身近な植物の四季の様子の写真を中心とした内山峰人氏のコンテンツは,小学校第4学年理科「すずしくなると」の単元で実施した。
1.学習指導要領での位置づけ
- 小学校学習指導要領解説 理科編 P.31 第4学年 A(1)イ
- (1) 身近な動物や植物を探したり育てたりして,季節ごとの動物の活動や植物の成長を調べ,それらの活動や成長と季節とのかかわりについての考えをもつようにする。
2.単元計画
第1次 ディジタルカメラで植物の秋の様子を調べよう 2時間
第1次 ディジタルカメラで植物の秋の様子を調べよう
単元名:1.ディジタルカメラで植物の秋の様子を調べよう(2時間)
学習目標
- 秋の校庭の植物の観察を行い,葉が枯れても種子を残すことや落葉しても個体は生きていることを指摘できる。
- 集めた情報を分析し,傾向や規則性を見つける。
- 自分の考えと違う意見があることに気付く。
主な学習活動と児童の反応
- 校庭の植物を観察して,秋の姿だと感じる場面をディジタルカメラで記録したり採集した後紹介しあう。
ディジタルカメラで撮影した写真の横に,赤や黄色に紅葉した落ち葉を採集して張り付けた児童もいた。「やっぱり夏とくらべると,葉の色が違っているなあ。葉が赤茶色になっています。とっても秋らしいです。でも,となりの木は全部緑です。秋でも色が変わっていない木があるんですね。」「ヘチマの写真をとったのは,夏の葉は緑色だったのに茶色でくしゃくしゃになっていて,実は大きく茶色になっていて秋らしかったからです。」と感想を述べ合い,落葉樹と常緑樹の違い,葉が落ちても種子を残すことを,四季の移り変わりと植物の変化の観点から再認識していた。
実証授業の効果
単に植物の観察ではなく,秋の姿だと感じる場面を探す明確な視点をもたせるところに実証授業のポイントがある。日常生活の中で四季の移り変わりを感じるのは「暑い」「寒い」といった感覚的なものが多いと考える。目の上,足元に広がる四季の移り変わりには,目が向きにくい。ディジタルカメラという新しい道具を味方に,自分の秋探しが展開される。見ては撮る,撮っては見る,触っては撮る,撮っては触る,この繰り返しにより,自然との関わりが深まっていく。記憶の彼方にあった青々としていたころの情景が呼び起こされる。春,夏,秋,冬の点であった季節が線となり,四季の移り変わりにつながっていく。「元気だったのにすっかり枯れてしまっているよ」「色が変わってるよ」。校庭のあちこちから聞こえる児童の声。シャッターを押す指にも力が入る。自然と直接触れるひとときが,自然に対する心情や知識・理解をも高めていく。
実施日:平成14年12月6日 | 学年学級:4年B組 |
場所:岡山市立西大寺南小学校視聴覚教室 | 授業者:倉橋教諭 |
単元名:すずしくなると−1 ディジタルカメラで植物の秋の様子を調べよう(2時間 第1〜2時) | |
教科の目標:秋の校庭の植物の観察を行い,葉が枯れても種子を残すことや落葉しても個体は生きていることを指摘できる。 | |
情報教育の目標: 集めた情報を分析し,傾向や規則性を見つける。 自分の考えと違う意見があることに気付く。 | |
準備:ディジタルカメラ,フロッピーディスク,ワークシート |
「今日から数時間かけて校庭の自然を見たり,ディジタルカメラで撮ったりしながら季節の変化に注目していきましょう。」数時間後に作成する「四季のカレンダー」の構想を話し,意欲付けをする。 | |
校庭に出て,秋の特徴と思われる植物の状態を見つけてディジタルカメラで撮影する。「ツルを伸ばして元気だったヘチマもすっかり枯れてしまっているよ。」とヘチマに人気集中!改めて観察することの大切さを痛感する。 | |
「こっちの木の葉は,色が変わっているよ。」 「私が撮っておくね。」 「他の木の葉っぱの様子も撮っておこうよ。」 |
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ディジタルカメラの特性を生かして,撮影したらその場で写り具合を確かめ,必要に応じて撮り直す。「さっきのうまく写っているかな?」 |
第2次 四季のカレンダーづくりをしよう
単元名: 2-1.四季のカレンダーをつくろう(3時間)
2-2.四季のカレンダーを紹介しよう(1時間)
学習目標
- 内山氏の身近な植物のディジタルコンテンツを利用した四季の植物カレンダー作りを行い,植物の成長の仕方と季節とのかかわりを指摘できる。
- 内山氏のメッセージを例をあげて説明できる。
- 集めた情報を分析し,傾向や規則性を見つける
- 自分の考えと違う意見があることに気づく
主な学習活動と児童の反応
- 春,夏,秋,冬とそれぞれ1〜2枚の写真を選んで,カレンダーに貼り付けていく。レイアウトや写真の大きさ,文字入力まで,児童が自由に考えて形にしていく。
- 植物を選ぶのと並行して,あらかじめ配布されたワークシートに,選んだ植物の名前と季節,選んだわけ,内山氏に聞いてみたいことを記入する。
- 作成したカレンダーをカラープリンタで印刷したり,電子ホワイトボードに映し,その植物を選んだ理由等を発表しあう。
- 写真の撮影者である内山氏と交流する。
カレンダーに掲載する写真選びでは,「花が白色で雪の結晶みたいな形で,冬を呼んでいるみたいだから選びました。」「お月見で毎年飾っているから。」と子どもなりに季節を感じ,熱心にコンテンツの植物の写真を観察していた。
実証授業の効果
具体的な活動は,授業そのものを活気あるものにしていく。カレンダー作りという具体的な活動を通して,植物の成長と季節の関わりを学んでいく。内山氏の2000枚に及ぶコンテンツが児童の活動意欲を促進する。試行錯誤,迷いながらのコンテンツ選びもこれまた楽しい。内山氏の想いが児童一人一人のカレンダーに形を変えて表現されていく。
内山氏との直接交流では,内山氏愛用の特大カメラの登場で授業が盛り上がった。これほどのカメラを見たり触ったりすることも滅多にないだろう。それだけに,内山氏の想いを身近に感じさせる。写真撮影の体験談から,とにかく自然が大好きという想いが伝わってくる。カレンダーの発表では,「冬に白い花を選んだのは,冬は雪ってイメージがあるからです。」他の人の作品を見たり発表内容を聞いて,自分では思いつかなかった考えにおもしろさを感じたり,友達の植物の季節感に共感していた。
実施日:平成14年12月9日 | 学年学級:4年B組 |
場所:岡山市立西大寺南小学校視聴覚教室 | 授業者:倉橋教諭 |
単元名:すずしくなると−2-1.四季のカレンダーづくりをしよう(4時間 第1〜3時) | |
教科の目標:内山氏の身近な植物のディジタルコンテンツを利用した四季の植物カレンダー作りを行い,植物の成長の仕方と季節とのかかわりを指摘できる。内山氏のメッセージを指摘できる。 | |
情報教育の目標:集めた情報を分析し,傾向や規則性を見つける。自分の考えと違う意見があることに気づく。 | |
準備: 電子ホワイトボード,コンピュータ,コンテンツ |
カレンダーを作成するため,植物のコンテンツの中から好きな植物を選んでいる様子。コンテンツには,写真家内山氏の撮った写真が約2000枚登録されている。季節ごと,場所ごとに多数の写真が表示され,選ぶのに悩むほど。 | |
自由に植物を選ぶ時間の後,カレンダー作りのための次の操作を電子ホワイトボードに映して説明。あらかじめ資料の準備は必要だが,瞬時に画面が切り替わるという,手書きの黒板にはない操作が可能なため,効果的なツールである。手書きももちろん可能であり,臨機応変に対応できる。 | |
春・夏・秋・冬とそれぞれ1〜2枚の写真を選んで,あらかじめ用意された白紙のカレンダーに貼り付けていく。レイアウトや写真の大きさ,文字入力まで,児童がそれぞれ自由に考えて形にしていく。 | |
作成したカレンダーはカラープリンタで印刷。画面で見るのとはまた違う,形になった成果物に,各自嬉しそうな様子。植物を選ぶのと並行して,あらかじめ配布されたワークシートに,選んだ植物の名前と季節,選んだわけ,内山氏に聞いてみたいことを記入していった。 |
実施日:平成14年12月6日 | 学年学級:4年A組 |
場所:岡山市立西大寺南小学校視聴覚教室 | 授業者:片岡教諭 |
単元名:すずしくなると−2-2.四季のカレンダーの紹介をしよう(4時間 第4時) | |
教科の目標:植物の成長の仕方と季節とのかかわりをとらえる。種子が枯れても種子を残すことや落葉しても個体は生きていることなどに気づく。 | |
情報教育の目標:集めた情報を分析し,傾向や規則性を見つける。自分の考えと違う意見があることに気づく。 | |
準備:電子ホワイトボード,コンピュータ,コンテンツ,カメラ(内山氏所有物) |
作成したカレンダーを電子ホワイトボードに映し,その植物を選んだ理由等を発表している様子。「冬に白い花を選んだのは,冬は雪ってイメージがあるからです。」他の人の作品を見たり発表内容を聞いて,自分では思いつかなかった考えにおもしろさを感じたり新しい気付きをしていく。 | |
コンピュータの操作と並行して,電子ホワイトボードの操作にも慣れていく児童たち。マウスのダブルクリックの要領で,電子ホワイトボード上のファイル名をトントンと叩き,自分のファイルを開く様子。 | |
写真の撮影者である内山氏の登場。児童たちは既にコンピュータの中で内山氏の姿や声を見聞きしており,バーチャルとリアルが交差した瞬間。植物や動物,とにかく自然が大好きという想いを,写真撮影の体験談を交えながら語られた。 | |
内山氏愛用の特大カメラの登場に,児童たちが続々集まってきた様子。こんな機会でもなければ,これほどのカメラを見たり触ったりすることもないだろう。 |
第3次 内山氏と一緒に写真を撮ってオリジナルのカレンダーをつくろう
単元名:3-1.内山氏と一緒に写真を撮ろう (2時間)
学習目標
- 内山氏の植物の見方・考え方,撮影の心構えを,例をあげて説明できる。
主な学習活動と児童の反応
- 班ごとに内山氏の実技指導を受けながら,校庭の植物をディジタルカメラで撮影して,オリジナルのカレンダーを作る。
写真撮影には少し寒い中,それでも内山氏にコツを教えてもらえると張り切る児童たち。内山氏は愛用のカメラを,児童たちはディジタルカメラを携えて,熱心に撮影を行っていた。内山氏のカメラでシャッターを切る体験をした児童は,シャッターの感触に満面の笑顔で「オー」と感嘆していた。「植物と同じ目線で」という指導通り,地べたに寝転がって花を撮影する熱心な様子だった。
実証授業の効果
再び,自然の中で活動することにより,児童に新たな気づきや発見を生み出す。そのかたわらには,内山氏の児童を優しく見つめる笑顔がある。自然と人と触れ合いながら,児童の心がまた一歩育っていく。内山氏の言葉にうなづきながら,ディジタルカメラをのぞく児童の瞳は,内山氏が植物を見つめるそれと似ているようであった。ディジタルカメラの撮り方を教わりながら,実は植物との触れ合いを学んでいるように見える。校庭という限られた世界の中ではあるが,内山氏の見方・考え方,願いに接しながら,自然を愛する心を育んでいく世界がそこにあった。
実施日:平成14年12月12日 | 学年学級:4年A組 |
場所:岡山市立西大寺南小学校視聴覚教室 | 授業者:片岡教諭 |
単元名:すずしくなると−3-1.内山氏と一緒に写真を撮ろう(3時間 第1時) | |
教科の目標:内山氏の植物の見方,考え方,撮影の心構えを例をあげて説明できる。 | |
情報教育の目標:集めた情報を分析し,傾向や規則性を見つける。自分の考えと違う意見があることに気づく。 | |
準備:ディジタルカメラ,フロッピー,カメラ(内山氏所有) |
内山氏の2度目の授業参画。前回,内山氏に語ってもらった内容(太陽の位置を考えて写すこと,植物と同じ目線で,植物の気持ちを考えながら・・・等。)を踏まえ,実技指導を受けながら,校庭の植物をディジタルカメラで撮影する。 | |
この日の最低気温は3.2度。1時間目の授業でもあり,写真撮影には少し寒い中,それでも内山氏にコツを教えてもらえると張り切る児童たち。内山氏は愛用のカメラを,児童たちはディジタルカメラを携えて,撮影に取り掛かった。 | |
「脇を締めて」等,具体的な指導をする内山氏。季節柄,花や緑が少なく寂しい気もするが,冬には冬の表情がある。同じ校庭が,同じ植物が,季節により変化していくことを学習する良い機会となるだろう。 | |
「植物と同じ目線で」という指導通り,地べたに寝転がって花を撮影する児童。 (木の芽をカメラでのぞきながら)「生きているみたい!」等,以前自分たちで撮影した時とはまた違う新たな発見があった様子。 |
4年生 すずしくなると |
図54 内山氏のコンテンツ (ツバキ) |
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図53 私たちのうつした秋 | ||
図52 秋をディジタルカメラで撮影 | ||
図55 「僕が写した秋のヘチマです」 | 図56 「どれにしようかなぁ」 | |
図57 内山氏のコンテンツを見る | ||
図58 内山氏の写真で 作ったカレンダー |
図59 この写真を選んだわけ | 図60 「この説明違ってるよ」(内山氏) |
図61 内山氏のお話 | |
図61 内山氏のお話 | |
図63 「望遠レンズは重そう!」 | 図64 「よく見てごらん」と内山氏 |
図65 内山氏と一緒に校庭へ | 図66 「植物と同じ目線で」 |