5.実践授業等の実施内容




5.2 つくば市並木小学校の実践

5.2.1実践授業のIT環境

(1)使用機種 コンピュータ室 DOS/V機      42台
           メディアルーム 東芝リブレット     9台
                     DOS/V機       9台
                     ワイヤレスLANアクセスポイント 5台
                     ワイヤレスLAN用ノートパソコン 7台
         低学年棟図書室  DOS/V機   8台
               各教室  DOS/V機  各2台
               職員室  DOS/V機   4台
(2)周辺機器 モバイル機器 シャープザウルス  10台
           電子ボード スマートボード     3台
           プロジェクター              3台
           テレビ会議システム          1台
           デジタルカメラ ソニーMAVIKA    17台
                    シャープインターネットビューカム 1台
                     ソニーデジタルビデオ       1台
            スキャナ   エプソンGT-7000    2台
            プリンタ   エプソンPM670他  15台 
(3)稼働環境  全コンピュータLAN接続
          メディアルームの東芝リブレットは無線LAN
           インターネットには,光ケーブルを使って専用線接続
(4)利用ソフト シャープスタディノート,インターネットエクスプローラ6.02
           ひらがなナビ(富士通ラーニングメディア)
(5)利用コンテンツ 教育用画像素材集−環境指標生物(CECホームページ)


5.2.2 実践授業の内容

(1)実践学年

第6学年


(2)教科

総合的な学習の時間


(3)単元名

「夢」かなえよう 〜卒業大研究〜


(4)指導目標

 自分の思いや願いを達成するために,様々な情報機器を活用して必要な情報を集め,より良い解決方法を見つけ出し,試行錯誤をくり返しながら,ねばり強く学習活動に取り組むことができる。
 更に,発表や話し合い活動での友達とのかかわり合いを通して,お互いの考えを伝え,確かめ合い,深め合うことができる。


(5)IT活用のねらい

 児童一人ひとりのニーズに応えるため,モバイル機器や無線LANノートパソコンなどの機動性に優れた情報機器を活用する。これにより,時と場所にとらわれずに必要な情報を集め,加工し,発信することができるようにする。
 ITを活用した学級・学年・学校の枠を越えた交流学習の場を学習活動に位置づけることにより,他者とより良くかかわり合う経験を通して,「あたたかくかかわり合っていく態度(学んでいく態度)」や最後まであきらめずに「自らの力で問題を解決していく力(学んでいく力)」を育てる。


(6)単元の流れ[105時間扱い]



(7)子ども一人ひとりのニーズに応えるための複線型学習過程

 一人ひとりの問題解決能力や各学習テーマの難易度,それぞれのかなえたい思いや願いなど,子どもたちのニーズに対応するためにインターネットや校内ネットワークを活用した,学級・学年・学校の枠を越えた交流学習の場を学習活動の中に位置づける。更に,学習過程の中に現地調査をするための「現地調査コース」とコンピュータや図書資料を活用して調べ,まとめる「調査・製作コース」,そして,発表及び提案をしてアドバイスを受けるための「発表・アドバイスコース」の3つの学習コースを位置づけ,「体験を重視した調査活動」と「かかわり合いを重視した話し合い・発表活動」の両活動を繰り返し活動していった。
 子どもたちは,次時の総合的な学習の時間までに,どの学習ゾーンで活動を行うかを決め,活動カードに自分の名前を記入する。その活動カードに記入された子どもたちの人数や要望に合わせて,必要な学習ゾーンや活動場所を設け,担任教師がそれぞれの学習ゾーンを分担し,それぞれ個に応じた指導及び支援を行っていった。
 子どもたちは,自分のペースでゆとりをもちながら,じっくりと学習活動に取り組んでいくことができるようになった。そして,常にかかわり合いながら学習を進め,より多くの解決方法を知り,かなえたい思いや願いを達成するために,ねばり強く,生き生きと学習活動に取り組んでいった。


(8)体験を重視した様々な方法での調査活動

【資料1 モバイル機器を活用した調査活動】

 調査活動では,「調べて,まとめて,終わり」と言った単なる「お調べ学習」にならいよう,現地での体験を重視した調査活動を重視した。さらに,実際の調査活動では,子どもたちが限られた時間内で,できるだけ広い範囲の場所で調査活動を行うことができるようにするために,携帯に便利なモバイル機器をメモとして活用した(資料1)。子どもたちは,現地で収集した動植物などを,その場でカメラ機能を活用して撮影したり,感触や匂いなどをテキストに記録したりした。また,その場でインターネット検索をして必要な情報を収集していきメール機能を活用してリアルタイムに情報を発信していった。
 例えば,つくば市内を流れる「花室川をきれいにしたい」とういう願いで,調査活動に取り組んでいる研究グループでは,有効に時間を活用して,たくさんの情報を集めようと,調査場所を上流班,中流班,下流班と分担した。そして,それぞれがモバイル機器を手に持ち,一斉に調査場所に散らばり,情報を収集していった。さらに,本校のコンピュータ室で待機しているグループのメンバーに,各調査班が調査場所で記録したメモや写真などの情報をメールでリアルタイムに送り(資料2),その情報を活用して自分たちの研究をスタディノートにまとめていった(資料3)。しかし,まとめていく過程で,送られてきた情報の他に,調査場所での詳しい情報が必要な場合が出てくる。そんな場合には,コンピュータ室から返信のメールを各調査班に送り,再調査を依頼するなどして,自分たちの研究に必要な情報をさらに細かく収集していった。
 このように,モバイル機器を調査活動で活用することによって,子どもたちは,自分の学習に必要な情報を限られた時間内で効率よく,しかも広範囲にわたって収集することができた。
 その他にも,デジタルカメラや水質調査キット,虫かごや網,バケツなどを片手に,子どもたちは現地に何度も足を運んだ。生きものを捕まえたり,池の水をすくい水質調査を行ったりと,誰もが楽しそうに,しかも目を輝かせながら,調査活動を行っていた。

【資料2 調査場所から送られたメール】 【資料3 送られた情報をもとにまとめたノート】

(9)教育用コンテンツを活用しての調べ学習

 子どもたちが環境学習での調べ学習で情報を収集する手段の一つに,インターネット検索がある。しかし,環境に関する学習のためのWebページは少なく,インターネット検索に慣れていない子どもにとっては,なかなか目的の情報を得るためのWebページにたどりつくまでに,かなりの時間を費やしてしまう。そこで,便利なのが教育用コンテンツやリンク集である。子どもたちは, 採取した動植物を教育用画像素材集(CECホームページ)やデジタル図鑑で調べたり(資料4),そのコンテンツで得た情報をもとに更にポイントを絞って調査活動に取り組んだりした(資料5)。

【資料4 教育用コンテンツのWebページ】 【資料5 コンテンツを活用して
まとめた児童のノート】

(10)電子メールとテレビ会議システムを併用しての共同学習

 子どもたちは,それぞれの思いや願いを達成するために,観察や実験,調査,製作などの活動を進めていった。そして,調べたことをまとめ,発表し,友達からアドバイス受ける活動を繰り返し行うことにより,子どもたちは学習内容を深めていった。こうした発表・話し合い活動を更に充実させるために,テレビ会議システムを導入して,他校の同じ課題を持つ児童が参加しての話し合い活動を定期的に設けた(資料6)。
 話し合い活動では,より具体的にアドバイスができるように,事前にアドバイスしてほしいことをスタディノートにまとめ,データベースや電子掲示板に登録する。これにより,限られた時間内で行う話し合い活動でも,ポイントを押さえた発表及びアドバイスを行うことができる。また,聞き手も必要に応じて事前に資料を準備して,話し合いに参加することができるため,深まりのある話し合い活動を行うことができた(資料7)。

【資料6 テレビ会議で他校の児童が
参加しての話し合い活動】
【資料7 話し合いに向けての教えてメール】

 テレビ会議システムを活用した他校の児童が参加しての話し合い活動の後,話し合った内容やアドバイスなどの情報を更に詳しく相手に伝えるため,メールで情報や意見を交換し合い,お互いの学習を深めていった(資料8)。また,相手の必要とする情報や内容に応じて,動画を活用してのビデオメールを送るなど,目的に応じて情報を加工し,発信するなどの工夫が見られた。


【資料8 他校からのアドバイス】

  このように,お互いの学習内容を共有し合いながら学習を進めていくことによって,相手を意識した学習が展開される。
   更に,子どもたちの「調べてみたい」,「やってみたい」という,切実な思いや願いを大切にすることによって,その問題解決に立ちはだかった「カベ」に,突き当たったとき,子どもたちの心の中に,自分の本当に解決すべき問題が,成立した。その結果,子どもたちは困難な問題にも様々な方法を試しながら意欲的に取り組んでいくようになった。      




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