1 実践のタイトル 小学校第4学年・理科・「季節と生き物(冬)」
2 学習計画
ツルレイシなどを育てたり,身近な動物を探したりして,季節ごとの植物の成長や動物の活動を調べ,それらの成長や活動と季節のかかわりについて考えをもつことができる。
児童は,今までに単元「季節と生き物」の春,夏,秋の学習をしており,学校林や農園,ビオトープでネイチャーゲームなどを行ったり,特定の動植物を継続的に観察するなど意欲的に自然に親しんできた。そして,気温などの自然条件の変化と動植物の成長や活動に関係があることなどに気づいてきている。また,コンピュータやデジタルカメラなどのデジタル機器の活用では,積極的に機器に触れ楽しみながら取り組んでおり,発見したことを表現したり,他に伝える一手段として意欲的に活用する姿が見られる。今回の「季節と生き物(冬)」では,気温がさらに低くなる冬の動植物のようすを調べ,冬の特徴を捉える導入の段階として,観察の視点を明確にしたり,新たな発見の時間としたい。また,PDAなどのモバイル機器を活用し,自然観察の森のレンジャーとの交信を行う。さらに,記録をその場で電子掲示板などに送信し,後のまとめの段階で有効活用できるようにしていく。
- モバイル操作の仕方を学習する。(デジカメの使い方,交信の仕方等3時間)
- 事前に児童から榎本レンジャーにザウルスでグループ紹介や学習内容などをメールで送付しておく。8グループ(1グループ4人の児童で編成)。
- 調査観察した動植物の疑問点などをモバイル通信により,榎本レンジャとメールのやり取りをする。ある程度質問内容などをグループ内で吟味させながらやり取りをさせる。
- 撮影した写真や観察記録などを本校のスタディーノートの掲示板に送付し,次の学習に生かせるようにしておく。
学習活動 | 学習 形態 |
教師の支援(◎評価) | |
1 学習課題の把握
2 グループごとにフィールドワークを行う。 ・森,畑,ビオトープなどの動植物の観察 ・今までの観察との比較 ・新たな発見,不思議 落葉,実が落ちている 畑のヘチマ 冬芽(春への準備) 朽ち木の中の小動物 ビオトープの動植物 ・モバイルを活用して自然観察の森のレンジャーさんと交信 ・ 観察記録(画像など)を電子掲示板に送る。 3 情報交換,他のグループとの交流 ・ 観察結果,新たな発見の共有 ・ 再度,フィールドワークへ ・ 今日のまとめ 4 次時の学習を確認する |
一 斉 グループ 一 斉 グループ |
・周りの様子を一見させ,秋の様子と変化している点に着目させる。 ・自然の豊かさやおもしろさを知らせるとともに,それらを調べようとする気持ちを喚起させたい。 ・今まで継続して観察してきた動植物の様子や児童の新たな発見や気づきを五感で感じとらせるよう助言する。 ・児童の気づきを大切に取り上げ,意欲や自信を膨らませる。 ◎意欲的に観察を行っているか。 (観察,ワークシート) ・不思議に思うことや質問をグループ内で取り上げ,メールでレンジャーと交信を行う。 ・デジカメでの撮影は,大きさが判断できるものや見る人がわかりやすいように画像にメモを入れさせる。 ・自由に他のグループと交流し合い,それぞれの気づきを共有させる。 ・まとめや交流であがった内容や質問等をT2 がレンジャーに送付し,助言や評価を頂き,児童へ伝える。 ・画像や話し合いだけでなく,その場に行って実物の確認もさせたい。 ◎冬の動植物の様子の変化や不思議さに気づくことができる。 (発言,ワークシート,観察) |
3 児童の様子
授業当日は雪が残る中行われた。レジャーイスと黒板を持ち出して,わくわくランド(学校観察林)の中で,4年2組の児童が理科『季節と生き物(冬)1』の学習を行った。本時は,今まで観察してきた森や畑,池の動植物がどのように変化してきたかを寒くなってきた季節と関係付けながら捉えていくことがねらいである。導入では,教師からの話と自然観察の森の榎本レンジャーからあらかじめ送付しておいたグループ紹介に対する返事のメールを読むことから始まった。榎本レンジャーの挨拶や今日の学習を楽しみにしていること,そして励ましの言葉に児童のさらなる意欲の高まりが伝わってきた。また,本時ではシャープの山田さんが機器操作の応援にかけつけて下さった。
早速,児童達はさまざまな動植物の観察にはいった。
←朽木の中で過ごす幼虫を発見。 早速,デジカメで撮影し, 榎本レンジャーにメールで報告。 |
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←手のひらに載せて撮影。 手と比較することで大きさが よく伝わるようにと子ども達も工夫。 |
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←授業の半分を過ぎたところで, ひとまずみんなの発見交流会。 自分たちの気付きを発表した後,自由に交流。 「こんなの見つけたぞ!」 モバイルの画像や榎本レンジャーのメールを 見せ合いながら児童も少し得意げであった。 この後,実際に見つけたところに友達を 案内したり,新たな観察へと児童達は 思い思いの場所へ飛び出していった。 |
【通信記録の一部】
児童: 「このキノコは何て言う名前ですか。7班」
レンジャー:「どこから生えていましたか?地面から?枯れ木から?枯れ木だったら木の種類は?大きさや色,形,生え方,(一本ずつか?たばになっているか?)等を観察しておくと後で図鑑で調べる時に役に立ちます。」
児童: 「この虫は何て言うのですか?オレンジもいました。木の名前はわかりません。」
レンジャー:「どんなところにいたのかな?一匹だけかな?おそらく冬眠していたのだと思います。さて写真だけでは分かりずらいので,もう少し虫の特徴を教えてください。大きさ(何mmくらいか?)羽はあるのか?触覚や足の長さ,形などもう少し詳しくお願いします。」
児童: 「?の虫のことですが,形はマンゴーみたいです。大きさは2ミリくらいです。足はみじかいです。」
【榎本レンジャーから授業が終わってのメール】
「わくわくランドの冬を探る活動,どうもごくろうさまでした。10時30分から約2時間パソコンの前でみんなのメールに対応しましたが,合計23通のメールがきました。今回の皆さんからの質問で多かったのは,木の実,キノコ,朽木の中で冬眠中の生き物などでした。その中で,今回,面白いと思ったのは,雪の上に残っていた(たぶん)ノウサギの足跡を見つけてくれた班があったことと,食べられるキノコを見つけた班があったことです。今回の活動はこれで終わりになりますが,疑問に思ったことは図書室の本で調べてください,どうしても分からない時は,また,自然観察の森まで質問してください。それでは,また,森であいましょう。」
4 実践を終えて
- 今回はじめてPDAを使用した子ども達でしたが,3時間の練習で画像撮影,画像に修正を加える,メールでスタディノートに送ったり,最後に榎本レンジャーにグループ紹介を作成し,送るところまでできた。当日の授業では,比較的スムーズにPDAを扱うことができた。中には,設定をいつのまにか変更してしまいシャープの山田さんを困らせてしまうグループもあったが・・・。
- 児童の最初の質問内容は,「これは何ですか?」が多かった。しかし,榎本レンジャーからは周りの様子に目を向けさせたり,その様子からいろいろと推察させてみたり,分かりやすく伝えるための見方や表現方法を子ども達に求めていた。このようなメールのやり取りから,子ども達もおのずと自然を見つめ直し,観察の視点を感じ取ることができたようである。
- 学習の交流会では,自分たちの発見や榎本レンジャーとのメールのやり取りを意欲的に見せ合う姿が見られた。自分たちの発見や榎本レンジャーの助言をその場で共有し合うことで学習にも広がりがみられた。
- 子ども達の発見の交流会や気付きの話し合いの様子をT2が榎本レンジャーにメールで送り,今の時点での子ども達の良い点などの評価を頂き,その場で子ども達に返すことで,より学習意欲の向上が期待できると感じた。