注)以下は、平成8年度100校プロジェクト成果発表会の資料より、 テキストデータを抽出してHTML化したものです。図表類や文字の大きさなど、 文書のイメージは、実物とは異なっていますので御了承下さい。

新しい情報教育をめざして

岐阜県立海津北高等学校
情報処理科奥村 典夫

1 はじめに

 昭和58年に開校し、家政科・経理家庭科を設置。昭和61年情報処理科を 設置。

 岐阜県の最南部。新幹線岐阜羽島駅から南南西へ13キロ。名神高速大垣イ ンターから南へ8キロのところにある。木曽・長良・揖斐の三川の合流点に近 い輪中地帯で、町の名は、宝暦治水で名高い薩摩藩の家老平田靱負(ひらたゆ きえ)に由来する。

2 地域連携の現状

(1)地域のお年寄りへの弁当配布から学んだもの

 昭和61年より本校のある海津郡平田町の社会福祉協議会と連携して、独居 老人宅へ、夕食を配達する「ディナーサービス」を継続して実施している。 年5回生徒の手作りの弁当を生徒の手で配達し、年賀状やクリスマスカード の交換も行っている。

 そんな中で生徒は次のような感想を持ちました。

 いつも食事のメニューが同じ様なもので、持病をもっている人が多い。それ で食事を持病に対応した内容にしている人は少なかった。

(2)食事の改善に利用しよう

 ディナーサービスの調査を受けて、いつも同じような食事内容で塩分や骨の 弱い人の食事を改善していくためには、その人に対応する料理を作ってもらう 必要がある。本を買って渡したらそれを読めばよいが、そのような本は字が小 さくて見にくい。もっとわかりやすく説明する方法を模索していたところ、コ ンピュータを使っていけばよいということで、作品を作った。

 レシピの書いてある本には完成した時の写真が掲載されていますが、これは 使うことができません。そこで実際にレシピどおりに家政科の生徒に調理の依 頼をし、完成したものの写真を撮り、加えて味などの感想を聞いて味のチェッ クをしました。そして作品の中に収録するものを決定していきました。こうし て作品は完成し、通産省のプログラミング・コンテストに他の作品との共同作 品として応募しました。

 この地域だけの人に使用してもらうだけでなく、他の人達にもこのソフトを 使ってもらえたらということで、インターネットにこのソフトを移植すること を思い付き、実践している。

 今までは、家庭科と情報処理科の連携はまったくなかったが、このディナー サービスを通して、新しい取り組みが実践された。

3 プログラミング中心の授業からマルチメディア作品の制作へ

(1)従来の授業の取り組み

 本校情報処理科の情報処理・プログラミング・課題研究・総合実践の授業で は、プログラミング中心の授業展開をしていた。その結果、部活動でもプログ ラミング・コンテストに入賞を何度もはたしている。また、通産省の2種を取 得するためにかなりの部分をプログラミング学習に費やしてきた。

(2)改革

 1年の情報処理において、インターネットサーフィンやホームページの作成 など、従来からのプログラミング学習を進めつつも、新たな取り組みをはじめ た。特に、3年の課題研究では、日商簿記2級取得や大学進学等での英語指導 をしてきた。それを、実践的な英語学習ということで、電子メールの交換を進 めている。現在は英語指導助手とのメール交換や外国の大学生との交流を進め ている。

 作品制作を取り入れ、自分の作った作品をWWWに発表している。(前例な ど)

 総合実践では、ソフト制作会社を想定して、テレビ会議を取り入れるなど従 来の取り引き実践ではない本校ならではの実践を行っている。

 ショックウェイブを利用して、動画を取り込んだホームページの作成など、 生徒が作品制作を中心に据えて実践している。

4 その他の取り組み

(1)科目「現代社会」での取り組み

 夫婦別姓と外国人労働者を受け入れるべきかどうかという2つのテーマで実 施した。夫婦別姓では、慶応大学のウヮ送ソを分析して使用した。これは、生 徒が自主的に機器を操作し、グループでの討論に発展させていった好例である。

 また、外国人労働者問題では、授業の中でサイトを検索し、神戸大震災の後 の「外国人救援の動き」の指導項目で利用した。その後もディベートを利用し て生徒に考えさせる授業展開をしたが、その資料収集という形でネットワーク を利用するという本来の姿で使用している。

(2)科目「家庭経営」での利用

 新任研修の指範授業の中で利用した。「消費者教育」ということで、消費生 活センターのサイトを呼び出し、その資料を利用した。生徒の反応は、画面が 動くということでたいへん興味を示し、インターネットという言葉を聞いたこ とはあるが、コンピュータの操作といことで少々抵抗があったものを、簡単な 操作で使用できるということでもっとやってみたいという反応があった。担当 した先生からは、本当に必要な資料を使いたいが、著作権の問題もあり、ダウ ンロードして加工(切り張り等)をして使用できるともっとよいのだが、とい う感想を得た。

(3)一日入学での利用

 毎年10月中旬に中学生の一日入学を実施している。例年体験学習を中心に 授業を実施しているが、今年はホームページの作成を行った。「自分のホーム ページがインターネット上にあるなんて夢みたい。」という生徒の感動した姿 に接することができてよかった。1か月ほど掲載しておく予定であったが、氏 名を公表していたので、その後すぐ取りやめた。しかし、後程ひとりの中学生 からメールがきて、作成したホームページのソースを送付して欲しいというこ ともあった。

(4)校内LAN工事の実施

 100校の機器を設置してある建物から、生徒の生活する普通教室へのLA N工事を生徒といっしょに実施した。廊下の天井裏に入り込み、ケーブルを1 本づつ小さな穴から通して作業したが、生徒は楽しくできた。普段遅刻がちな 生徒もこの仕事をしている時は、まったく遅刻もなく熱心に取り組み、生き生 きとしていた。LANのモジュラージャックの始末は工具を利用して大変簡単 にできたが、ハブとハブの接続を間違えたため、当初はエラーであった。しか し、度重なるテストによって完成した。

5 課題

 様々な教科で利用を促したりアイデアを提供したりしているが、実際にネッ トワークを利用している先生が少ない。全員の先生にとは言わないまでも、半 分以上の先生には楽しさを生徒に教えてもらいたいが、現在の環境ではまだま あの感がある。生徒とともに校内LANも敷設したので、ますますの利用を期 待している。また、利用した生徒はこんなに簡単にインターネットが体験でき るのかという感想をもっているので、生徒全員にますますの利用促進をはかる 方法を模索中である。