注)以下は、平成8年度100校プロジェクト成果発表会の資料より、
テキストデータを抽出してHTML化したものです。図表類や文字の大きさなど、
文書のイメージは、実物とは異なっていますので御了承下さい。
3か国を結んだ中学生の Virtual Class Room On The NET
清水国際中学・高等学校
井柳 強
1) はじめに
インターネット上の仮想空間にいくつかの国の生徒,先生が集まり,一つの
クラスを編成して,その教室の中でどのようなテーマの作品を完成するか,
皆で討論しながら共同でHTMLの編集ができたらどんなにすばらしいだろ
うか。
これは私たち「地球クラブ」のインターネットを利用した活動の中で描いて
きた夢であった。この夢が思ったよりはやく,世界で初めての試みとしてグ
ローバルコモンズK.K.内に事務局を置く At&T Jens Virtual Class Room On
The Net で実現した。(詳細は
http://www.kids-commons.net/vc-j/index.html)
これは,同じサーバー上の同じデレクトリに3か国が自由にアクセスするこ
とを認め,共同の場でHTMLを完成するという,理想的な環境を提供する
教育プログラムであった。このプログラムに100校プロジェクト供与機器
を利用して参加した。本校中学,正課クラブ活動「地球クラブ」の3チームが
エントリー,交流を展開したが初めての国際舞台での活動は,正直なところ
失敗の連続であった。インターネットを利用した国際交流の難しさを体験す
る機会となり,同時に言語の壁を越えたこの国際プロジェクトは,参加した生
徒・教師に貴重な学習の場を与えた。
2)応募
9月末に作品の構想を書いて応募した。100校プロジェクト供与機器であ
るサーバー,64KB専用回線,2台のオンライン接続されたクライエントと
3台のオフラインのパソコンを利用して作品の制作をした。
3)選考
30か国,261校の応募のあった中から29か国,153校(162グルー
プ)が選考され,54クラスが編成された。応募した本校3チームも選考され,
次のような国際クラスに編入された。いずれもほぼ、同年令の生徒達であった。
クラス名 | 学校名 | 国名
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VC−31 | *Hampton-Dumont Community Schools | (USA)
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| *Mankkaa school | (Finland)
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| *清水国際中学3年生 | (日本)
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VC−32 | *Schroeder Middle School | (USA)
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| *Benchamarachutis School. | (Thailand)
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| *清水国際中学1年生 | (日本)
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VC−33 | *Toronto Montessori Schools | (Canada)
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| *Mantysalo school | (Finland)
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| *清水国際中学2年生 | (日本)
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4)バーチャルクラスルームの利用環境
ここには6つの教室(フォーラム)があり生徒が共同作業をする場となった。
- 自己紹介の部屋(Self-Introduction Room
- テーマの絞り込み作業の部屋 (Theme Decision Room)
- ワークルーム(Work Room)
- 自己評価のための部屋(Self-Evaluation Room)
- コーディネーターズ・ルーム(Coordinators' Room)
- トレーニング・ルーム (Training Room)
これ以外に全参加チームの先生方の職員室と生徒のための広場,チャットルー
ム,クラスごとの共同利用可能なFTPサーバーが準備された。
5)共同制作HTML
本校の3チームは、共に「 Working Together 」をメインテーマに制作に取
り組んだが,3か国共同で一つの作品を制作するという作業は困難を極め各学
校がテーマに沿って独自に制作した HTML を Clitical Map で結ぶだけの作品
になりがちだった。「一つの作品を一緒に作ろう!」という理解が得られなかっ
た。悪天候に悩まされ最終作品が完成できないチームもできてしまった。
*VC-31 Christmas and our community
本校は2か国共同作品を2本,3か国共同作品を1本分担。アメリカの学校
からのクリスマスメールへの返事という形で,本校のクリスマス行事を紹介し
た。他の1本は、Drowing for Communication という説明文のないHTMLを3か
国で共同制作した。
*VC-32 Working together
本校独自の作品を1本,2か国共同作品を1本、3か国で1本の「みんなで
力を合わせれば」という絵本を共同で完成した。
*VC-33 Christmas Calendar
クリスマスの日までのカレンダー24日分のうち8日分を本校が担当,本校
のクリスマス行事を紹介した。
5)国際共同作業の難しさ
この国際プロジェクトは苦労の連続だった。生徒のコミュニケーションの翻
訳作業を私がすべて担当したが,生徒たちの生の声を伝えことのできない自分
の英語にもどかしさを感じると同時に大きな失敗を何度も繰り返した。次に列
挙するような点で厚い壁に突き当たった。
1)システムの操作方法,回線スピード
| 2)参加人数,活動時間,指導者の問題
|
3)共通テーマ決定方法
| 4)国際共同作業に適した題材とは
|
5)言葉
| 6)異文化ミックス
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7)同じデレクトリー上の共同作業
| 8)HTMLの書き方
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9)パソコン機種間の互換性
| 10)技術格差
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11)参加目的の違い
| 12)インターネット上でのコミュニケーションの困難性
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13)教師同士の連携
| 14)コンテスト形式
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15)期間
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6)国際共同作業のすばらしさ
距離感をなくし,インターネット技術が完成したカラー画像転送方法を利用
して「 Drawing for communication 」という言葉を使用しない国際共同作品
が3か国の手で完成したが,このような絵だけでもコミュニケーションできる
インターネットの世界をすばらしと思った。モニター用ブラウン管のすぐ後ろ
には「先生,世界の教室がそこにあるのね。」という生徒の言葉を実感できた。
4か月にわたる長期のインターネット上の国際共同作業の中で相手国の生徒と,
けんかしたり,怒ったり,泣いたり,笑ったりしながら一本の作品を完成した。
未熟な作品だがその一部分を皆さんに紹介できることをうれしく思う。
7)最後に
このような,すばらしい International Virtual Class Room を展開できた
のは機器とインターネット回線,システムだけでなく,このプロジェクトを裏
側で支えた事務局の専属スタッフが大きな役割を果たしていたことに,この場
をお借りしてお礼申し上げます。タイ国のチームは、FTPが不調で200k
m離れたバンコクまで列車を乗り継ぎ,ここからアクセスを繰り返した。彼ら
の努力と熱意にも声援を送りたい。