注)以下は、平成8年度100校プロジェクト成果発表会の資料より、 テキストデータを抽出してHTML化したものです。図表類や文字の大きさなど、 文書のイメージは、実物とは異なっていますので御了承下さい。

社会科選択学習での国際理解教育

〜英語科とのT Tによる海外文通〜

坂出市立白峰中学校
佐藤 孝治/山下さゆり

1 ねらいと期待される事項

  1. 自分の属する文化、特に人間関係のあり方について、文化を異にする 相手に説明するという体験を通して、自己の文化を相対的にとらえる 能力を育成する。
    公民的分野 内容(1)のイ
  2. アメリカの中学生(7〜9年生)の人間関係のあり方について、 直接相手のメールを通して学習することで、奇異と感じられるような 慣習を共感的に理解することができる。
    公民的分野 内容(1)のイ
  3. インターネットによる情報交換の体験を通して、ニューメディアの持つ、 双方向でありながら不特定多数を対象とするという特徴を理解し、 ニューメディアをその性質を理解して有効に活用しようとする意欲を育てる。 公民的分野 内容(1)のウ

2 教材選定の観点

 異文化理解にとってなによりも役立つのは、実際にそこに生きる人々との具 体的交流を通して、相手を認めるという作業である。インターネット上のアプ リケーションの一つである電子メールを活用することで、今日我々は手軽に異 文化とふれあい交流を深めることができるようになった。さらに、このインター ネット上では、上記のような目的のための組織が作られており、この組織 (IECC)に参加すれば、電子メールでの交流を希望する学校相互に連絡をとり、 より授業の目的にふさわしい相手を探し出すこともできる。しかしながら、英 語科という壁は依然として存在しており、大人でもこれを越えることは難しい。 そこで、英語科教員とのT Tにより、メール作成について、助言を受けられる ように授業を計画した。また、ねらいを、具体的で身近なものに限定して文通 を試みることにした。自己紹介をかねて「名前」あるいは「呼称」というもの がお互いにどのように定まっているのかを紹介しあい、その作業を通して、人 間関係のあり方について考えてみたい。自己紹介程度であれば、中学生でも可 能であるし、特に欧米人にとっては、漢字の持つ表意性がひどく奇異に映って いるらしいこと、また、英語圏のミドルネームの存在や、ファーストネーム、 ラストネームの持つイメージと、日本の姓名の持つイメージの相違などについ て話題が多いと考え、この内容を選択した。

3 指導上の配慮事項

  1. 電子メール作成に当たっては、自分たちが当たり前と考えている ことがらについて、よく考えさせ、決して世界中の人々が自分と 同じ価値観を共有している訳ではないということを前提として、 アメリカ人にもわかるように、説明できるように支援する。
  2. 単に習慣の相違に気づくだけでなく、その相違が発生する社会的な 理由についても生徒なりの考え方をもてるように支援する。

4 指導経過

一学期オーストラリア日本語学級との文通の試み
夏休みMLを通じての文通相手校募集
二学期文通の実施・相手の特定・自己紹介・ 日常生活の紹介・クリスマスカード
三学期年賀状の作成・総括としての別れの手紙の作成

5 活動の内容

   +−−−−→ 担当教師IDでの −−−−+
   |      メール発送       |
選択授業時間            返信の受け取り(相手
メールの作成(DOS)       校教師より担当教師へ)
英語科教員の助言          と印刷、全員へ配布
   |      昼休み放課後の     |
   +−−−−− コンピュータ室開放 −−+
          メールの作成

6 成果と今後の課題

  1. 文通内容の充実と、文通の日常化について
     文通当初のメール交換については、生徒も意欲的に取り組み、 楽しそうに活動できるけれども、文通が重なり、内容が複雑に なるにつれて、取り組みが惰性に流され、深まりのある文通が できなくなる。文通相手が決定して、個人的にメール交換を 行うようになったあと、社会科のねらいを達成できるような 文通にするためには、さらに工夫が必要であると考える。
  2. 相手校教師との信頼関係の構築について
     メール交換は実質的に相手校教師とのT Tとしてとらえることができる。 相手の指導のねらいと、当方のねらいが必ずしも一致しないこと。 時間的問題でもお互いの都合が重なることは少ない。 そこで、教師間の日常的なメール交換による信頼関係の構築が 何よりも必要であると感じさせられた。
  3. 学内体制の整備と、全員履修の可能性について
     今後この取り組みの発展として、現在2つのことを考えている。 一つは、より拡散的な方向で、生徒の希望者全員にメールアカウントを 与えて、自分でメールを受信発信させる方向である。この場合には、 内容のチェックなど、難しい問題が多い。もう一つは、 より単発的なプロジェクトとして、社会の何か一つの単元を選び、 2〜3回の文通で結果を得るような内容に絞って電子メールでの文通を 行うやり方である。この方向の方が、現在の実状からは実現しやすいの ではないだろうか。