教材設計書・プロトタイプにより先生方によるレビューを実施し、その結果を教材に反映した。
実践授業を受講した生徒および実践授業を実施された先生方から、実践授業および本プロジェクトで開発した教材に対する評価を得るために、次の内容に関するアンケート調査を行った。
授業について | Q1 授業を受けた感想(楽しかったか) |
Q2 授業内容の理解度 | |
Q3 課題の達成度 | |
Q4 ロボットを制御することの難しさ(実習前) | |
Q5 ロボットを制御することの難しさ(実習後) | |
Q6 フローチャートでプログラムを作成することの抵抗感 | |
Q7 実習時間の長さ | |
Q8 授業の中で一番興味を持ったこと | |
Q9 ロボットを利用した授業への関心 | |
Q10他の教科への発展性 | |
教材について | Q11課題の難易度 |
Q12他にやってみたい課題 | |
Q13教材の操作性 | |
Q14教材の改良点 | |
未来について | Q15将来の仕事への夢 |
授業について | Q1 本時の目標 |
Q2 本時の目標の達成度 | |
Q3 ロボットを利用した授業の学習効果 | |
Q4 今後の授業でのロボット活用の可能性 | |
Q5 ロボットを使用した授業をする場合の準備作業 | |
Q6 ロボットを使用した授業をする場合の事前授業 | |
Q7 ロボットを使用した授業をする場合の配慮点 | |
Q8 ロボットを使用した授業をする場合の問題点 | |
Q9 学校でのロボット活用の発展性 | |
生徒について | Q10生徒の興味の度合い |
Q11生徒の学習への主体性 | |
Q12生徒の理解度 | |
Q13授業で観察された問題点 | |
教材について | Q14課題の難易度 |
Q15他にやってみたい課題 | |
Q16教材の操作性 | |
Q17教材の改良点 |
レビュー結果を反映し、教材の改良を行った。主な改良点は以下の通りである。
- 難易度レベルに関する課題内容の見直しを実施。(教材設計書のレビュー)
- 選択構造のフローチャートを作成する前に、センサーに関する簡単な説明を行うよう授業の流れを変更し、説明画面を追加。(教材設計書のレビュー)
- モーションパーツの表現の見直しを実施。(プロトタイプのレビュー)
- 実習時に課題を分かりやすくするために、ロボット動作フィールドのスタートとゴールに色違いのタイルを準備。(実践授業準備段階レビュー)
- 実習環境に合わせてロボットの動きを補正するための機能を追加。(実践授業準備段階レビュー)
アンケート集計数は以下の通りである。
- 中学校:先生1名、生徒208名(男子89名,女子99名,未記入20名)
- 高 校:先生4名、生徒27名(男子15名,女子11名,未記入1名)
アンケート集計結果と評価分析を次ページ以降に示す。
Q1授業を受けた感想(楽しかったか)
下のグラフが示す通り、中学、高校ともに、ほとんどの生徒が楽しい授業だったという感想を持っていた。
「とても楽しかった」「楽しかった」と感じた理由は、中学、高校ともに1番目は「ロボット(AIBO)に対する興味関心」、2番目は「ロボット(AIBO)を制御することへの関心」であった。その他に「初めての経験」「普段と違う授業」「アルゴリズムを考える楽しさ」「友達が作ったプログラムを見る楽しさ」「課題を完成できた達成感」、実物(ロボット)を使うことにより画面上で見るよりよく理解できたといった、「分かりやすさ」を理由にあげている生徒もいた。
「ふつう」「あまり楽しくなかった」「全く楽しくなかった」と感じた主な理由としては、「授業内容の難しさ」「自分で作成したプログラムをロボットで実行できなかったこと」などがあげられていた。
Q2授業内容の理解度
下のグラフが示す通り、中学では約7割、高校では約9割の生徒が理解できたと回答している。
中学、高校ともに男子生徒の方が理解できた割合が多い傾向がある。
「少し理解できた」と回答した生徒が、「すごいと思って見ているだけで楽しかった。」と答え、AIBOが声に反応するしくみに興味を抱いているなど、理解度だけでは計れない学習効果も見られた。
Q3課題の達成度
下のグラフが示す通り、中学では半数以上の生徒が、高校では8割以上の生徒が「全部できた」または「ほとんどできた」と回答している。中学、高校ともに、男子生徒のほうが「全部できた」「ほとんどできた」と回答した割合が多くなっている。
Q4ロボットを制御することの難しさ(実習前)
下のグラフが示す通り、実習前には中学では約8割、高校では約6割の生徒が、「とても難しいだろうと思った」「難しいかもしれないと思った」と回答しており、ロボットを動かすことは難しいとの予想が分かる。
Q5ロボットを制御することの難しさ(実習後)
下のグラフが示す通り、実習後には「とても難しい」と回答した生徒の割合はわずかに減少し、「簡単だった」と回答した生徒の割合はわずかに増加している。しかし、難しさを感じた生徒が中学では約7割、高校では約6割いたことになる。
Q6フローチャートでプログラムを作成することの抵抗感
下のグラフが示す通り、中学では約7割、高校では約9割の生徒が「何の抵抗もない」または「はじめは抵抗があったが慣れた」と回答しており、アルゴリズムを考えるための手段としてフローチャートを利用することは効果的であると判断できる。
Q7実習時間の長さ
ロボットの台数や課題数にもよりますが、1〜2時限の授業での実施が妥当であると予想される。
中学校では「短かった」と回答した生徒の約8割が、1時間〜2時間の授業を望んでいた。
1時限(50分)の授業を実施した高校では、「短かった」と回答した生徒は2時間を希望していた。
2時限(50分×2)連続で実施した高校では、短かったと回答した生徒の中には3時間(18%)、1日(18%)と回答した生徒がいましたが、6割近くの生徒からは具体的な数値の回答は得られなかった。
Q8授業の中で一番興味を持ったこと
下のグラフが示す通り、中学、高校ともに、1番目が「AIBO自身」2番目は「AIBOを制御したこと」、3番目は「センサー機能」であった。
「センサー機能」に興味を持った生徒には、「計測と制御の仕組み」の学習への動機付けとなった。
「AIBO自身」に対する興味では、AIBOの外観、動き、内部構造など、さまざまな点に興味を抱いていた。「AIBOを制御したこと」では、自分で作成した命令の通りにAIBOが動いたこと、コンピュータでロボットを動かせることに感動したようすがうかがえた。「センサー機能」では、ロボットがセンサーにより障害物を認識したり、頭や背中を押されたことを判断したり、音声を認識できることに驚きを感じているようすがうかがえた。
Q9ロボットを利用した授業への関心
「また今回のようなロボットを利用した授業を受けたいですか?」という質問に対して、中学、高校ともに約9割の生徒が「ぜひ受けたい」「受けてもよい」と回答しており、ロボットを利用した授業が生徒たちに歓迎されていると判断できる。
Q10他の教科への発展性
全般的にさまざまな教科でのロボット利用を思い描いており、その科目を選んだ理由をみると、ロボットを使った授業が楽しかったこと、またロボットの特徴が生徒によく伝わり、興味関心が深まったことがうかがえた。
Q11課題の難易度
下のグラフが示す通り、「ちょうどよかった」と回答した生徒が、中学、高校ともに5割り以上であり、「ちょっと難しかった」と回答した生徒の約6割が「理解できた」と回答していることから、課題の難易度は妥当であったと判断できる。
Q12他にやってみたい課題
中学、高校ともに具体的な課題イメージまでは想像できないという生徒がほとんどであった。
回答してくれた生徒の中では、実習ではやらなかった動作や、別のロボットを利用した課題をやりたいという意見が多くあった。
Q13教材の操作性
下のグラフが示す通り、中学、高校ともに、ほとんどの生徒にとって問題なく使用できる教材であったと判断できる。
Q14教材の改良点
「ない」「無回答」と回答した生徒が、中学では約7割、高校では約9割であった。中には「最高!」「完璧」「全くなし」「こんな授業をもっと増やしてほしかった…」など非常に気に入っている様子がうかがえる回答も多く見られた。
改良点を回答してくれた生徒の意見には、AIBOの動きに対する要望や動きのバリエーションの増加があった。また、作ったプログラムをAIBOに入力する前にどんな風に動くかCGか何かで再現できたらよかったという意見があった。今後の検討課題とする。
Q15将来の仕事への夢
中学、高校とも3割の生徒が、将来、ロボットやコンピュータなどの情報技術に関わる仕事をやってみたいと回答している。今回のように最新技術を教育現場に紹介し、生徒たちが実際に触れ、学ぶ機会を提供していくことが大切だと考えられる。
Q1/Q2本時の目標と達成度
下表の通り、「達成された」「ある程度達成された」との評価を得た。
本時の目標 | 達成度 | |
中学 |
|
ある程度達成 された |
高校 | アルゴリズム・フローチャートに慣れる(基本習得) | 達成された |
「自ら学び、自ら解決する」という態度の育成 | 達成された | |
|
ある程度達成 された |
|
フローチャートを作成し、構造を理解し、実際に動くかを体験する。 | ある程度達成 された |
Q3ロボットを利用した授業の学習効果
全員の先生からロボットを利用した授業は学習効果ありの回答を得た。
Q4今後の授業でのロボット活用の可能性
授業時数の確保の面で課題はあるが、実際にロボットが動くことが生徒の興味関心を大いにひき、授業に対する生徒の食いつき方も違うことは明らかであるため、「できればやりたい」「今後検討したいと」の回答を得た。
Q5ロボットを使用した授業をする場合の準備作業
事前に、板書や説明の時間を短縮するためのプレゼン資料、フローチャート理解のための板書用パーツ、補助プリントを準備した。
Q6ロボットを使用した授業をする場合の事前授業
ロボットを使用した授業をする場合の事前授業の必要性については、「特に必要を感じなかった」もあったが、「時間の短縮、ロボットへの期待を高めるために、ロボットなしで出来ることは全てやっておく。」「生徒のフローチャートに対する抵抗をなくしておく。」という意見があった。
Q7ロボットを使用した授業をする場合の配慮点
ロボットを使用した授業をする場合に、個人差を考えた時間の確保、人数に応じたロボット台数、あきのこない工夫、ロボットに注目が集まりすぎることなどに配慮する必要があるという回答を得た。
Q8ロボットを使用した授業をする場合の問題点
ロボットを使用した授業をする場合に、準備時間の確保、ロボットの台数、PCの性能面での問題点があるという回答を得た。
Q9学校でのロボット活用の発展性
回答なし。
Q10生徒の興味の度合い
今回の授業に対する生徒の興味は高かったという回答を得た。
Q11生徒の学習への主体性
今回の授業で、生徒が積極的に学習に取り組んでいたとの感想を得た。
Q12生徒の理解度
今回の授業内容を生徒が理解していたとの回答を得た。
Q13授業で観察された問題点
今回の授業で観察された問題点として、学習の進度、無限ループの抜け方、条件判断をうまく理解できない生徒、ついてこれない生徒の対応などの回答を得た。今後の検討課題とする。
Q14課題の難易度
実習時間と課題数との兼ね合いで、「ちょっと難しかった」との回答もあったが、概ね課題の難易度は妥当であったとの回答を得た。
Q15他にやってみたい課題
AIBO以外の低価格のロボットでの授業をやってみたいという意見があった。また、数列などの数学分野での利用の可能性があるという意見もあった。
Q16教材の操作性
教材の操作性に問題はなかったとの回答を得た。
Q17教材の改良点
ロボット(AIBO)の動きに対する要望や、課題数の増加、変数機能の追加などがあげられた。今後の検討課題とする。