5.国際交流支援システムの有効性




 小学校・中学校の児童・生徒が使用するための国際交流支援システムとして,どのような機能や操作性が必要なのかを検証し,またその有効性を分析することを目的として,参加校の先生と児童・生徒別に事前,中間,最終の3種のアンケートを行った。また,先生には,別途ヒアリングを行った。

5.1 翻訳掲示板

 掲示板を利用した交流が円滑に進むことへの期待はあるものの,翻訳精度そのものへの期待は低かった。どの国も交流プロジェクトは,児童・生徒にとって国際社会に目を向けるよい機会になることはわかっており,重要と感じているが,国別を問わず,担当の先生への負担が大きくなるのが実際問題として挙げられた。自動翻訳掲示板がどの程度先生の負担を減少し,児童たちの交流への興味を高めたかを検証し,その結果を分析した。

(1)事前アンケート結果・ヒアリングの結果と分析

1)先生に対するヒアリング・アンケート

アンケート回答数
琴田小学校 1
時津東小学校 2
Staten Island Academy 1
合計 4名

 掲示板そのものの操作性に関しての心配は,コンピュータに詳しくない先生も含めてほとんどなかった。ただし,児童たちにとっては,難しすぎるのではないかとの心配があったようだ。

 翻訳ソフトに関しては,メール・ホームページ・ワードなどの文書ファイルの翻訳に翻訳ソフトを以前に使用したことのある参加校がほとんどで,その経験上,翻訳ソフトへの期待はかなり低いものだった。翻訳ソフトを使用する上で,若干またはかなりの修正が必要であり,児童の使用に関しても,修正内容が必要と回答した先生が4名中3名であった。

 今回の自動翻訳掲示板を利用する利点として,「最初から相手国語を利用するより速く入力できる」,「相手国語に対する抵抗が和らぐ」などがあがった。また,翻訳ソフトを使うことにより,「言葉を意識することなくコミュニケーションを取ることができる」,「コミュニケーションが活発化する」,「相手国の言語に対する感心が高まる」などがあり,外国語への壁は,国際社会と言われている現代でも大きな障害であることがわかる。しかし,掲示板を利用することによって少しでも交流が円滑に進むことを期待するという回答は,4名中4名であった。過去の経験上,翻訳精度そのものへの期待は低いが,翻訳電子掲示板への全般的な期待は大きいことがわかる。

 掲示板を使用した交流は,「先生同志,児童・生徒同士のコミュニケーションを活発化すると思う」という意見が4名中3名から挙った。また,「児童・生徒の発言を全員で共有,チェックでき,先生が投稿文章の履歴を確認することができる」点は,異文化同士の交流を進める中で生じる問題を事前に避けることも可能にするのではないかとの意見もあった。インターネットを利用した交流は,電話に比べて安価な交流が可能になり,距離を気にすることなく交流ができるため,掲示板を利用しての交流の有効性についての質問に対しての回答は高い評価だった。

 その一方,デメリットとして各学校の先生から挙げられたのが,「交流が掲示板に依存しすぎてしまう」,「バーチャル的なコミュニケーションで現実感がない」,「相手校にインターネットの設備が必須である」,「掲示板上,返事が返って来るのか不安」,「翻訳がうまくいくのか不安」という声もあった。

2)児童・生徒に対するアンケート

アンケート回答人数
琴田小学校 30
時津東小学校 88
Staten Island Academy 5
花池地実験小学校 5
合計 128名

 グラフ5-1から5-5事前アンケート結果(児童)「掲示板について」の各学校のグラフを参照してわかるように,児童・生徒たちの反応も同じく,交流を始めるにあたって,ほとんどの児童・生徒が不安を感じ,大変だと思っているという回答が半分以上を占めた。しかし,その中で,「直接話せないから,掲示板を使うと他の国の人とも話せるようになる」,「英語を知らなくても交流ができるようになる」,「時間もかからず,沢山話せる」,「返事が楽しみ」,「掲示板でいろいろなことを聞きたいし,教えたい」などの意見からも,翻訳電子掲示板への期待が,先生と同様に大きいことがわかる。また,他の国との交流にも興味や,可能性を持っている児童・生徒が多いことから,言葉の壁は,翻訳掲示板が解決してくれるもので,翻訳電子掲示板を使っての交流を行えることへの期待が大きいことがわかる。この時期には,操作性の心配をしている児童・生徒はほとんどいなかった。

グラフ5-1事前アンケート結果(児童)「掲示板について」琴田小学校

グラフ5-2事前アンケート結果(児童)「掲示板について」時津東小学校

グラフ5-3事前アンケート結果(児童)「掲示板について」Staten Island Academy

グラフ5-4事前アンケート結果(児童)「掲示板について」花池地実験小学校

グラフ5-5事前アンケート結果(児童)「掲示板について」全体集計結果

 各校,相手国への関心度が高く,交流への期待が非常に高いことがうかがえる。全体的には,通訳を通さず自らの手で文章を書くところから始まり,また時差を気にせずに交流ができる点では,自動翻訳掲示板掲示板利用した国際交流を楽しみにしている児童・生徒が多いことが,グラフ5-11事前アンケート結果(児童)「交流について」全体集計からわかる。国別に見ると,海外の学校の方が,交流は大変だという意識を持ちながらも,交流に対する前向きな姿勢が強い。また,自国文化をうまく説明できると回答した児童が日本よりも多いことが自己主張の強い文化を表していると言える。日本側も自国の文化を相手にうまく伝えることができるのかという言葉の不安は持ちながらも,交流に対する期待度は高かった。また,「掲示板を利用すれば言葉を心配せずに話せるようになる」と回答した児童が多かったことから,翻訳掲示板への期待は高いものであることがわかる。

グラフ5-6事前アンケート結果(児童) 「交流について」琴田小学校

グラフ5-7事前アンケート結果(児童) 「交流について」時津東小学校

グラフ5-8事前アンケート結果(児童) 「交流について」Staten Island Academy

グラフ5-9事前アンケート結果(児童) 「交流について」花池地実験小学校

グラフ5-10事前アンケート結果(児童) 「交流について」平尾中学校

グラフ5-11事前アンケート結果(児童) 「交流について」全体集計



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