5.実践授業等の実施内容




5.5 つくば市竹園東小学校の実践

(1)実践学年   小学校5年生

(2)教科     総合的な学習の時間

(3)テーマ 私たちのふるさとつくばをよりよい街に

(4)テーマ設定の理由

 第5学年児童89名は、昨年度、第4学年における「ふれあいタイム」の時間に、テーマ学習「我ら竹園クリーンセンター」の中で、学校周辺の身近な環境調査を行った。そして、環境問題に関して、課題を持ち、友達や教師、専門家、ネットワークを通して他の学校の児童と関わりながら、課題を解決していった。
 しかし、まだ完全に解決できず、「更に身近な環境問題について課題を解決したい」と考えている児童もいれば、「違った方面から地域の問題について課題を解決してみたい」と考えている児童もいる。
 そこで、4年生の時に学習した「我ら竹園クリーンセンター」を更に広げ、環境、国際、福祉、またはその他の方面から、自分達の住んでいるつくばについて、課題解決学習をしていくことで、21世紀のつくば、そして、日本、世界を担っていく子供に育てたいと考え、本テーマを設定した。


(5)身に着けたい資質や能力


(6)活動の流れ (70時間扱い)

6月、 7月 課題設定、計画づくり (10時間扱い)
9月、10月 調査活動(PDA、スタディノート、画像コンテンツの活用)
インターネット掲示板、テレビ会議を活用しての他校との交流(25時間扱い)
11月  中間まとめ、中間発表会    (10時間扱い)
12月、 1月  再調査(PDA、スタディノート、画像コンテンツの活用)
インターネット掲示板、テレビ会議を活用しての他校との交流(15時間扱い)
2月  最終まとめ、最終発表会    (10時間扱い)


(7)子ども達が設定したテーマと活動内容 (環境分野)

近隣公園の池の水をきれいに
・・公園の水質調査をし、その水をきれいにする方法を考え、実際にきれいにする。  
花室川の水をきれいに
・・花室川の水質調査をし、水をきれいにする方法を考え、実際にきれいにする。
近隣公園を生き物の住みやすい公園に(昆虫、水生生物)
・・公園の生き物調査をし、生き物の住みやすい公園にするためには、どうしたらよいか考え、実際に実行する。
花室川を生き物の住みやすい川に
・・花室川の生き物調査をし、生き物の住みやすい公園にするためには、どうしたらよいか考え、実際に行動する。
ビオトープをつくり竹園東小を生き物でいっぱいの学校に(メダカ、水生生物、昆虫)
・・ビオトープづくりを通して、生き物が住みやすくするためには、どうしたらよいか考え実行する。
酸性雨からつくばを守ろう
・・酸性雨の降るしくみを調べ、実際に酸性雨を防ぐ方法を考え、実行する。
たい肥をつくって植物を調べよう
・・自分でたい肥を作って、植物を育てる。その方法を広げる。

(8)モバイルを活用した実践結果

1. PDAはデジカメ+コンピュータ

 環境調査などを行う場合、今までは、デジタルカメラを活用し、生き物などを撮影していた。そして、その画像を学校に持ち帰り、パソコンに入れて、スタディノートを活用してまとめていた。ところが、画像をいちいちメディアからパソコンに取り出し、それをスタディノートに入れるには手間がかかった。また、学校のコンピュータの数も限られており使う時間も限られている。そのため、そういった時間がなんとか省けないだろうかと考えていた。
 そこで、PDAを活用することで、それらの問題が解決できないだろうかと考えた。
 まず、PDAのデジタルカメラ機能を活用し、環境調査結果を学校の自分のアドレスに送る。そうすることによって、デジタルカメラのメディアから、コンピュータに入れる手間を省けないだろうか。そして、子どもたちは、自分のアドレスに届いた画像をそのまままとめに生かせないだろうか。そう考えた。
 実際に環境調査活動に、PDAの活用を試みた。はじめは、モバイル機の使い方にとまどっているようであったが、1時間も使うことによって、みんな慣れてきた。子どもたちは、みつけた生き物の写真をとり、どんどんその画像を学校の自分のアドレスに送った。簡単な操作で送れるので、慣れてしまえば、普通のデジタルカメラと同じように扱うことができた。
 次に学校でまとめをするときに、自分のアドレスに送られてきた画像を、そのまままとめに生かした。今までは、いちいちフロッピーを取り出し、コンピュータのドライブに入れ、それから、スタディノートを立ち上げ、画像を入れて、それからまとめていたのが、スタディノートを立ち上げると、すぐにまとめができるようになった。そのことにより、まとめに大幅な時間短縮を実現することができた。また、写真をコンピュータに取り込んで入れるなどわずらわしい作業がなくなったので、子どもたちもまとめがしやすかったようである。
 今まで2時間かかっていた作業が、約30分弱で終わるようになった。わずらわしい作業がない分、子どもたちはまとめに専念するようになった。

   
PDAを活用して環境調査結果の撮影 PDAを活用して学校に送ったもの
あとはまとめを入れるだけで完成。

犬マークのボタンをクリックするとヤゴの写真がでてくる。

   

PDAを活用して学校に送ったものに、まとめ他の学校からの情報を入れたものこれらのまとめを電子掲示板に載せることにより他の学校と情報も交換できた。



2. PDAはぼくたちのメモ帳

 川や池の水質を、PDAを使って継続的に記録をとっていくことで、水質の変化、移り変わりについて気づくことができた。また、気がついたことやデータなどを、PDAについているMPEG映像を活用し、音声などでメモしている姿も見られた。
 子どもたちは、PDAを紙に気がついたことを鉛筆でメモするのと同じ感覚で、画像や音声を取り込みメモ代わりに使っていた。気がついたことをメモする習慣をつけることで、細かなところにも目を向けるようになってきた。また、まとめのとき、これらのデジタルメモを見直すことによって、今までまとめのときに、見逃しがちであった細かな気づきも、見逃さないでまとめられるようになってきた。そして、これらのメモを見直すことによって、自分たちの学習の歩みを振り返り、そのことをもとに評価することにも役立てることができた。

   
デジタルメモをもとにまとめたもの 水質浄化システムづくり、気づいたことは
   
   
PDAでデジタルメモ PDAのデジタルメモを見ながら
ふりかえったこと


3. PDAでインターネット

 環境調査を行うとき、いつも感じていたのは、「屋外でも子どもたちが分からないことがすぐに調べられればもっと学習が主体的になり、もっと深めることができる」ということである。
 たとえば、学校内だと分からないことがあると、子どもたちは、図書室で本を使って調べたり、コンピュータを活用してインターネットで調べたりできる。外に出るとき、図鑑などを持って出ることは可能だが、何とかコンピュータを外に持っていき、分からないときにすぐにインターネットを活用して調べられないだろうか。そうすることで、もっとより主体的な学びができると考えた。
 そこで、コンピュータは持っていくことも可能であるが、不便でもある。そこで、PDAの活用を考えた。PDAであれば、ポケットなどにも入り、子どもたちが持っていくのにも不便ではないということだ。
 実際に環境調査に、PDAを持っていき、分からないことなどを、インターネットに接続し調べる活動も取り入れた。生き物を見つけても、それが何の生き物か分からず、あとで学校に帰ってインターネットなどで調べる方法などもあるが、それだと、そこで思考がとぎれてしまう。時間が経ってから調べるために、調べたときのことがあやふやになってしまったり、「調べたい」という意欲が半減していたりするなども見られた。ところが、川で生き物を見つけて、分からないときにその場でPDAを活用し、インターネットに接続し調べることにより、その場で疑問が解決し、子どもは更なる意欲を持ち調査を行うようになった。また、このときWEB上の多数の情報の中から必要な情報を選ぶのに、それだけで時間がかかってしまうおそれもあるが、画像コンテンツを活用することによって、あまり無駄な時間をかけずに、疑問を解決することができた。コンテンツは、CEC教育用画像素材集を活用したが、PDAと教育用画像素材集を活用することにより、その場ですぐに子どもたちの疑問を解決することができ、更なる課題を持つこともでき、より主体的な学習ができた。そして、今までだと、環境調査をするときは、環境調査。話し合いは教室で話し合うと、分断されていたのが、PDAとインターネット、画像コンテンツを活用することにより、その場で問題解決も可能になり、自然とその場でPDAを囲んで話し合いをする姿も見られた。子どもたちにとっては、情報が新鮮なうちに話し合いができ、教室で話し合いをするよりも、活発に意見が出るようになった。

   
PDAを囲み意見を出し合う姿 PDAを活用し分からないことを
調べている姿

PDAと教育用画像素材集を活用して解決できた例
(項目 身近な昆虫・動物や植物と自然環境)
見つけたトンボが何のトンボだったか
見つけた魚が本当にヨシノボリなのか
(項目 環境指標となる生き物)
見つけたエビが本当にエビモだったのか
オオカナダモについての詳細
タガメを見つけ、そこからこの環境はきれいな環境なのかということ

4. PDAとメールの活用

 PDAとインターネット、教育用画像素材集を活用しても分からないときは、すぐにメールにて、専門家に調べ方や考え方のヒントを教えてもらえるようにした。メールを活用することにより、調べていて困ったとき、専門家にヒントをもらうことにより、子どもたちの学習を助けることができた。

私たちは、今ビオトープに生き物を入れようとしているのですが、どの生き物を入れてよくて、どの生き物を入れてはいけないのか分からなくなってしまいました。もう一度教えてください。

子どもたちから専門家へのメール

ビオトープに入れていいものといけないものについて入れていいものは、竹園東小の近くに生えている水辺の植物です。学校の周りに昔から住んでいる生き物が喜ぶのは昔から学校の周りの田や湿地、ため池に生えている植物です。ただし、外国からきたもの(外来種)はダメです。また、園芸種もダメです。入れていけないものは、自分で歩いたり飛んだりして来れる生き物です。

専門家からのメール

 子どもたちは、ビオトープにどんな生き物を入れてよくて、どんな生き物がだめなのか分からなくなっていたところに、専門家からすぐにアドバイスをいただくことによって、活動が止まることなく進めることができた。




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