注)以下は、平成8年度100校プロジェクト成果発表会の資料より、 テキストデータを抽出してHTML化したものです。図表類や文字の大きさなど、 文書のイメージは、実物とは異なっていますので御了承下さい。

校内ネットワーク環境とインターネット

宮崎県立延岡商業高等学校
馬場 隆

1 はじめに

 本校に平成6年12月100校プロジェクト対象校として指定を受け、平成7年5月 に実際にサーバをはじめとする機器が導入された。その当時、本校にはLANの 敷設されたパソコン教室があった。しかし、諸事情によりこのパソコン教室は 平成8年の2月まで、インターネットに接続することができなかった。そのパソ コンがインターネットに接続され、各職員室にまで拡張中であるがこれまでの 経過と本校でのインターネットの活用事例を紹介する。

2 インターネット導入以前の校内ネットワーク

 インターネットが導入されるまでの本校の校内ネットワークは、ファイルサー バを中心とするパソコンLANでパソコン教室内の閉じたネットワークであり、 ほとんどネットワークはとして活用されていなかった。この教室のパソコンは 平成5年度に25台導入されていたもので、ファイルサーバの機能と教師用パソ コンの画面を生徒用パソコンに一斉表示するなどのCAI機能を有していた。し かし、Windowsの実習とCOBOL言語実習用として一部利用されていたにすぎず、 パソコン単体としてのみ活用されているのが実態であった。CAI機能について は、教師用パソコンから画面制御ユニットを介して生徒用パソコンをキーボー ド添削したり、全生徒へ一斉表示させることができたが、ほとんど使われてい なかった。

3 インターネット機器は導入されたが

 平成7年5月に100校プロジェクトのインターネット機器が導入された。これ を機にパソコン教室のLANをインターネットに接続したいと考えていたが、技 術的問題や費用の問題で接続することはできなかった。そのため、インターネッ トが導入後10ケ月間は、インターネットのクライアントパソコン1台での検索 が始まった。

4 クライアント1台をどのように使うか

 クライアントパソコン1台でインターネットをどのようにして授業に導入す るか大きな問題であった。まず、教師自身がインターネットのことがまったく わかっていない状況であったため、とりあえず教師だけでインターネットを試 行する毎日が夏休みぐらいまで続いた。2学期から電子メールを授業に導入し た。「情報処理」の授業において、COBOLの言語実習等で使用しているエディ タでメールの本文をあらかじめ、25台のパソコンで作っておき、メールの送信 のみを1台のクライアントパソコンでおこなうようにした。また、WWWの情報検 索は教師用のパソコンとクライアントパソコンのディスプレーを入れ替え、ク ライアントに表示された画面を生徒に一斉に転送表示させる形を取った。さら に、ホームページの作成についてはエディタでHTMLで作成しておき、スタンド アロン(インターネットに繋がっていない)のパソコンに擬似的にインストー ルされたネットスケープで表示してホームページのデバックをおこなうように した。そうしてできあがったホームページを1台のクライアントからFTPで登録 する形をとった。

5 パソコンの追加にあたり

 平成7年10月に17台のパソコンの追加の話が県教育委員会よりあり、追加の パソコンの仕様を決めることになった。LANのプロトコルはインターネットに つなぐためにTCP/IPを基本に決定した。パソコンの機種の選定に関しては、 CAI機能が引き続き使えるものにした。また、インターネットのクライアント パソコンを増やすために、既存のパソコンLANについても見直しをして、LANボー ドの入れ替えも行うことになった。また、パソコンのOSについては、既存のパ ソコンの性能など考慮し、Windows3.1で統一することになった。

 平成8年2月はじめに追加分のパソコンを設置し、LANにインターネット接続 の テストをしたが、なかなか繋がらなかった。既存のパソコン教室のLANは同 軸ケーブルによるバス型のトポロジーであったため、イーサネット型のLANで、 ハブ同士を接続すれば低予算ですぐにインターネットにつながると考えていた。 しかし、既存のLANに仕様はあるメーカの独自仕様でプロトコル的に全く別の ものであることが判明した。また、同軸のケーブルの特性インピーダンスも異 なっていた。それに伴って、ハブもインターネット用のものと仕様が異なり、 そのままではつなげないことがわかり困惑した。LANの仕様を再調査し、ハブ の入れ替え・同軸ケーブルの張り替え・LANのセグメントの切り分け等をおこ なうことになった。その結果、平成8年2月末に授業に使えるようになった。42 台のパソコンがインターネットに同時に接続可能になったため、非常に授業で 使いやすくなり、この教室の使用率がほとんど100%近くなった。

6 校内ネットワークの強化

 追加されたパソコンの他にWinndowsNTサーバを設置した。このサーバは校内 用のファイルサーバおよび掲示板WWW機能を有している。これは授業等でホー ムページの作成などマルチメディアデータを使うことが多くなり、FDでは対応 できなくかってきたため、MOドライブを生徒用として共有させることによって、 生徒の保有するデータの大容量化に配慮してものである。このため、LAN上で はTCP/IPとNETBeuiのポロトコルが共存している。

 また、職員室には第一職員室・第2職員室・事務部に安価なパソコン1台とハ ブ1台を設置した。これは、職員の日常的なインターネットの利用を推進する ためであり、生徒から、メールに答えたり、インターネット用の教材を作成し たり、情報を検索する目的で設置したものである。加えて、教師個人のパソコ ンをLAN接続できるようにハブを設置している。今後は、進路指導室・LL教室・ POS実習室など接続予定である。

7 本校のインターネット利用状況

(1)インターネット利用手続きのルール化

 本校では情報処理科を中心に、約300名の生徒個人および職員に電子メール の利用IDを発行している。本年度は利用IDの発行手続きをルール化し、利用ID 発行申請書の届け出を生徒および職員に義務づけ、利用の責任を持てせた。

(2)インターネットによる情報検索および情報リテラシーの育成

インターネットのサーチエンジンなどを利用して、効率的な情報収集の手段と してインターネットを利用した。情報検索の授業を行った。電子メールや校内 ネットニュースによって提示された課題をウインドウズのカットアンドペース トの機能を使いながら、ペーパーレスのレポートを完成していく授業を行った。

(3)校内専用ホームページの解説とセキュリティ教育

校内専用のホームページをつくり、その中に校内掲示板を設置し、インターネッ ト使用に関する注意事項などを掲載しセキュリティ対策の情報を載せ、インター ネットの導入の授業で利用っできるようにした。

(4)マルチメディアテキストの利用

「英語実務」の授業において、遅い回線スピードをカバーするために音声を組 み込んだホームページを本校サーバに作成し、相手のイメージを膨らませなが ら、音声を添付した電子メールによる交流をアメリカの大学生と行った。

(5)プログラミング言語としてのHTML教育

 情報処理科の科目「プログラミング」の授業の一環としてHTML言語をインター ネット上の情報を生徒自らに参照させることによって学習させた。そして、実 際にホームページを作成し、FTPによって登録させ、インターネット上に公開 した。

(6)生徒の研究成果のホームページによる発表

 各教科の成果をホームページに登録することによって、学校内外に公開して いる。「課題研究」の公開は、研究成果を多数の人に見てもらうことによって、 生徒の学習意欲をより喚起する効果があるとともに、ホームページを作成する ことは、生徒が研究を他人へわかりやすいように工夫することにより研究が深 まるのではないかと考えている。

(7)共同利用企画「酸性雨プロジェクト」への参加およびそのデータの活用

 酸性雨を実際に調査し、その結果をインターネット上に公開し、他の地域の データと比較することによって、生徒に環境について考えさせている。特に 「生物」の授業においてもこの全国のデータや本校のデータを活用し、生徒に より身近か問題として環境について考えさせる。また、「情報管理」の授業に おいて酸性雨データなどを実際にダウンロードし、表計算ソフトなどのミドル ウェアなどで加工し、グラフ化させることによって生徒の思考をより深化させ るようにしている。

8 ネットワーク利用に関する成果と問題点

(1)情報を合理的に処理する能力の育成

 インターネット上に存在する膨大な情報をナビゲーターなどのいろいろな手 段で検索し、有効な情報をどのように探し出すのかを実習させている。また、 探し出した情報を加工させ、情報を取捨選択させることによって、情報を合理 的に処理する能力と態度が育ちつつある。インターネットに関する実習を中心 に体験的学習を通して、生徒個々の想像力や論理的な思考力を育てることがで きつつあると考えている。

(2)「課題研究」の深化

 各教科の研究成果等もインターネット上にホームページとして公開している。 特に「喚起する効果があると考えている。特に「課題研究」の公開は、研究成 果を外部の多数の人に見てもらうことによって、外部からの反応があり生徒の 学習意欲をより喚起する効果があると考えている。さらに、ホームページを使っ て「課題研究」の校内発表会を行うことによって生徒のプレゼンテーション能 力の育成をはかり、これから「課題研究」を始める下級生へのよい指標となっ ている。また、ホームページを作成することは、研究の成果を他者に理解して もらうための工夫が必要となり、より生徒の研究が深まるのではないかと考え ている。

(3)生徒の思考の深化

 インターネットから必要な情報(各種データ)をダウンロードし、表計算ソフトなど各種のアプリケーションソフトでグラフ化するなど情報を加工したり、他の情報と比較させることによって、生徒は事象に対する因果関係のどを考える態度が育ちつつある。 例:例えば、酸性雨データを加工したり、事象グラフ化し思考判断の材料とし、 生徒せは思考を深める工夫をしている。

(4)EUC能力の育成

 宮崎県産業教育フェアーにおいて、生徒自身にクライアントパソコンのイン ストール作業やLAN接続作業を計画および設置させた。会場には臨時回線(ア ナログ1回線およびデジタル回線)を敷設し、本校のサーバにダイアルアップ の接続させEUC(エンドユーザコンピューティング)能力の育成ができた。ま た、インターネットのクライアントソフトのバージョンアップなども生徒に実 習させている。これらの経験をもとにシステムアドミニスレータ試験に合格者 を出すことができた。また、インターネット上の各種の情報を各種アプリケー ションによって収集・加工していく授業展開を導入したところ、生徒の積極的 な取り組みが見られ、表計算ソフトなどのミドルウェアの技術が習得を深める ことができた。特に、コンピュータ利用技術検定1級では本県内の全合格者の 半分の10名の合格者をだすことができた。

(5)職員インターネットに関する意識の高まり

 インターネットに関する校内体制を見直しサーバ管理技術の向上を目指す 「インターネット保守研究委員会」と教育利用を推進する「インターネット利 用推進委員会」を常置した。授業にインターネットを導入する職員が増え、生 徒の指導へ大きく役立っている。また、保守研究委員会は転勤等にも対応でき るように技術・知識の向上を目指している。

△普通教科での利用の制限の問題

 生徒が自由に使えるクライアントパソコンは、パソコン専用教室に42台設置 してあるが、この教室は全学科における情報処理関連科目の指導にも利用され ており、空いている時間がほとんどない。そのため、普通教科での利用が一部 に制限されてしまった。次年度は、今年度新規導入されたPOSシステムの教室 のパソコンをインターネット接続してクライアントを増やしたり、授業時間を 工夫をすることによって普通教科でのインターネットの利用の拡大を図りたい と考えている。

△評価の問題

生徒のホームページを使った発表には、生徒自身による自己評価と相互評価を 導入しているが、電子メールをなどを活用した授業の評価の観点をどう考えて いくかこれからこれから、さらに試行を深めていくことが必要だと考えている。

9 おわりに

 サーバがUNIXをOSとするマシンであったため、システムの設定や授業導入の ために準備にはかなりの時間を費やした。また、システム管理者宛に毎日20件 前後の問い合わせや調査依頼、施設見学の依頼などがあり、その対応に追われ ることも多くその中で授業にどう活かしていくか悩みも多かった。校内のネッ トワークを拡張しては生徒指導の文部省の研究指定校であり、2つのプロジェ クトの両立に苦労した。しかし、生徒はインターネットがマスコミ等で話題に なっていることやマルチメディアデータが豊富なこともあり、非常に興味を持っ て自発的に取り組んでいることが励みであった。そのことが学校の活性化につ まがっていると信じている。最後に、本校のインターネットはネットワークに 関係する様々な方のおかげで成り立っており、関係各位に感謝する次第です。