5.コンテンツの開発




5.1 コンテンツ

 次の6種類のコンテンツの制作(表7)を進め,現在まで5種類が完成した。なお,実証授業は,その内の内山氏,難波氏,指導主事藤本コンテンツの3種類で行なった。

表7 6つの「心も育つ理科コンテンツ」
内山氏コンテンツ 四季の移り変わり
動植物研究家の内山氏が,野山を歩かれ撮影された四季毎の草花の写真と,内山氏の見方・考え方,願い等を動画コンテンツとして作成。
上島氏コンテンツ 来年度春完成予定 アマガエルの研究をされている上島氏が撮影されたコンテンツおよび上島氏の見方・考え方,願い等をコンテンツ化する予定。
難波氏コンテンツ むしたちのひろば
動植物研究家の難波氏が撮影された,昆虫の写真と,難波氏の見方・考え方,願い等をコンテンツ化。
藤本氏コンテンツ ふしぎな生き物オオサンショウウオ
岡山県情報教育センターの指導主事藤本が研究を行っている,オオサンショウウオに関して,その生態ととりまく環境や,藤本の見方・考え方,願い等をコンテンツ化。
近藤氏コンテンツ こん虫のひょう本をみよう
倉敷市自然史博物館の学芸員近藤氏が日頃研究を行っている昆虫の標本と近藤氏の見方・考え方,願い等をコンテンツ化。
脇本氏コンテンツ こん虫の生態と採集法
岡山県自然保護センター脇本氏が子ども向けに昆虫観察を手ほどきする様子や採取法,脇本氏の見方・考え方,願い等をコンテンツ化。

5.2 コンテンツ制作について

 心も育つ理科コンテンツの制作に当たり,編成する組織の在り方を検討する目的で以下(表8)のA〜Cの3チームとした。

表8 コンテンツ制作チーム
Aチーム プロダクション
(株式会社山陽映画)
編集1名,カメラ1名計2名
Bチーム 教師と編集プロチーム 教師1名,カメラ・編集2名の計3名
Cチーム 教師集団
(岡山県教育工学研究協議会映像作成班)
教師3名

 平成14年9月26日に開催した第1回企画委員会において,制作する「心も育つ理科コンテンツ」の特徴とねらいを共通理解した。その後,10月初旬から11月下旬までの2ヶ月弱で,動植物研究家・写真家一人あたり30秒のコンテンツを40本,3〜5分のコンテンツを2本をそれぞれのチームで制作に当たった。

5.3 各コンテンツの特徴

図11 コンテンツトップページ

 制作したコンテンツのうち5種類について特徴を以下に述べる。
 全体を通してのコンセプトは,

  1. 低学年を意識し,階層の単純化
  2. キーワードや見た目でイメージ
  3. 最小限に抑えたスクロール
  4. すべてを俯瞰(ふかん)できるトップページ

 で作成している。
 各コンテンツは,授業の検索操作を極力少なくするよう配慮し,イメージで直感的に検索できるようにした。階層も2層を原則とし,深くても3層までとした。
 特に階層については,インターネットで調べ学習をしている際に,子どもたち自身がどのサイト・ページにいるのかわからなくなったり,戻りたいページに戻れなくなっている現象が多く見られることを考え,単純な階層に仕上げることにした。またトップページ(図11)は六つのドアを作成し,六つのコンテンツがあることを明瞭にした。


5.3.1 Aチーム:プロダクション (株式会社山陽映画)

図12 難波氏と撮影隊

 内山氏は,植物の写真を撮影して身近な環境のすばらしさ,大切さを子どもたちに伝えたいという願いを持っておられる。また,難波氏はジョロウグモや昆虫の写真撮影を通して,身近な生き物への気づきを体験することの重要性を子どもたちに伝えたいと願っておられる。内山氏,難波氏の写真の内容から小学校第3学年理科「昆虫のからだ」,第4学年理科「季節の変化と植物の成長」での活用を想定して,岡山県情報教育センター指導主事と岡山の自然教育会の教師でコンテンツの制作及び,授業案の設計を行った。内山氏,難波氏それぞれの願いやメッセージについては,(株)山陽映画がディレクター1名,カメラマン1名の計2名で撮影・編集したものを,岡山県情報教育センターでWeb化した。内山氏の2000枚におよぶ植物写真のデータベース構築は,(株)富士通岡山システムエンジニアリングが実施した。


図13 写真の植物名を調査する自然教育会の教師
図14 内山氏と自然教育会の方々

※岡山の自然教育会
・自然観察が好きでその重要性を強く持った教育関係者や自然観察,環境教育に関心のある有志で構成されている。
・休日や長期休業中に子供達とその保護者に対して,岡山市立少年自然の家や国立吉備少年自然の家のフィールドを中心にした自然観察体験会を開催している。
・身近な自然観察の指導を実施したり,自然観察ガイドブックの教材を作成したりしている自然教育研究団体である。

「むしたちのひろば」について

難波由城雄 氏 略歴
1948年岡山県新見市に生まれる。本名教美。近畿大学商学部卒業。卒業後,岡山後楽園の風景をはじめ,鳥,きのこ,昆虫やクモの生態写真などを25年間にわたって撮りつづけ,現在に至る。カメラ雑誌,旅行雑誌,児童向けの雑誌,図鑑などに作品を数多く発表。著書に「ジョロウグモ」(偕成社)「後楽園」(山陽新聞社)がある。1999年秋から2000年にかけて,おかやま後楽園300年祭実行委員会・岡山県郷土文化財団主催で,「後楽園の四季」の写真展を全国各地で開催する。写真集「後楽園の四季」(吉備人出版)を出版。現在,日本自然科学写真協会会員,日本写真協会会員。

 低学年でもわかりやすいレイアウト(図15)を心がけ,ロールオーバー効果を利用することで,文字とイメージの切り替えができ,選択しやすい作りにした。

図15 「むしたちのひろば」のトップページ 図16 「むしたちのかお」
図17 難波氏の「見方・考え方・願い」が凝縮 図18 昆虫について語る難波氏

「四季の移り変わり」について

内山峰人 氏 略歴
所属…岡山の自然教育会 職業…自然写真家,山陽新聞社元記者
岡山の身近な自然が失われていくことに危機感を感じ,次の世代に豊かな自然を残すために,私財を投じて写真に残すことを決意。岡山の自然教育会が子どもたちに身近な自然のすばらしさと大切さを体験的に感じてもらえることを目的に活動していることに賛同し,仲間となる。現在は退職なさって,身近な自然の撮影を続けるかたわら公民館や生涯学習センターなどで講演の毎日。

 植物の静止画として,2000点をスキャナでディジタル化して収集し,データベース化した。この中から生息場所,種名やキーワードにより検索を行えるようにするため,データベースに全コンテンツを登録した。そして,検索画面にASP(Active Server Pages)を利用し,動的検索を実現している。
 春夏秋冬の四季の画像が一度に表示されるように工夫(図19)しているので,一つの分類またはキーワードを入力することにより,検索結果を一度にみることができる。
 また,データベースを用いているので,登録内容を変えることにより草花以外の検索にもすぐに応用でき,柔軟な対応が可能である。

図19 「四季の移り変わり」トップページ 図20 拡大写真と,説明が表示される
図21 内山氏の動画サムネイル 図22 自然に対する想いを語る内山氏

5.3.2 Bチーム:教師と編集プロチーム

図23 夜の撮影

 オオサンショウウオの生態と生息環境の学術的な研究を行っている指導主事藤本が撮影・編集したオオサンショウウオのビデオについては,指導主事藤本と編集プロ2名が共同でディジタルコンテンツ用に再編集した。指導主事藤本のメッセージや研究調査活動等は,編集プロ2名が撮影・編集した。Web化は岡山県情報教育センターで行った。


「オオサンショウウオ」について

藤本義博 略歴
 1960年岡山県高梁市に生まれる。岡山大学大学院教育学研究科卒業。岡山大学教育学部文部教官助手,川上郡備中町立富家中学校,川上中学校教諭,岡山大学教育学部附属中学校文部科学教官教諭を経て,現在岡山県情報教育センター指導主事。1997〜2000年,文化庁,岡山県教育庁文化課の特別天然記念物オオサンショウウオ保護調査委員に任命され,生息指定地内におけるオオサンショウウオの調査研究を行う。日本動物学会,日本古生物学会,日本理科教育学会,日本教育工学学会,日本野鳥の会会員。

 研究・調査,生態,環境のカテゴリから作成しているが,特に分類名を明記せず,(図24)子どもたち自身が考え・気付くというねらいを持たせている。色分けこそしているが,分類名を表示しないことで,素材としての広がりも持たせた。
 また,キーワードや文字の大きさも,なるべく幅広い年齢層を考え,イメージしやすいものにした。項目が多く,一つの画面に収めるのにかなり苦労した。

図24 「オオサンショウウオ」トップページ 図25 生態について語る指導主事藤本

5.3.3 Cチーム:教師集団(岡山県教育工学研究協議会映像作成班)

 近藤氏の「こん虫のひょう本を見よう」と脇本氏の「こん虫の生態と採集法」とは,岡山県教育工学研究協議会ビデオ班に所属する小中学校の教師が,祝祭日を利用して撮影,編集した。近藤氏の日頃のご様子は,倉敷市立自然史博物館友の会の自然観察会で子どもたちに昆虫を解説している様子を取材し,脇本氏の虫とりの実演解説は,岡山県立自然保護センターのフィールドで取材した。

「こん虫のひょう本を見よう」について

近藤光宏 氏 略歴
倉敷市立中州小学校校長退任後,平成12〜14年3月まで倉敷市立自然史博物館館長。
現在,倉敷市立自然史博物館友の会会計監査,倉敷昆虫同好会幹事のかたわら,子どもたちに昆虫の魅力を伝える毎日。

図26 「こん虫のひょう本を見よう」のトップページ

 虫の名前を一覧表示にし,選択しやすい作りにしている。暗くなりがちな漂本のイメージを払拭(ふっしょく)するため,明るいトップページに仕上げた。左側のボタンを押すと解説つきの漂本が見える。中央には静止画の漂本が収められ,右上には,近藤氏の自然教育会での活動の様子が動画で表示される。


「こん虫の生態と採集法」について

脇本浩 氏 略歴
1938年 岡山県川上郡玉川村(現 高梁市玉川町)
岡山大学教育学部卒。総社市立総社北小学校校長退職後、現在岡山県郷土文化財団自然保護センター自然保護研究員の傍ら、独立行政法人国立吉備少年自然の家主催事業自然探検隊カワセミクラブ講師、倉敷昆虫同好会会員、倉敷自然史博物館友の会会員として子どもたちに昆虫の魅力を手ほどきする毎日。

図27 「こん虫の生態と採集法のトップページ

 階層を2層とし,クリックすると各動画・静止画に移る。左側の列をクリックすると,捕食の様子などが動画で表示され,右側の列をクリックすると,昆虫の採集法が動画で見える。中央には美しい漂本が並び,学習者の興味を引く。中央下には,脇本氏の話が収められている。


5.4 レシピ作成

表9 レシピ
レシピタイトル 対象科目 対象年次 活用コンテンツ
こんちゅうをしらべよう 理科および道徳 小学校第3学年 難波氏コンテンツ
虫たちのひろば
すずしくなると 理科および道徳 小学校第4学年 内山氏コンテンツ
四季の移り変わり
(草花)
生き物のくらしとかんきょう 理科および道徳 小学校第6学年 藤本氏コンテンツ
オオサンショウウオ

図28 第3学年レシピ
こんちゅうをしらべよう
図29 第4学年レシピ
すずしくなると
図30 第6学年レシピ
生き物のくらしとかんきょう
図31 第3学年ワークシート 図32 第4学年ワークシート 図33 第6学年ワークシート


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