注)以下は、平成8年度100校プロジェクト成果発表会の資料より、
テキストデータを抽出してHTML化したものです。図表類や文字の大きさなど、
文書のイメージは、実物とは異なっていますので御了承下さい。
盲学校におけるインターネット利用
福島県立盲学校
渡辺 雅彦
1 はじめに
現在,インターネットは多くの人に認知され,その有用性が認められてきてい
る。特に,情報収集機能では他の方法を圧倒している。
この機能を利用している者と,していない者との間には情報格差が生まれてき
ている。
これまでの盲学校の生徒の情報源は,点字の印刷物やラジオなどに限られ,健
常者と比較して収集できる情報量が少なかった。今後,インターネットの普及
により盲学校の生徒が得られる情報量は健常者と比較して圧倒的な差がつく恐
れがある。しかし,この機会に盲学校の生徒の情報収集能力の向上を図るため
に,インターネットの利用を進めることが出来れば,情報格差を改善することが
出来る。
生徒がインターネットの操作を身に付ければ,巨大な情報源を獲得すること
になり,健常者と差がついていた情報収集量を近づけることが出来る。しかし,
インターネットを盲学校の生徒が利用するには技術面と活用面で課題がある。
このプロジェクトを通して技術面では盲学校の生徒がどのようなインターフェー
スを利用すればインターネットへアクセスできるかを検討し,さらに盲学校の
生徒が利用しやすいWWWの検討と作成を行った。
2 インターネットの利用
ディスプレイの文字が確認できない視力の低い生徒がコンピュータを利用す
る際には音声合成装置を利用してきた。インターネットへの接続もこの技術を
利用して行った。
(1) インターネットへの接続
サーバーを介してインターネット接続を行った。
本校には音声合成装置が利用できるクライアントは2台あり,それぞれ異な
る接続方法を採った。
第1ケースはRS232Cケーブルでサーバーと直接接続し,通信ソフトのHtermを
利用しサーバーに入るようにした。
第2ケースはクライアントの本体にLANボードを装着し10BASEーTでハブを介
してサー バーと接続した。
サーバーに入りLynxを起動することで音声でWWWを聞くことが出来るようにした
LynxはUNIX上で動作するWWWを閲覧するソフトである,テキストだけが表示で
き動きが軽快なソフトである。
(2) 生徒が利用しやすいホームページの作成
音声でインターネットを利用してみて以下の問題があることが分かった。
- ホームページ上で音声化できるものはテキストだけである。
グラフィックは音声にすることは出来ない。グラフィックの多いWWWで
内容がよく理解できないケースがある。
- 音声でWWWを聞くことは音声の聞き取り速度に限界があるため
目で見ていくよりも時間がかかる。
- WWWの階層を進んでいき,さらに次の画面や前の画面に戻る操作に
時間がかかる。
以下の改善を行った。
- 音声化できないグラフィックを使用しない。
テキストオンリーのWWWを作成した。
- もし写真などのグラフィックを使用するときには,
必ずその写真の説明をテキストで加えた。
- 次のページや前のページに戻る時間をできるだけ
短くするためにWWWの階層を深くしない。
3 おわりに
音声でのインターネット利用は始まったばかりで多くの改善しなくてはなら
ない点がある。しかし,その問題点を考慮に入れても利用して得られる効果は
高い。
パソコン通信を利用してインターネットを利用している先駆的な視覚障害者
も増えてきている。このような状況で外に向かってはインターネットを利用す
るのは晴眼者だけでなく視覚障害者もいることを知ってもらえるような活動を
しなくてはならない。知られることにより視覚障害者への配慮がなされ,利用
しやすいインターネット環境が出来てくる。その環境は少しの工夫で出来るケー
スが多い。視覚障害者が利用しやすいインターネット環境を作るためにテキス
トオンリーのページを合わせて作るようお願いしたい。
参考資料
- 東京女子大学現代文化学部の新着情報:
すべての人にアクセス可能なHTML文書を書く
http://apricot.twcu.ac.jp/twcu/mure/WhatsNew.html
- IBM「こころWeb」:目が見えない人がWWWを利用するには
http://www.ibm.co.jp/kokoroweb/tips/blind.html
- 日本語版 Lynxホームページ
http://www.ibm.co.jp/kokoroweb/tips/blind.html