1.プロジェクトの概要

1.1背景と目的

 現在、総合的な学習を中心に、子ども達が自ら考え、主体的に課題解決する取組が各地で行われている。しかし、その活動の多くは、情報を収集・選択し、整理して伝えるという活動にとどまることが多い。しかし、確かな学力の視点から言えば、これらの活動に「思考・判断」という要素を加えることが今こそ重要である。これまでも、GIS(※.1)を活用したリサーチプロジェクトを実践し、出来上がったマップから自然環境を考え、次の活動を判断し、活動する取組を行ってきた。マップ情報に関係するいくつかのレイヤーを重ね合わせながら思考を深めるこの活動は、学びを連続させる上で非常に重要であり、効果的であると考える。
  本プロジェクトは、これらの学びの環境をさらに一歩進めた取組である。GPS(※.2)搭載携帯電話とGISを連携させることにより、調査結果を瞬時にマップ情報に変え、そのデータからわかること、考えられることを読み取りながら課題解決を図ったり、他地域と交流しながら次の課題を子ども達自身が考える活動を通して、「思考力・判断力」の育成を目指すものである。
  そこで、本プロジェクトでは、これらの活動を支援するシステムの開発、カリキュラムの開発と実践、交流学習の仕組み、評価活動を中心に研究を行い、新たな学びの環境を構築し提案する。

※.1 GIS(Geographic Information System:地理情報システム)
※.2 GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)

1.2 プロジェクトの概要

 当プロジェクトは、「地域性の異なる学校間」「テーマや目的を共有するグループ」「テーマや目的が異なる同一地域」などでの調査活動において、カメラ付きGPS搭載携帯電話で撮影した調査対象画像を4回の操作手順だけで一括してサーバー上にデータ送信(テキスト情報、日時、端末管理などの情報)でき、かつウェッブ上のGISデータベースを一元的に管理・運営できるシステム開発を核として推進するものである。
 このGPS搭載型携帯電話とWEB-GISの連携システムを介して、児童や生徒がマップ上に表示された各種情報(位置と画像)間における関連性や関係性に気付き、比較し、その類似性や相違性の意味を考えるプラットフォーム(学習環境)を創出することを図ると共に、編集モードなどWEB-GISに組み込んだ種々の機能を組合せ、活用する事により、「環境、自然、生物、歴史、地理、地域文化、観光振興、社会生活(安全安心)」等の様々なテーマや目的を横断的・総合的な学習視点から理解を深めて行ける構成とした。
  授業実践校は、北関東から沖縄まで全国11の小中学校(教諭)に協力を依頼した。これら地域性の異なる11の小中学校において、4つのテーマを選定した各分科会毎に実践授業を行うことで、独創的なカリキュラムを通した「GPS携帯と追記型GISによる共同学習」のモデル化を図った。

 

1.3 システムの概要

 調査活動においてはカメラ付きGPS搭載型携帯電話を使い、調査情報(撮影写真、テキスト、調査位置、日時、端末番号など)を1回のデータ送信でGISデータベースに一括登録可能なプログラムを開発することで、限られた授業時間を効率的に活用できるシステムとした。加えて送信フォームの内容は研究テーマに応じ、自由に選択項目の追加設定などが行える機能を付帯した。
 GPS搭載型携帯電話から送信された「位置情報付き画像データ」は、瞬時にウェッブGIS上のマップにプロットされ、リアルタイムでの閲覧や編集が可能となる。マップ上にプロットされたデータ画面をインターネット上で共有する事で、共同学習過程にある他校の地図と比較したり、複数の分類項目を重ね合わせて表示したり、マップをグリッド分割してエリア特性を色分けしたり、単位面積あたりの平均値を自動計算させたりすることにより、シミュレーションが行えるインターフェースの開発と計算機能の最適化を行った。 また、共同学習での活用を促進するためにGISと連動した専用BBS(電子掲示板)を開発し、学校間におけるリアルタイムでの情報交換や意見交流が図れるシステム環境を構築した。

 

授業実施に必要となる環境について

■インターネット接続環境

WindowsではOS98以降,ブラウザ「IE6以上」、「MOZILAFirefox」での正常動作を確認。

MacintoshではOSX,ブラウザ「MOZILAFirefox」での正常動作を確認)

■動作確認済携帯電話

「NTTドコモ:F505iGPS」での動作を確認。(※実践授業で使用)

「AU:A5406CA」「AU:W11K」2機種での動作を確認。