注)以下は、平成8年度100校プロジェクト成果発表会の資料より、
テキストデータを抽出してHTML化したものです。図表類や文字の大きさなど、
文書のイメージは、実物とは異なっていますので御了承下さい。
「インターネットを利用した教育改革の試み」
愛媛県立新居浜工業高等学校
宇佐美 東男
1 プロローグ
インターネットが導入され、3年目を迎えようとしている。この間、教育現
場では様々な変化が現れた。インターネットという一本の電話回線を通して、
国内はもとより、世界の多くの国の出来事、自然風物、科学、物語に至るまで
手に取るように知ることができた。それだけではない。自分達の毎日の学園生
活を多くの人に知ってもらうこともできた。学校と地域社会、全国、世界へと
コミュニケーションの輪が広がり、生徒も教職員も視野がどんどん拡大し、意
識の改革さえ現れ始めた。これまでとは違った何かが進行しつつある。それは
教育改革への静かな助走のような感じを受ける。この教育改革を支える重要キー
ワードは、陳腐した言葉かも知れないが、「教育の情報化」である。
これまで、教育の情報化は、社会のテンポについて行けず、一歩遅れて社会
の変化を追いかけてきたのが実状である。だが、ここにきて急速に社会のテン
ポに追いつこうとしているかに見える。
それが100校プロジェクトであり、わが国の未来に焦点を合わせた事業であ
る。この事業は教育界に大きなインパクトを与えるものであった。
この2年間、インターネットの教育利用を通して、様々な知識や経験を得る
ことができた。これを基に、今後、急速に進展するであろう教育改革の一環と
して、新しい教育システムの開発に取り組んでいる。
以下に紹介する内容は、インターネット教育利用の一分野にすぎないが、我々
は夢を持ってチャレンジしている。既にインターネット・ハイ・スクール
(Internet High School)といったインターネットを積極的に利用する教育
機関が出現し、単位を認める制度を持った学校(アメリカのケース)さえ現れ
始めている。このような流れは、今後拡大して行くことが確かである。
2 新しい学習スタイル
(1)ウェブ・スタディ・システムの開発
インターネットを利用して、学習者が学校以外の場所(例えば自宅)から、
特定の科目の特定の分野を、自由に学習することができるシステムである。こ
のシステムの特徴は、指導者も学習活動にアドバイスを与えることができると
ころにある。システムには、CU-SEEMEなどリアルタイムでマルチメディア・コ
ミュニケーション・ツールの利用も考えられる。
現在、教材の開発に取り組んでいる。教材の構造は、CAIシステムでのKR情
報の作成等に、CGI(Common Gate way Interface)をできるだけ利用せず、可
能な限りマルチプラットホームでの動作するJava-scrip等を利用して開発する
ことにし、サーバ側の負担軽減を目指している。しかし、Javaはクライアント
側でインタプリタを利用するため、高速処理には不向きなところがある。
(2)ウェブ・教育ソフトライブラリの構築
インターネットの特定のサイトから教育ソフト(主にCAIソフト等)を学習
者の手元にダウンロードして利用するシステムである。複数のサイトをリンク
し、利用できる教育ソフトを分類し、ウェブ上のライブラリ(バーチャル・ラ
イブラリ)を作成する。現在、パソコン通信「えひめ教育NET」で管理されて
いる教育ソフト数100本を移植する作業を行っている。
(3)ウェブ・エデュケーション・ライブラリ構想
世界を対象としたウェブ上の学習空間を構築することが目標である。分野別
に分類された学習ソフト・リンク集を作成し、ウェブ上で公開する。
●「共同開発校(者)募集」について●
- メーリングリストで話し合いましょう。・・・100校MLに流します。
- 教材が格納されるURL登録用ホームページの作成
- 連絡先:県立新居浜工業高等学校 Tel0897-37-2029
Fax0897-37-6440
3 新しい教育システムの利用場面
(1)個別学習
学校で行われる学習活動の中で、インターネットクライアントから、個人レ
ディネスのレベルに合った、教材を利用することができる。例えば、理科実験
においてマルチメディアな教材をオンラインで利用しながら実験を進めて行く
ことができ、レポート等もオンラインで提出できる。フィールドワークなどで
はモバイル・インターネットが有効である。
(2)在宅学習システム
オンライン・スタディや教育ソフトライブラリを学校以外の場所から、例え
ば、自宅にいながら学習活動に利用する教育システムである。また、機器が自
宅にない場合の貸与制度等も考えられる。
(3)教育相談システム
生徒・保護者・指導者が対面することなく、ある程度のカウンセリングを行
うことができる。
しかし、最終的には対面が必要となるので、カウンセリングを補完するシス
テムとして捉え利用することができる。
(4)資格検定取得システム
これからの社会では、生涯学習が求められている。その中でも様々な職業
での専門性が要求され資格が大きな評判の対象となる。資格取得のための学習
システムとして利用する。
(5)ディベート教育
ネットワーク上での発言は、リアルタイムに行うことができる。また、個々
の発言は時系列で整理されているので、ゆとりを(考える時間)持ったディベー
トも可能である。
4 インテリジェント・スクールへ向かって
(1)ブロードキャスト・システムの研究
地域社会を対象にしたミニ放送局の運営。チャンネルを生徒主体のものと教
職員用の二つで運営を考えている。但し、回線速度の関係で、現在は生徒主体
のチャンネルのみ運営しているが、やはり回線速度がネックとなっている。一
方、イントラネットとしての校内用放送は10BASEであるため、実用性は確保さ
れている。
(2)インターネット交流学習
現在、県下6高校間で、年間数回ホームページ作成研修会を開催し、交流学
習に取り組んでいる。これがきっかけとなり、電子メールやウェブ上での生徒
や教師の交流が始まっている。
この状況を他校との単なるコミュニケーションだけに終わらせることなく、
学習活動の分野にも拡大したいと思っている。また、今後、中学校の参加も計
画しており、中学・高校間の学習の継続性、一貫性にも寄与することが可能で
あると考えている。
(3)イントラネットの構築(クライアント数約90台、サーバ3台、
10BASE5/2/T)
インターネット技術を校内LANに利用し、イントラネット構築を進めている。
進路指導システム、図書館活動、教育事務処理、教育ソフトライブラリ、ウェ
ブ・スタディ・システムなど広い利用分野があり、これから重要な校内インフ
ラになると考えられる。
(4)広域学校間ネットワークの実現へ向けて
インターネットは個人でも、プロバイダーに加入することによって、簡単に
利用できる時代となった。当然、学校間でもコミュニケーションすることはた
易い。しかし、多くの学校が一つの目的を持って、あるいは共同で取り組まな
ければ解決できない問題に対して、どう対処して行くべきか。この観点からポ
スト100校プロジェクトのあり方について研究すべき時期にきていると思う。
また、「情報基盤センター」のこれからの利用についても、100校プロジェク
トが事実上継続される来年度中には、将来の方向が明確になることを望んでい
る。
5 エピローグ
校内におけるインターネット利用は、生徒・教職員ともに日常化してきた。
校内情報インフラに関しても、レベルは低いが、どこからでも利用できる状
態にある。
これまで未経験なことが多かったが、確認できた教育効果も数多くあった。
これからは更に、計画的に評価を伴ったネットワークの教育利用を進めなくて
はならないと思っている。更に、問題となっているインターネット利用に伴う
陰の部分についても研究を進め、安心して教育現場で活用できる環境を作りた
いと思う。
最後に、100校プロジェクトを運営して下さった「IPA」及び「CEC」のみな
さま、ネットワークに関するノウハウや教育全般に渡って親切なアドバイスを
与えて下さった大学や研究機関のみなさまに感謝致します。