △〜○
12/9 【ディスカッションを通じて新たな課題を発見する】
 編集シートで全体図をイメージし,「全体としてどうしたいか」という視点を見出した。
       
【ディスカッションによって新たな地域への課題意識をもつ】
 自分達で考え出すことで「調べた」という事実から「自分達はどうしたいか」というモチベーションに結びついてきた。
     
【調査した情報をうまく伝わるように構成する能力を高める】
 多々出た情報を取捨選択・関連付けし,結果どうあるというまとめにもってゆけた。
     

(2)フリーディスカッションによる評価

a. 授業評価

a-1 「考えさせる」教育効果について

特にカードを並べてまとめる段階では,子供たちが主体的に考える支援になった。
通常だと,まとめの段階で,子供は教師の「ヒント」を期待するし,教師も到達させたい目標値に対してヒントで近づけてゆく。今回は途中経過を見るうち子供たちに任せてみる事にした。子供たちは矢印や色分けなどで方向付けをし,まとめ切った。結果は自分が想定していた到達点とそう相違のあるものでなかった。(教諭)


a-2 「取材帖データ(カード)を編集シートにて整理 の考え方」

「リテラシー向上」か「モチベーション向上」かの2種類ある。
松下の当初案では,取材帖データを整理分類する目安として,「目的」「課題」「原因」「方法」「結果」「感想」等のカテゴリで分類する事を挙げていた。リテラシー取得が最大目標の授業であれば上記でよいが,調べ学習の場合,モチベーション向上(最終的に自分はどうアクションするかへ意識付けする)が目標なので,あまり細かく「分類作業」をすると焦点がぼけてしまう。調べ学習の場合,

程度の大括りな分けかたのほうが授業がやりやすい。(教諭)


a-3 「手書き」の効果 について

意見まとめフェーズに効果
今回葉山小学校生徒はキーボード入力を多用してしまった。(たたき台ツールにキーボード入力機能があった)葉山小学校では,日常キーボードに慣れているため 手書き/キーボードの入力があったら子供たちはキーボードを選択してしまう。入力速度も速い。
最後の編集シートでの作業は 意見の書きとめ,矢印の書き込み等 手書きの効果あり。


a-4 「授業スケジュールと白板入力」

入力するときのシチュエーション,機器によって変わる。
白板が1台なので,複数班が授業時間内に書き込むのは困難。入力環境は,使用するシーン,教室,授業形態によって変わる。白板は発表・全体討議に。個別データ入力は端末から。普通教室とPC教室を使い分けて全体の流れを作ると良い。


a-5 「デジタル化」の効果 について

思考の流れ の経過が保存できる。
調べ学習の経過の流れ,子供たちの思考の記録がとれる事は意義がある。
何度試行錯誤してもきれいに使える。
今回は普通教室でスタンドアロンの形で使用したが,今後IT活用の形態として複数校同士のネット討議などに活用できる。


a-6 他校での活用 普及について

整理の仕方 のテンプレートなどを用意
葉山小学校においては調べ学習の経験 子供たちのITリテラシーなどはかなり恵まれたレベル。教師のノウハウの差等によって学校によってばらつきはでるのではないだろうか。特に編集シートでの整理法の部分は テンプレートなどの雛型を何種類か用意したほうが良い。
→ 今回葉山小学校での活用事例は「活用マニュアル」としてWebに掲載する予定。


b.ツール評価

b-1 「書き込みやすさ」について

プロジェクタ投影のため,影ができるのが最大の難点
電子白板では自分の影で投影面が見えなくなってしまう。手元にも影が出来るので,書けているのかがわからない。書き込みにくい。事情が許せば書き込み対応プラズマディスプレイ等の方が良い。


b-2 複数ペンや黒板消しを同時に使用できるとベターである。

(通常のホワイトボードとしても使うためペンが複数本,黒板消しも付属しているため)つい複数人で同時に書き消ししそうになってしまう。(複数ペン同時に使うと,2点間に直線が書けてしまう)マウスエミュレーションのため仕方が無いが,同時に使えるデバイス技術ができると良い。


b-3 ペンタブレットとの比較

eアドバンス中間全体検討会にて,入力における白板との比較検討を行うとよいとのアドバイスを受け,ペンタブレットを増設,入力比較を行った。
入力評価は白板よりペンタブレットの方が良い。(白板は影が出来るため)子ども達の感想もペンタブレットの方が入力しやすいとの評価であった。時間内の書き込んだ分量もペンタブレットの方が多かった。


b-4 キーボード入力との比較

葉山小学校6年生は4年生の頃からPCに慣れ親しんでおり,今回使用したたたき台として使用した書き込みツールにキーボード入力機能があるのを発見すると殆どがキーボード入力になり,以前手書きだった個所もキーボードで綺麗に修正・清書してしまった。葉山小学校に限った場合,キーボード入力のほうが速い。但し全国どこでもそうとは言えない。


b-5 「書き込みの分量・字の大きさ」等について

初回書き込みを始めた直後は,相当大きな字(30cm角 1画面に4行程度)だったが,慣れるに従って10cm角程度になった。余り小さく書くと,カード化したときに判別不能になる。


b-6 「発表・ディスカッション」時の機能について

複数同時起動の要望
班ごとに発表・ディスカッションをする過程で他の班との比較をする場面が必ず出てくる。今回のたたき台として使用したツールは同時1ファイルしか起動できなかったため,開発ツールは複数起動が可能だと良い。


b-7 色分けが効果的

子ども達は色を非常に効果的に使っていた。書き込みや矢印など,類似意見は同じ色,異なる意見は違う色など(指示しなくても)自然に使い分けていた。


b-8 「カード化」について

取材帖データをカード化し,編集会議シート上で入れ替え・書き込みしながら整理する機能は効果的であった。


b-9 カードの大きさ

今回,カードの大きさとして600×450ピクセル 400×300ピクセルのもの2種類を用意した。600×450ピクセルだとカードの内容は判別しやすいが編集会議シート上に配置しきれない。400×300ピクセルだと配置しやすいがカードの内容が判別しにくい。今回は400×300ピクセルの方が適当と判断した。



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