8.まとめ



当初、高等学校の情報科目での活用を目指して開発した「ロボットを利用したIT教育教材」であるが、校種を広げ、さらなる普及を目指すためのアプローチを行ってきた。中学校の技術家庭科での活用事例も相次ぎ、本年度は小学校での活用へ向けての実践授業を実施した。アルゴリズムを学ぶことが中心の本教材が、果たして小学校での活用が可能か、一抹の不安があったが、それは実践授業の結果により払拭された。
 フローチャートによるアルゴリズムを学ぶ教材が、課題を別の切り口で設定することで、小学校で十分活用可能であることが検証された。競技の要素を取り入れて目標を明確にし、試行錯誤、工夫の積み重ねの過程で楽しく考えることができる教材となった。
 ロボットを自分の作ったプログラムで動かす、その結果が目に見えてわかることは、大きな知的好奇心を誘発されるものである。同時に、適度の娯楽性を持ったものでもあり、「高等学校、中学校はもちろんであるが、小学校にこそ向いているのでないか」というご意見をいただくことがあった。今回、初等教育の指導主事の先生や、小学校の先生方のご協力のもと、試行錯誤と競技性を課題に反映することで、それが実現した結果となった。
 その評価は、あれこれ議論するより、実践授業の映像や児童の感想文をご覧いただければ一目瞭然である。児童全員が夢中になり、楽しく真剣に考え、チームワークを育んでいることを、全身で表現してくれている。
 さらに、感想文の中の一節がそれを象徴している。
 「私にとって、普通のボウリングより、こっちのボウリングの方が楽しかったです。普通のボウリングのボールが、生き物みたいに動くようなものでした。」
 メカニカルな車型のロボットにさえ、愛情を込め、名前を付けて取り組む姿勢からは、子供たちの心の真のすばらしさを教えられた。
 最後に、授業モデルの作成に多大なお力添えをいただいた先生方、心から子供たちのためを思い、実践授業を行っていただいた先生方、教材の主旨に共感いただき、自主的に導入してくださった先生方、そして、純粋に「楽しく考える」姿勢で取り組んでくれた子供たちに感謝申し上げ、本報告書の結びとする。

以上



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