1.プロジェクトの概要




1.1 はじめに

 ロボットを教育に利用するアプローチは既にいくつか存在するが、多くは製品を素材として利用するため、実際の授業での限られた時間内に完結した実験を行うことは困難である。 そこで、情報教育のシナリオを考慮したロボット連携用のアプリケーションを開発し、現場で使える学習環境の実現性を検証する。 さらに、ネットワーク環境と組み合わせることで、ネットワークの概念教育とともに、1体のロボットを複数の学習者で共有することによって教育資源の有効利用にも寄与する。
 ロボット、パソコン(プログラム)、ネットワーク(インターネット、LAN)という要素が連携した環境を用意し、そこでコンピュータリテラシーを初めとする情報教育のためのアプリケーションを開発し、協力学校の授業にて実証実験を行った。

 実習用アプリケーションの内容は、パソコン上でビジュアルインターフェイスによりロボット動作命令を組み合わせてロボットの簡単な制御プログラムを作る。これでロボットをうまくコントロール出来るかを実際のロボットの動きで確認できる。50分程度の授業時間で可能なアプリケーションを想定している。

 机上の学習や、コンピュータの中に閉じた学習の域を越え、現物のロボットを利用することにより、目には見えにくい要素の多い情報教育を、実際にその場で動くものとして、目に見える体験や実習というかたちで提供し、理解を助け、探求心を高め、感動の共有を生み出すという教育効果を期待している。 また、エンタテイメント性にも優れた側面からは、学習への興味喚起や動機付けという副次的効果も期待できる。

 ITの偉大な成果でもあるロボットを利用して、もっと分かりやすく楽しい実習授業を実現してみようという試みが、本プロジェクトの目的である。
 昔の子供達(我々=大人)がSF小説で夢見て感動したロボットが、現実の商品として存在する今日、その何倍もの感動ある授業を実現することを目指している。

1.2 新学習指導要領との関係(対象となる校種・学年・教科等)

 情報教育での実験の必要性は、学習指導要領の「内容」及び「内容の取り扱い」で以下のようにうたわれている。
高等学校の新教科「情報」の科目「情報B」では、「内容」において、「情報通信と計測・制御の仕組み及び社会におけるそれらの技術の活用について理解される。」となっており、また、「内容の取り扱い」では、「動作を確認できるような学習を取り入れるようにする。」となっている。
 ロボットを利用して、実際の動きを確認しながら授業を行うことにより、これらの学習内容を効果的に実習できる教材とした。 また、中学校の「技術・家庭」では、「内容」において、「コンピュータを用いて、簡単な計測・制御ができること。」となっている。 これらを考慮して、モーターやセンサーを対象としたロボット制御も実現した。

 このように、中学校、高等学校の新しい情報教育での活用、物理実験への応用を想定した。特に、今回のアプリケーションと学習環境は、主に高等学校の新教科「情報」の実習用としての活用を想定した。



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