注）以下は、平成８年度１００校プロジェクト成果発表会の資料より、テキストデータを抽出してＨＴＭＬ化したものです。図表類や文字の大きさなど、文書のイメージは、実物とは異なっていますので御了承下さい。

自ら学ぶ力を育成するインターネット活用

茨城県つくば市立桜南小学校
森田　充

概要

　児童が自分の学習の課題を解決するための情報収集の道具として，ＷＷＷやメールを活用し，さらにその学習成果を児童自身が作成したページとして本校ホームページ上に載せ公開する。特に本校では「校内ネットワーク活用ソフトであるスタディノートで作成した情報がHTML形式に変換され簡単にホームページにて発信できる」という点が特徴である。そして，それらの発信した情報に対する外部からの意見により，児童は学習の反省や再構築を行う。

　このことが，児童の学習意欲の高揚につながるのはもちろん，学習成果の交換により，これまでの学習ではみられない視野の広がり，学習の深まりが生まれる。そして，このような活動が現在，教育の世界で求められている「児童自ら学ぶ力の育成」につながるのである。

Ｉ　自ら学ぶ力を育てるコンピュータ活用

１ＣＡＩ（Computer Assisted Instruction）

　一斉授業下における学習の個別化／完全習得　→　理解できることによる学習の喜び一人で学ぶことによる学び方の習得

２グループ１台や，教室１台での活用法

　教師の指導や児童の学習の道具としての活用　→　学習の場，記録・表現の方法が増え，思考力・表現力等が育成された。

３ネットワーク

　学習の場の広がり　学習の深まり

ＩＩ　本校ネットワークの概要

１機器の環境

　インターネットに接続されている機器とその設置場所は次の通りである。

ネットワークルーム　２０台
５，６年各教室１台　計８台
４年生コーナー　１台
職員室　７台

※職員室以外のものは随時開放している

２校内情報ネットワーク（スタディノート）

　ネットワークルームの20台では，スタディノートという校内情報ネットワーク活用のためのソフトも活用できる。

(1) スタディノートでホームページ作り

　スタディノートでは，まずコンピュータのディスプレイ上で見ることを前提としたノート（文字，図やアニメで構成できる）を作成する。これらのノートをもとにして，校内で結ばれたコンピュータどうしで次のようなことが可能になる。　

「電子メール」機能を用いて，自分のノートの学習情報を，特定の児童とやりとりすることができる。
「電子掲示板」機能を用いて，自分のノートをコンピュータの掲示板に掲示し，不特定多数の児童に伝達する事ができる。
「データベース」機能を利用して，コンピュータで作成したノートをテーマごとに蓄積し，自由に見たり，キーワードやタイトル情報をもとにして検索したりすることができる。また，それらのデータを見た意見を，それらの子情報として付加，蓄積することもできる。現在は，これらのデータを変換し，ホームページに載せることも簡単にできるようになった。

(2) スタディノートは協同学習支援の道具

　　スタディノートは，コンピュータを表現の道具として使うことにより，

誰にも発言の機会を与える。・自分の意見を明確にしてから発表させる。
誰もが似たようなまとめになってしまうことを防ぐ。

　ことが可能となり，これが，実際のコミュニケーションの活性化にもつながる。
　また，ノートの利用は，学級の枠を越えての情報の交換を可能にし，より多くの個性あふれる情報に触れることができるようになるので，学習の深まりや広がりが出てくる。

３ネットワーク活用の基本的考え

(1) ＷＷＷによる積極的情報発信

教師が

教師との情報交換を求めて研修情報，教師個人のページ，etc.
教師が保護者のために行事予定，学年・学級通信，etc.

児童が

学習成果の発表のために（情報交換のきっかけにも）学習データベース， etc.
自分たちの思い出にクラスのページ，etc.

(2) 教科の学習との融合

　ただ単に，インターネットを使うのではなく，普段の教科の学習を高めるための協同学習の道具としてインターネットを活用する。

(3) 保護者，地域との協同学習の推進

　本校は筑波研究学園都市の中にあり，近くにはいろいろな研究所がある。また，外国生活の経験を持つ保護者も多い。そこで，研究所に勤務されている方々や外国生活経験を持つ方々に，自分たちの学習を支援してもらったり，交流の架け橋になってもらったりする。時には，一緒に学習のデータベースを作ったりもする。

　現在は，保護者の・翻訳ボランティア・質問に答えてくれる方のリストが組織されている。

活用の実際

問題解決型学習に次のように活用した。

問題追究の段階

１スタディノートで校内の情報交換

資料が見つからないとき
問題が解決できずに助けてもらいたいとき

　　たすけて　　　　　（スタディノートの電子掲示版）
　　資料を教えて下さい
　　　　↓
　　電子メールで支援が届く

２インターネットで情報交換

校内だけでは不十分な時や，広く意見を求めたいときはインターネットを利用する。

　　他校の児童や専門家に質問する　（インターネットの電子メール）
　　自分の考察に対する意見を求める
　　　　↓
　　電子メールで支援が届く

まとめと情報発信の段階

次のような方法でまとめ，ホームページで公開する。

　　スタディノートのデータベース作成し，
　　HTML形式に変換（専用ソフトで）
　　ペイントブラシで絵や文字を書く
　　HTML形式で直接書く
　　紙やノートにまとめイメージスキャナで

公開することが前提になるので，自分の考えをより明確にしたり，伝えることを意識したりしてまとめるようになる。

意見の交換と学習の深化の段階

　スタディノートのデータベースを見て
　　　校内の児童，教師達から
　　　メールやデータベースの子情報として
　ホームページを見て
　　　他校の児童や解決に協力いただいた方や一般の方々から

　感想や意見が来る（学級や学校の枠を越えて）
　　　　　↓
　自分のまとめを再考，加除・修正  学習の深化

ＩＶⅣまとめ

　以上のように，情報の発信が，自分の思考を深め，学校以外の児童や専門家，一般の人たちと語り合うきっかけとなる。そして，この語り合いにより，学習がさらに深まり，問題解決の力が育ち，自ら学ぶ力が育成されるのである。

　学校の壁を取り払い，社会のすべての人を協同学習者にできるのがインターネットなのである。

　今後は，各教科の指導計画の中に，インターネットを生かす方法を具体的に例示できるよう研修を深めていきたい　と思う。また，親子でのデータベース作りを充実させ，保護者の勤務する研究所や各施設から得られる学習に役立つ　情報を公開する場所となるよう努力したいと考えている。

E-mail：morita@ounan~es.tsukuba.ibaraki.jp
URL：http://www.ounan~es.tsukuba.ibaraki.jp/