注)以下は、平成8年度100校プロジェクト成果発表会の資料より、 テキストデータを抽出してHTML化したものです。図表類や文字の大きさなど、 文書のイメージは、実物とは異なっていますので御了承下さい。

総合的な学習におけるインターネットの活用

環境・国際理解・情報・人間

前橋市立第四中学校
折田 一人

1.総合的な学習とインターネット

 インターネットは生徒の課題解決的な学習にとって、非常に強力な手段とな りうるが、従来の系統的学習による教育課程には必ずしも合致していない。そ こで、選択教科等で総合的な課題解決学習を位置づけ、課題解決のそれぞれの 場面にインターネットを活用した授業の実践を試みた。

2.インターネット利用の具体例

(1) 環境教育

 環境教育(選択理科)の学習では、8つの班に分かれ、別々のテーマを設定 して学習を行った。まず、WWWの検索システムを用いて情報収集をしたり、電 子メールやホームページでアンケートを行うなどの情報収集を行った。インター ネットの情報は関連する情報がリンクされているので、こうした広がりを持つ 学習には非常に有効であった。また、フィールド調査や実験も行い、自分たち の身近な環境問題についても目を向けつつ情報発信ができるように配慮した。 このようにして収集した情報をもとに、新たに生じた疑問や自分たちだけでは 解決できない問題については、大学の先生や企業の研究員などの専門家の方た ちに電子メールを送り、アドバイスを受けた。そして学習の終わりに、調査結 果や学習の成果をホームページにまとめて発信したが、相手にわかりやすく伝 えようと、データをグラフにして整理したり、雑草の分布をクリッカブルマッ プにするなど、様々な表現の工夫が見られた。こうした活動は自分たちの考え を再構成し考えをより深めるために、非常に有効であった。

(2) 国際理解・異文化理解教育

 国際理解教育(委員会活動、英語・技術のクロスカリキュラム等)では、世 界の学校との交流を目指して独自に電子姉妹校との交流を行ったり、アンケー トなどを行う他、Gakkosや日本人学校プロジェクト等、多くのプロジェクトに も参加して様々な学習を行っている。海外の生徒との交流ではコミュニケーショ ンの道具としての英語やインターネットの利用に重点を置き、言葉だけでなく イラストや写真なども用いたが、英語やインターネット利用の必然性がわかり、 非常に意欲的かつ積極的な活動が見られた.

(3) 情報教育

 情報教育(選択技術)では、地域の情報発信として5班に分かれて郷土の様々 な情報をホームページで発信する活動を行っている。この学習では、テーマの 選定、制作までの計画立案、取材、編集,、データの加工、ホームページの制 作と発信まで、全てが生徒自身の企画と自主的な活動によって行われている。 選択技術の授業は週に1時間のため、当然取材などの活動は行えない。そこで 生徒たちは休みの日を利用してデジタルカメラ等を持参して、直接取材に行き 情報収集を行うなど自主的・自発的な活動を行った。最初のうちは雑誌をまね ただけの表面的な事柄を取材して写真を撮るだけで満足していた生徒たちも、 回数を重ねるにつれ取材内容にも徐々に深まりが見られるようになった。

 もとになるデータが十分にあれば、ホームページにまとめる作業自体はそれ ほど難しくはなく、生徒たちは次々とページを作り、それらをリンクによって 関連づけていった。リンクについては事前に十分な指導は行わなかったが、生 徒たちは関連する複数の語句からリンクを張ったり、関係のある外部のページ にリンクするなど、様々な工夫をするようになり、体験的にハイパーテキスト の概念を身につけることができた。

(4) 人間教育

 人間教育では、ガイアプロジェクトに参加してエイズなどによる差別の問題 についてアンケート調査や話し合いを行ったり、、障害を持つ人たちのバリア を見つけ写真に撮ってホームページに載せる学習等を他の参加校と共同で行っ た。こうした共同学習により、1校では実現できない規模の学習が可能となる だけでなく、話し合いの過程でものの見方や考え方が広まり、より深い学習が 可能となった。

3.成果と課題

 総合的な学習を扱う場合に、インターネットは非常に有効な手段となるだけ でなく、生徒の自主的な活動を引き出すことができることが明らかになった。 インターネットを使って学習をする際、常に生徒は相手を意識している。また 自分から働きかけることで反応が返ってくる。このことが生徒のやる気や自主 性を引き出していると考えられる。

 インターネットの利用は上記の様に、既存のカリキュラムに縛られない総合 的な学習において極めて有効である。しかし、現在そうした総合科は設定され ていないために、選択教科での学習となってしまっている。今後の情報化・国 際化の進む社会に対応するためには、それに対応した教育課程の編成が強く望 まれる。

4 資料(本文中に紹介されたホームページのURL)

・前橋市立第四中学校 http://www.daiyon-jhs.maebashi.gunma.jp/
・Gakkos http://www.gakkos.com/
・日本人学校プロジェクト http://www.ak.cradle.titech.ac.jp/ngp/
・ガイアプロジェクト http://133.82.98.1/gaea/index.html