4.研究・開発内容




 視覚障害者のIT技術習得のための教育方法の研究・開発として、表1に示す教育目標の設定を行い、以下の3点の研究・開発普及物の作成を行い実践授業を行った。

表1目標とする生徒像の内容
○IT機器を活用し、Word等でアプリケーションを使用して発表できる。
○標準的なWindowsの環境で、基本操作ができる。
○自分の視覚の状況に合わせて、パソコン本体やWindowsの調整ができる。
○予約・カルテシステムを運用できる。
 

(1) IT教育教材の開発

 基礎的IT技術を習得した生徒を育成することを目標とし、IT基礎技術習得のための「指導書」「録音教材」の開発。

表2 目標(アンケート内容兼自学習用録音テープ)
○目標1. 弱視の生徒が、マウスを使用しないでスタートメニューからアプリケーションを起動出来る。 ○目標10. 教諭が用意したワード環境設定用マクロを実行できる。
○目標2. 弱視の生徒が、アプリケーションのメニュー操作をマウスなしで使用できる。 ○目標11. ワードで、ツールバーを消し文書表示領域を広げることが出来る。
 目標3. 弱視の生徒が、自分の見やすいパソコン環境を設定出来る。 ○目標12. ショートカットキーを利用して画面反転表示に切り替えることが出来る。
○目標4. 代表的な40個程のショートカットの中から、その生徒が有効と思える5から10個程度のショートカットを覚える。 ○目標13. Wordの機能を使用して背景を黒くすることが出来る。
○目標5. ワードで文字の大きさ、配置、行数の設定をおこない、見やすい文書を作成することが出来る。  目標14. 全盲の生徒が、標準的なメニュー構成を使用して、パソコンを使用できる。
○目標6. ワードで表をつくることが出来る  目標15. 全盲の生徒が、音声で使用しやすいようにパソコンの設定(マイコンピュータ)
○目標7. ワード中にエクセルの表を入れることが出来る  目標16. 予約が出来る。
○目標8. 文章中に絵や、図を差し込むことが出来る  目標17. カルテに記載が出来る。
○目標9. ワードで、ズーム機能を使用し文字を大きくすることが出来る。  目標18. ツボなどの漢字の入力が出来る。
注意1 ○は録音テープを用意した目標
注意2 目標2は3本に分割

(2) 専門的な指導方法の蓄積

 生徒へのIT技術教育のノウハウの蓄積に加え、全盲、見え方(障害の程度)が個人個人異なる弱視の生徒用パソコンの調整方法の確立。(色、文字の大きさ、画面構成など)

表3 指導書ノウハウの内容
項目 説明
指導書1 スタートメニューと画面のプロパティ(Windows98SE) スタートメニューより画面のプロパティを設定するためのノウハウ集。
指導書2 フォルダオプションの設定(Windows98SE) マウスを使用しないで、マイコンピュータを使用するときに便利な設定方法と、操作方法のノウハウ集。
指導書3 スタートメニューとメモ帳の最大化 アプリケーション起動時に最大化する方法の紹介と、混乱の元となる起動方法(指導してはいけない項目)を紹介するノウハウ集。
指導書4 Word設定の例 視覚障害者がMicroSoft Wordを使用するときに便利とされる設定方法のノウハウ集
指導書5 視覚障害者用ソフトウエア設定の準備 視覚障害者用ソフトウエアを設定する前に、必要なパソコンの整備(ハードディスクのエラーチェック、空き容量の拡大、デフラグによるハードディスクの高速化)について記載した。
指導書6 WindowsXP視覚障害者向けの最適な設定 クラシックスタイルの設定及び、パソコンの処理能力に無用な負担を掛ける機能の取り外し調整方法
指導書7 マウス設定方法 弱視者用のマウスの設定方法
ノウハウ目標1 マウスを使用しないでスタートメニューからアプリケーションソフトを起動する。
ノウハウ目標2その1 マウスを使用しないでアプリケーションのメニューを操作する。アプリケーションの起動方法とダイアログの基本的な操作を説明。
ノウハウ目標2その2 「ファイルを開く」のダイアログに関するノウハウとアプリケーションの起動方法(応用)。
ノウハウ目標2その3 ファイルを開くのリストについてのノウハウ
ノウハウ目標3 代表的なショートカットキー
ノウハウ目標5 きれいな文書作成のノウハウ
ノウハウ目標6 Wordで表を作成する場合のノウハウ
ノウハウ目標7 ワード中にエクセルの表を入れることを説明。
ノウハウ目標8  文章中に絵や、図を差し込むことを説明。
ノウハウ目標9 ズーム機能について説明。
ノウハウ目標12 ショートカットキーを利用して画面反転表示に切り替えることができる。
ノウハウ目標13 Wordの機能を利用して背景を黒くすることができる。
 

(3) 患者予約・電子カルテシステムの開発

 IT教育実践モデルの開発のメインとして、高等部専攻科3年で行われる「臨床実習」で利用できる「教育配慮をした電子カルテ、予約表システム」を開発し、「患者管理」「施術内容の検索」などデータベース操作技能などの「実践的なIT応用技術」を有する生徒の育成。



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