5.結果




(1) 教育目標の設定

 段階づけをすることで、生徒が自己のIT技術力をフィードバックする事ができ、学習意欲の向上につながった。


(2) 指導書・ノウハウ集の効果

 専攻科では、指導内容が明確となり、指導者間での調整もとりやすく、効果的な指導が可能となった。生徒のアンケート結果から生徒全員が10個程度のショートカットを覚え、活用できる様になった。また全ての弱視生徒が、自分の見やすいパソコン環境を設定できる様になった。文書の作成については、文字の大きさの調整・配置・行数の設定が可能となり、見やすい文書の作成ができる様になった。強度の弱視者でマウス未使用者では、標準的なメニュー構成でのパソコン使用、また、音声で使用しやすいパソコンの設定が可能となっている。


(3) 自己学習用録音テープの効果

 録音テープ教材の製作にあたって、IT機器による実習授業は教員がすぐ側にいることを想定し、動作説明や指示内容についての精選をはかった。機器操作に関わる導入部分が完了していれば、生徒自身が自己学習に励み、新たな目標への興味を喚起しているという好感触を、授業後の生徒達の反応から得ている。しかし、新しい項目で初めての機器操作では、途中でつまずいてしまう生徒もあり、自己学習用教材のもつ限界も感じたが、テープを繰り返し再生し、同じ操作を行う事で、スムーズな実習の進行が可能となっているところから、同じ内容の項目を復習する際に活用する教材としての側面も明らかとなった。自宅へ持ち帰り自己学習することで、円滑に次の段階へ進行できるのではないかと考えている。また、実習指導の場面では、複数の生徒から同様の質問を重複して受ける機会が多く、自己学習用録音テープは、きめ細やかな個別対応をも可能にしていると評価している。


(4) 予約・カルテシステムの効果

 ソフトウェア開発にあたっては、免許取得後の就労先における使用を想定し、視覚障害者が単独で使用できることはもちろんのこと(キーボードによる操作性の統一化や操作画面の完全音声化)、マウスを使用する健常者でも使用に耐えうる構成とした。外来患者を対象とした臨床実習授業で、現行の手書きカルテ内容の電子化の実習(個別指導)と、架空の中規模治療院を設定し、ダミーデータを用いた予約業務実習(集団指導)を行った。
 2時間の実習で初めて触れるソフトウェアを使いこなし、その利便性も理解していた生徒がいた反面、キーボード操作など基礎的な技術に迷う生徒もあり、操作技術の到達度は各自のITスキルを反映する結果となった。いずれにせよ、将来の職務内容に直結した実践的な教材を提供できたことは、IT技術習得の新たな動機付けと目標になったと評価できる。またソフトウェアが開発途上のものであったこともあり、集計や検索機能など生徒の関心が注がれたものの試用・評価が受けられなかった部分もあり、実践的検証を継続させていく必要性を感じている。




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